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ドワーフの国・ガストン地底王国①/地底の国

 数日間、馬車の旅は続き……周囲の景色が一変する。

 デラルテ王国領地を抜け、ガストン地底王国領地に入ったのだ。

 木々が生い茂り、緑の多かったデラルテ王国領地とは違い、ガストン地底王国領地は荒廃した大地のようなところで、木々も少なく、山々が多く見えた。

 ハインツは、外の景色を眺めながら言う。


「ガストン地底王国、思った以上につまんなそうなところだな」


 白けたような言い方だが、海斗も否定しない。

 ナヴィアは自分の爪を見ながら言う。


「あーあ、化粧品とか、美容品は期待できそうにないかも。ってか……はああ、なんか急に行くのめんどくさくなってきたかも~」

「激しく同意……もう手遅れだが、このボクが炭鉱夫だと……? どう考えてもおかしい。自慢じゃないが、ボクの腕力は一般兵士にも劣るぞ」

「ケケケ、マジで自慢できねえな。見ろ、この筋肉!!」


 ハインツはマルセドニーに、腕の筋肉を見せつける。

 マルセドニーはうっとおしそうにしていたが、微妙にチラチラ見ているのを隠せていない。

 海斗は、外の景色を見ながら確認をする。


(骨のストックはある。武器もアイテムボックスにある。アイテムボックスは……やりたくないけど、背に腹は代えられないな)

「……カイト」


 と、名乗った覚えもないのに、イザナミが海斗を呼んだ。

 思わずイザナミを見る。


「今更だが、名乗っていなかった。私はイザナミ……混血人だ」

「……ああ、そうか」

「……お前は、私が憎いのか?」

「は?」


 テンポが掴めないとはこのことだった。

 イザナミは、独特なペースで喋る……いきなり『憎むか?』と言われ、海斗は首を傾げてしまった。


「お前は、私を視線で気にしているが、私に話しかけようとしない。不思議だな……お前は、私を深く知っているように見えるが、そう見えないようにしている。そんな感じがした。お前は……私を知っているのか? そして、私を憎んでいるのか?」

「…………」


 海斗の中で、イザナミの危険度が上がった。

 そもそも、原作終盤に出てくるハーレムメンバーの一人。物語終盤の新キャラは大抵が強く、スカラマシュ程度ならソロで討伐できるハーレムメンバーもいる。

 間違いなく、イザナミはその一人……正直、『魔王の骨』を右腕に宿し、戦力が上がった海斗でも、勝てる気がしない相手だった。

 関わるべきではないと、海斗は強く警戒する。


「……別に、気のせいだろ。とにかく……もう、気にしないから、お前も気にするな」

「そうか……」


 イザナミはそれっきり黙り込む。

 海斗は、最後に一度だけイザナミを見たが、イザナミはもう海斗を見ることはなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 数時間後、外を見ていたハインツ、そして数名の炭鉱夫たちが驚きの声を上げた。

 その声に釣られ、他の乗員たち、ナヴィアとマルセドニーも外を見る。

 

「おっほー!! すっげえなあれ!!」

「……興味深いね」

「わーお!! なんかキラキラしてる~!!」


 海斗は『挿絵』で見たことがあるが、窓から外を見る。

 そこにあったのは……巨大な『火山』だった。


「『ボルカニカ火山』……デカいな」

「おいカイト、あれ知ってんのか?」

「ああ。あれは『ボルカニカ火山』っていう、ガストン地底王国の入口にある大火山だ。見ろ……火山の麓に、デカい穴が見えるだろ。あれが地底王国への入口だ」

「ま、待てカイト!! 火山だって!?」


 驚くマルセドニー。ハインツ、ナヴィアは首を傾げていたが、マルセドニーは知っていたようだ。


「火山の麓、つまりガストン地底王国は火山の真下にある国ってことなのか!? バカな、溶岩の温度を知っているのか!? 火山の下ってことは、マグマが溢れているんじゃ……」

「さすがマルセドニー。まあ、溶岩は普通に流れてるぞ。そもそもドワーフってのは寒暖に強い強靭な肉体を持つ種族だ。それに、地熱を利用した鍛冶を行うし、この一帯は炭鉱だけじゃない、鉄鉱石やいろんな原石の宝庫なんだよ。ちなみに……俺らが掘る石炭は、国外への輸出用だ」

「……そ、そうなのか?」

「ああ。鉱石とか、宝石の原石はドワーフだけで掘る」

「おおお……」


 マルセドニーはがっくり崩れ落ちた。あわよくば、宝石の原石や貴重な鉱石を盗んでアイテムボックスにでも入れようとしていたのかもしれない。

 海斗は思う。


「俺らが向かうのは『コールマイン炭鉱』だ。基本的に、ドワーフが他国の炭鉱夫や、炭鉱について学ぶ人材を受け入れる時に使う炭鉱だ。そこで、炭鉱夫としての研修を受ける」

「へいへい。けけけ、腕が鳴るぜ」

「……帰りたい」

「ね~ね~、あたしは?」

「前にも言ったろ。お前は、炭鉱内にある宿舎での給仕係だ。マリアさんと料理してんだろ? 世話、ちゃんとやれよ」


 こうして、馬車は『ボルカニカ火山』の麓にある巨大な洞窟へ入って行く。

 洞窟は広く、いくつもの分かれ道があり、何度も馬車は曲る。


「おいおい、すっげえ広い地下だな」

「いくつかの炭鉱、鉱山への道に続いてる。ちなみに……迷ったら永遠に出てこれないってよ」

「ま、マジかよ」

「それと……」


 海斗は、それ以上言わない。

 もう、ここはガストン地底王国内……洞窟の外壁に『蝙蝠』が何匹も宙吊りになっているのを見た。


(『楽師』スカピーノが契約している、災害魔獣。『蝙蝠王カマソッソ』……すでに、スカピーノの腹の中にいるようなもんだ)


 十二執政官は、魔神が生み出した凶悪な十二体の『災害魔獣』と契約している。

 プルチネッラは『鴉王バズヴ』、出番なく死んだスカラマシュも『鼠王ドーマウス』というネズミの魔獣と契約していた。

 そしてスカピーノは、コウモリ。

 洞窟内に無数にいる全てのコウモリは、十二執政官序列十一位『楽師』スカピーノが生み出し使役する魔獣であった。

 海斗は当然知っている……その『能力』も全て。


(ボルカニカ火山の噴火口。そこが魔族の自治区……そして、スカピーノの『ステージ』がある)

「カイト……ここ、火山なんだよね。その、噴火とか」

「さあ、するんじゃないか? 火山だしな」


 不安そうなマルセドニーに、海斗は適当に言う。

 だが……海斗は知っていた。


(噴火はない。ドワーフの英知の結晶、『火山抑制装置』が機能しているから。噴火をせき止める、スカピーノがドワーフに命じて作らせた『魔導具』だ……)


 魔族の自治区は、なんと噴火口にある。

 噴火口に広がった巨大な『蓋』のような町。そこに魔族が住み、さらにスカピーノの『ステージ』もあるのだ。


(さあ、やるべきことが見えてきた……まずは、『魔王の骨』を回収する。そのために……)


 すると、馬車が停車。

 馬車から降りると、広い空間の中に巨大な体育館のようなレンガ造りの建物があった。

 案内役の御者ドワーフが言う。


「よーし聞け!! ここはガストン地底王国、下層の『コールマイン炭鉱』前だ。んで、ここがお前たちの宿舎となる!! 今日はこのまま休んでいい。明日の朝から、さっそく働いてもらうからな!! 男たちはツルハシ持って炭鉱へ、女たちはメシの支度をするように!! 以上!!」


 そう言って、案内ドワーフは行ってしまった。

 ポカンとしていると、海斗は宿舎に向かって歩き出す。


「お、おいカイト」

「聞いたろ。今日はもう休みだ。ゆっくり休もうぜ」


 海斗は欠伸をしながら、一番に宿舎の中へ入るのだった。

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