表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/113

ざまあ三人組と

「「「たた、炭鉱夫ぅぅ!?」」」


 出発前日、海斗はハインツ、マルセドニー、ナヴィアを自室に呼んだ。

 三人ともラフな格好だ。ナヴィアなどお菓子を食べながら話を聞いている。

 そして、海斗の衝撃発言を聞き、息もピッタリに声を揃えて驚いた。

 海斗が言った言葉……ガストン地底王国に『炭鉱夫の研修』として行くということで。

 当然、ハインツは言う。


「き、聞いてねえぞ!! た、炭鉱夫? なんで!? オレらデラルテ王国からの使者じゃねぇのかよ!?」

「誰も使者なんて言ってないぞ」

「待ってくれ。炭鉱夫ってことは、その……炭鉱を掘るのか? ボクも?」

「当たり前だろ」

「あ、あたしも? うそ、できるわけないじゃん!!」

「お前は別口。世話係として、炭坑内にある作業員の給仕場で働いてもらうぞ」


 三人は顔を見合わせる。

 そもそも、プルチネッラ戦で忙しく、地底王国で何をするか、目的は何なのか、全く知らないのだ。

 わかっているのは、執政官を倒しに行くということだけ。

 マルセドニーは挙手。


「……あー、何から聞けばいいんだ」


 手を上げたはいいが、何を言うか言葉に詰まってしまった。

 眼鏡を上げ、頭をボリボリ掻く。

 海斗は言う。


「とりあえず。地底王国での目的を説明する。ああ、お前たちにも役目はあるから安心しろ」

「「「……」」」

「安心しろ。今回はお前たちが逃げたり、失敗の言い訳並べてゴネるとは思っていない。魔族と戦ってだいぶ自信も、スキルも身に付いたみたいだしな」


 海斗が褒めると、三人は鼻を高くして言う。


「まあな。フン、この『聖騎士』ハインツ、今や国内最強と言っても過言じゃねぇしな。けけけ」

「ククク、このマルセドニー……すでに国内最強の『賢者』として名を馳せている」

「あたし、このまま教会の『聖女』に返り咲いてもいいんじゃない? って感じ~」


 調子に乗りまくっていた……が、海斗はウンウンと頷く。

 

「そういうわけだ。炭坑夫として、俺たちも頑張ろうぜ」

「「「おう!!」」」

「さて、やるべきことを全部説明するとなると時間がかかる。重要なことだけ言うぞ」


 海斗は、これまでメモしてきた『地底王国でやるべきこと』の用紙を広げた。


 ◇◇◇◇◇◇


「まず、最大の目的は二つ。一つは『魔王の骨』を回収すること、もう一つは『十二執政官(コライドン)』序列十一位『楽師』スカピーノの討伐だ」

「……その骨はよくわかんねえけど、執政官コライドン』序列十一位……強いんだよな」

「忘れたのか? 俺たちはすでに、序列五位を倒してる」


 そう言うと、ハインツはニヤリと嫌味な笑みを浮かべる。


「そうだった。けけけ、まあ余裕ってやつか? はっはっは!!」

「まあ……準備さえ整えばな」

「ああん? なんだよ、敵はプルチネッラの格下だろ? そんな用心必要か?」

「当たり前だろ。そもそもお前、スカピーノのこと知ってんのか?」

「……知らん」


 そもそも、『十二執政官(コライドン)』という存在は、どの種族にとっても『逆らうべき相手ではない』こと『自分たちを支配している』存在であること、そして『種族の最強戦士軍団が束になっても敵わない』存在なのだ。

 逆らう……ドワーフたちも、スカピーノに逆らうなど選択肢にすらない。

 そんな敵を、これから倒しに行くのだ。

 マルセドニーが言う。


「そういえば、賭博場で聞いたことがある。『楽師』スカピーノは音楽家だと」

「ああ。そしてスカピーノがいるのは、ガストン地底王国工業地区にある、ドワーフが技術の粋を結集させて作った特別ステージ(・・・・・・)、『トルトニス・グローム・ヴァナヘイム』……あいつは毎日、そこで自治区の魔族を相手に、歌を歌ってるんだよ」

「「「……歌ぁ?」」」


 相変わらず息ピッタリの三人。海斗は頷く。


「『トルトニス・グローム・ヴァナヘイム』……スカピーノと戦うには、そのステージに上がって戦うしかない。わかるか? ステージ上はスカピーノのための場所、真正面から挑むには不利すぎる」

「……え、待ってカイト。たた、戦うって……あんた、いつもの卑怯な戦法は?」

「あるけど、それをやったとしても、ステージ場で戦うのは避けられない」

「ま、マジ……?」


 驚くナヴィア。マルセドニーが挙手。


「待った。す、ステージ上で戦う? つまり……ま、魔族たちもいるってことか?」

「ああ。でも、自治区の魔族は戦いなんて知らない観客だ。家畜だと思っているドワーフの施しを糧にして生きてるだけ。毎日遊んでるだけ、なんの生産性もないクズ連中……相手にしなくても、スカピーノ戦の邪魔にはならない」

「……あ~、なんだか気分が悪くなってきた」

「おいおいカイト、ステージ上で戦うのはいいけどよ……卑怯な戦法は?」

「それをやるには、ドワーフの国……俺らが向かう最下層の炭坑で、ある女を仲間にしなくちゃいけない」

「女か!! あ~……でもよ、ドワーフなんだろ? ドワーフの女って、チビで髭生えた女って聞いたことあるけど、マジなのかね」

「安心しろ。クルルは人間とドワーフのハーフ……ハーフドワーフだ。人間の身体に、ドワーフの筋力、そしてジョブを持つ。そいつの技師としての力を使って、スカピーノ戦に役立ってもらう」

「……ハーフ、ね」


 ハインツは何かを察したのか、それ以上言わない。

 マルセドニー、ナヴィアも察した。もちろん海斗は知っている。


(種族同士の混ざりもの……やっぱ敬遠されてるんだな)


 この世界には、人間同士、ドワーフ同士など、同種族での婚姻が当たり前だ。

 だが……それ以外の婚姻は、認められていない。正確には疎まれている。

 そして、別種族同士で生まれたハーフを『混血人』……別種族として扱う。

 混血人は、全ての種族から嫌われているのだ。

 海斗は思う。


(リクトが、全種族のヒロインと結婚して、大ハーレムを作るなんて、信じられないだろうな……怖気がする)


 海斗は何も言わず、話を続けた。


「とにかく、執政官と戦うのは最後。その前に、地底王国の最下層で『魔王の骨』を回収する」

「さ、最下層……そういや、地底なんだよね」

「待った」


 ナヴィアが言うとマルセドニーが挙手。

 きちんと質問のたびに挙手するのはマルセドニーだけだった。


「カイト。ガストン地底王国は、上層階に行くためには許可が必要だったはずだぞ。炭鉱夫として行くなら、最下層から下層までしか移動できないはず……」

「驚いた。お前、よく知ってるな」

「フン。天才だからな」


 マルセドニーは鼻高々だ。

 海斗は言う。


「一応、俺たちの存在は極秘だ。ドワーフ国王が『そっちの執政官を倒すんで協力してくれ』なんて言って素直に協力するわけないしな。一応、デラルテ王国の執政官が死んだことは知ってるけど、俺が倒したことは内緒にしてるし」

「……じゃあ、まさか」

「ああ。勝手に乗り込んで、勝手に倒す。で、正体を現すのはスカピーノを倒したあとだ。その後はもう外交……クリスティナの出番だな」

「おいおい、マジかよ」

「まあ、使者を送る程度の連絡はクリスティナがしたからな。無断で侵入ってことにはならない」

「「「…………」」」


 三人は無言でそれぞれの顔を見合わせた。

 海斗は言う。


「さて、お前らの装備一式、全部俺が預かる。アイテムボックスの中なら安全に運べるからな」

「お、そりゃいいな。着替えとかもか?」

「ああ、容量はあるから問題ない」

「それはありがたいね。そのアイテムボックス……ボクも欲しい」

「え~、あたしの下着とかあるんだけど。見ないでよね~」


 こうして、海斗、ハインツ、マルセドニー、ナヴィアの四人は、ガストン地底王国への出発準備を終えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
レーベル:GA文庫
原著:さとう
イラスト:山椒魚
発売日:2025年 5月 15日
定価 863円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
iafemxj63vzbenw1cozh6eykl32_k9p_k8_sg_2x9u.jpg



お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ