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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~  作者: さとう
第四章 海洋国オーシャン編

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キリューネ

 海斗、イーナの二人は、キリューネたちより先回りし、定期船に乗って海洋国オーシャンへ向かっていた。

 海斗とイーナは甲板に出て確認をする。


「原作では、卒業式を終えて本国へキリューネが送り、途中でキリューネの部下が卒業生を攫い、他国へ送られるって感じだった。その現場を押さえる……」

「……本当に、人身売買があるなら、ね。ここまで付き合ってあげるなんて、私も優しいなー」


 イーナは海を眺めながら、海斗に微笑みかける。

 海斗は言う。


「イーナさん。お願いがある……どうか、あんたの部下に、あんたは手を出さないでくれ」

「それはダメ」


 完璧な否定だった。

 イーナは、執政官としての顔で海斗に言う。


「部下の不始末を付けるのは私の仕事よ。カイト、余計な手出しをしたら、あなたでも許さないわ」

「…………」


 説得は不可能だった。

 海斗は舌打ちを堪えて思う。


(……イーナが部下の粛清をするところをオーミャが目撃する。だから、リスクを減らすには俺がやるのが一番だ。でも……イーナはそれを許さない。俺が手を出そうモンなら敵対しちまう。オーミャは孤児院にいるけど、リスクは減らしたい……くそ)


 イーナは、海斗の額を指で軽く押す。


「難しい顔しないの。カイト、全部あなたの杞憂で終わるんだから。ふふ、お姉さんとデートに出かけるみたいな、軽い感じでお話しましょ」

「で、デートって……あのな」

「ふふ、なんか可愛い子。あなた、女の子慣れしてないの?」


 イーナが顔を近づけてくると、海斗は無意識で顔を逸らす。

 耳まで赤くなっていることに気付いていない。だが、イーナは気付き、海斗の耳を引っ張る。


「耳、真っ赤っか」

「……ああもう、からかうな!!」

「あはは。ごめんごめん」


 普通の少女みたいな、そんな風にしか見えない。

 海斗は、赤くなった耳を押さえるように、イーナから距離を取るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 港に到着し、海斗は周囲を見渡した。


「ここが、地上区だっけ……?」

「うん。魔族の自治区だけど、ここは主に船着き場と、海人たちの居住区画でもあるの。魔族のエリアに行くのかな?」

「ああ。人身売買は……えっと、確か」


 記憶活性をした海斗は、場所の名前を思いだす。


「確か、卒業生は『神殿』で明るい未来を……みたいな感じで祈るんじゃなかったっけ。そこが、人身売買の本部だったはず」

「神殿……ああ、『エレシュキガル大神殿』のことね。どの自治区にもある神殿だけど……」

「じゃあ、そこに行こう。人間だけど、入って大丈夫だよな」

「ええ。自治区は一般開放されてるわ。海人も多くいるけど……一応、あなたはフードを被ったほうがいいわね」

「そうするよ」


 海斗はフードを被る。

 そして、イーナの案内で神殿へ向かって歩き出した。

 歩くこと数十分。デラルテ王国の城下町とそう変わりない地上区。魔族が多く、海人も同じくらい多い……デラルテ王国の自治区と違い、魔族はみんな穏やかな顔をしていた。


「種族の違いなんて、些細なモンなんだな……」

「そうね。十二種族はみんな、仲良くなれる……私はそう思う。まあ、異端なんだけどね」


 イーナは苦笑した。

 ちなみに、今のイーナは魔族としての特徴を出している。ツノや目の色が魔族と同じになるだけで、こうも印象が変わる。

 そして、神殿に到着。


「でけえな……世界遺産みたいだ」

「いさん?」

「ああ、こっちの話」


 エレシュキガル大神殿は、巨大で荘厳……真っ白な塔がいくつも合わさったような形状で、多くの魔族が出入りしていた。

 イーナはキョロキョロし、海斗の手を掴んで神殿の側面へ回り込む。


「待ち伏せするんでしょ?」

「そうだけど……」

「じゃあ、こっち。掴まってて」


 神殿の側面には人が少ない。

 イーナは腕に大きな『蜘蛛』をくっつけ手を上へ掲げる。すると、蜘蛛が糸を吐き、神殿の上部にくっついた。

 イーナは海斗を掴み、蜘蛛に命じて一気に上昇。海斗が叫ばないよう、海斗の顔を胸に押し付けていた。


「~~~っ!!」

「はい、ここなら大丈夫。さ、待機……どうしたの?」

「……べつに」


 海斗は顔が赤く、イーナをまともに見れなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 海斗たちがいたのは、神殿の塔の側面。

 地上からかなり高い位置にあり、地上から見上げただけでは見つからない。


「神殿の中に、隠し通路とかあったはずだ」

「……じゃあ、見張るしかないわね」


 イーナの手に、小さな蜘蛛が現れた。

 海斗も、アイテムボックスから小鳥の骨を出す。


「『骨命(リ・ボーン)』」

「行きなさい」


 ネズミの骨が形となり、柱を一気に駆け降りる。

 指先程の小蜘蛛が、壁を伝って神殿の中へ。


「『視覚共有』……これで見張れる」

「へえ、私と同じことできるんだ」

「今の蜘蛛で、中を見れるのか?」

「ええ。蜘蛛の目と私の目、繋がってるから」

「じゃあ……真実を一緒に見ようか」


 それから数時間後……卒業生の少女数名、キリューネ、キリューネの部下が来た。

 海斗、イーナは黙りこむ。

 神殿に入り、キリューネが少女たちに笑顔を向け、何かを言っている。


『さあ、神に祈るといい……これからの未来に』

『はい、先生』

『ふふ、未来かあ……わくわくだね』

『うん、がんばろう』


 少女たちが、エレシュキガル大神殿の中央にある神像に祈りを捧げていた。

 そして、祈りが終わるなりキリューネは言う。


『向こうの部屋に、もう一つ神像がある。そちらにも祈りを捧げよう』

「……え?」

「どうした?」

「もう一つの神像……そんなの、初めて聞いたけど」


 蜘蛛、骨ネズミが後をつける。

 そして、キリューネの部下がドアを開け、少女たちは中へ。

 ネズミ、蜘蛛も滑り込むように中へ入り、ドアが閉まった。


『あれ、像なんてないですけど』

『ああ、すまないな……それは嘘だ』

『え? って……な、何を!?』

『きゃあ!?』『せ、先生!?』


 キリューネの部下が、少女たちを拘束。

 キリューネの手にある蜘蛛から糸が発射され、少女たちをグルグルと包み、まるで繭のようにしてしまった。


『運べ』

『はい、キリューネ様』

『ザンニが消えたとはいえ、ドットーレ様の研究は続いている。海人の需要はある……ククク、これからも卒業生には役立ってもらおう』

『ええ、そうですね……しかし、インナモラティは気付かないのですか?』

『あの善人は気付かない。卒業生が全員、町で仕事をして幸せに暮らしていると思ってるからな。やれやれ、あのバカの『親友』を続けるのも楽じゃない。ドットーレ様は褒めてくれるだろうか』

『一度、ドットーレ様の元へ帰ることも考えては?』

『そうだな。休暇が欲しいと言えばいいか。どうせインナモラティは気付かない』

『ははは、そうですね』


 これが現実だった。

 すると……海斗の背筋が凍り付いたような錯覚がした。

 思わずイーナを見ると。


「…………キリューネ」


 イーナではなかった。

 十二執政官序列九位『求愛』インナモラティが、そこにいた。

 イーナは、海斗を見て言う。


「ごめんね、あなたの言う通りだった……」

「……待て!! まさか」


 イーナの身体に蜘蛛の糸が巻き付くと、そのまま壁と同化して消えた。

 粛清……海斗は、イーナがキリューネを殺しに行ったのだと理解する。

 そして、ネズミに視覚を戻そうとした時、宮殿の外で信じられないものを見た。


「…………は?」


 ◇◇◇◇◇◇


「なあ、卒業生ってのはどこに?」

「神殿でお祈りするのが決まりなんです。きっとそこに」


 ◇◇◇◇◇◇


 リクトとオーミャがいた。

 あり得なかった。なぜ、ここにいるのか。

 そして、リクトの傍にもう一人いた。


「か、海洋国オーシャンの、姫……ネプチュン」


 サブヒロインであり、オーミャの親友であり、海洋国オーシャンの国王ブルースの娘、海人のネプチュンが何故かいた。

 あり得なかった。なぜ、この場に、このタイミングでいるのか。

 海斗の背筋に、冷たい汗が流れた。


「ね、ねじ曲がった、原作……まずい」


 このままでは、リクトとハーレムメンバーが、そしてオーミャが、イーナを殺す。


「──クソがあ!!」


 海斗が苛立ちに壁を殴りつけると同時に、教会内から叫び声が聞こえてきた。

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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
レーベル:GA文庫
原著:さとう
イラスト:山椒魚
発売日:2025年 5月 15日
定価 863円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
まぁ、関係壊れるとしたらそう言う事だよね。 カイト原作知ってるのに所々こう言うケアレスミスしてるんだよね。 原作と違うからって安直に考えてのってパターンこれからも有るんだろうな・・・・
感想一覧
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