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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~  作者: さとう
第四章 海洋国オーシャン編

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デラルテ王国女王クリスティナと護衛たち②

「それでは、これからよろしくお願いします。オーシャン陛下」

「こちらこそ。クリスティナ女王、よき会合でした」


 海洋国オーシャン、海底区にて。

 クリスティナは、海洋国オーシャン国王、ブルース・オーシャンと会合を終えた。

 デラルテ王国、そして海洋国オーシャンはこれから同盟を結び、協力関係を築いていくという話を終え、クリスティナは内心でホッとしていた。

 クリスティナは言う。


「そういえば……こちらにも、魔族の方がいらっしゃるのですね」

「我が国は、魔族と良好な関係を築いております故」


 地上は当然だが、まさか海底区にも魔族がいるとは思っていなかったクリスティナ。会議場内にはいないが、会場の外では、魔族による警護があった。

 ちなみに、イザナミたちも会場の外で待機。傍にいるのはツクヨミだけで、どこか眠そうに欠伸をしていた。

 魔族……クリスティナは、デラルテ王国に来た魔族に『豚』だの『ゴミ』だの言われた過去がある。まだ微妙に魔族に対し忌避感があった。

 すると、ブルースは言う。


「ほっほっほ。ご安心ください。執政官『求愛』インナモラティ様は、我々海人だけではなく、他種族にも理解のあるお方です。そもそも、この会合も、インナモラティ様の発案によるものですから」

「それは初耳でした……すごいお方なのですね」

「ええ。月に一度、顔もお見せにならず、声だけでのやりとりですが、慈愛に満ちたお方とわかります」

「……なるほど」


 海斗が『インナモラティは倒さない、話せばわかる』と言っていたが、どうやら評判はかなりいい。

 デラルテ王国にいたスカラマシュがいかに適当、いかに人間に興味がなかったのか、クリスティナはため息を吐きたくなった。

 

「それでは、お部屋にお送りいたします。お帰りは明日、でしたな?」

「ええ。いろいろ、お世話になります」


 こうして、海洋国オーシャンとデラルテ王国の会合が無事に終わり、クリスティナは女王として初めての外交を成功させるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 貴賓室に案内されたクリスティナは、イザナミ、ツクヨミ、クルルと四人でくつろいでいた。

 イザナミは壁に寄りかかり、クルルは部屋の調度品を珍しがり、ツクヨミはロングソファに横になって大あくびをする。

 クリスティナは、盛大にため息を吐いた。


「あ~……終わりましたあ。あとは、カイトとリクトの二人に合流して、帰るだけですね」

「……クッソつまんねえ。会議場の外に魔族いたけどよ、クソみたいな優男で武器持った農民のがマシなレベルだぜ。マジでつまらん」

「……同感だ。正直、ここの魔族に覇気を感じない。兵士と言ったが……あれでは、人間と大差ない」

「ぶ、物騒ですけど……装備はけっこういい武器でしたよ」


 クルルが言うと、イザナミとクルルは興味を示さない。

 クリスティナは言う。


「とりあえず、あとは会食だけで、それが終わったら明日は帰るだけ。どこかにリクトがいるはずなので、探すしかないですね」

「ケケケ、女王様自ら町を探すなんて聞いたことねえや」

「う、うるさいです。最低限の人間しか連れてこれなかったんですから。一応、エステルには地上区にいるよう伝えましたけど」

「……なら、問題あるまい」


 それから、しばし談笑……クリスティナは言う。


「そういえば、海斗のは明日、ちゃんと来るんでしょうか」

「ああ? んだよいきなり」

「いやー……カイト、また変なことして、怖い目に合ったりとか」

「……カイトなら、何をしでかすにしても、執政官討伐のためになることだろう」

「まあ……そう、ですけど」


 どこか心配そうなクリスティナ。するとクルルが言う。


「大丈夫ですよ。カイトさんはたぶん、この国のためになることをしていますから」

「そ、そうですよね……」

「女王様よ、何気にしてんだ?」

「いえ……カイトが何をしてるかもですけど、カイト、リクトのことあんまり好きじゃないみたいなので、再会して喧嘩でもあったら面倒だなあと」

「……嫌いなのか?」

「嫌いというか、偽善者とか言ってますよね」

「ああ……ザンニも言ってたぜ。一人は『役者』で、もう一人は『偽善者』だって」


 ツクヨミが言うと、クリスティナが質問する。


「役者、ですか?」

「ああ。カイトは、物語の脚本家だけど、演じる方が多い役者って言ってたぜ。先の先の先、未来が見えてるような行動で、自分を駒にして劇を演じているとか……見ていて楽しいとか言ってた。で、もう一人は偽善者。目の前しか見ていない、周りがどうなろうと、自分が望む結果さえよければいいし、見ようともしないクズな偽善者だとさ」

「それ、リクトのことですか?」

「ああ。ザンニは言ってたぜ? 『傲慢な正義は悪と紙一重』だって。的を得てるぜ」

「…………」


 悪……リクトが、悪。

 クリスティナは、今のリクトを知らない。

 ただ、優しい少年には見えた。お調子者で正義感が強いと、エステルの手紙にも書いてあった。

 カイト、リクト……クリスティナにとっては、世界を救う『救世主』に変わりはない。


「……とにかく、二人が喧嘩しないようにちゃんと見ないとダメですね!!」


 クリスティナは、ウンウン頷き気合いを入れるのだった。

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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
レーベル:GA文庫
原著:さとう
イラスト:山椒魚
発売日:2025年 5月 15日
定価 863円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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