既婚
英賀手はヨヨヨ。
夜比古はカッカ。
重臣たちは右往左往。
引き立て派閥も顔真っ赤。
長上は初めから、こうなると思っていた。
「埒が明かないな。今までどおりがお望みなら、何のための後見人だ?」
夜比古はさらにカッカした。
「後見人だからこそ、勝手な真似など許されぬ!ヽ(`Д´)ノプンプン」
「勝手? 私は提案しているだけ。
文だろうと、絵手紙だろうと、英賀手さまのなさりたいようにすればよい。
私が代筆する訳でもあるまいに。
ーーただし、今後、我が妹・天音には、文を寄越すよう命じた」
「……ヨヨヨ(;∀;)? 天音が文を?」
「はい、英賀手さま。お互いに競い合い、高め合えるとよいですね」
「あきれた男だ。生かして置けぬ」
夜比古は思わず脚が出てしまった。
途端に蹲る長上。やはり弱すぎる。
天媛……こんな軟弱者に、後見など務まるのかい?
「長上!」
駆け寄る英賀手。
なんと心のやさしい宗女だろうか。
しかし長上は、すぐには立ち上がらない。
益々腹立たしい。全てこの男の仕組んだ茶番劇ではないのか。
「んまあ、ひどい方たちだこと」
唐突に、女の声がした。
振り向くと、合議場の入り口に、女人が二人も立っている。
どう見ても女官ではない。
服装や立ちふるまいからしてーー
一人は主人、一人は侍女のようだった。
「長上? 肩を貸しましょう。起き上がれますか?」
「亜久里……」
長上は、主人風の女の肩を借りて、近くの椅子に腰を落ち着けた。
見るからに顔色が悪い。侍女が手巾を差し出した。
長上は受け取り、急いで口元に当てる。
だが、夜比古の知ったことではない。
これは一刻を要する。
英賀手の今後に関する、緊急事態なのだから。
「こんな方たち、もう放って置いたら?
今日はそのために来たのだし」
「そうだな……うぐ」
「長上! 私の母から預かった頓服薬です。水も要らないので飲んでください」
長上は、侍女から差し出された丸薬を、毒見もさせず口に放り込んだ。
もはや正常な判断力すら疑わしい。
「シクシク……長上が無事でよかった……」
英賀手は、とうとう堰を切ったように泣き出した。
「英賀手さま。すこし静かにしてくれ」
「ヨヨヨ(´;ω;`)?」
英賀手は長上から、袖で大粒の涙を拭われ、キョトンとした。
「おととい結婚した。
相手はここに居るーー
蒿雀亜久里だ」




