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祭のあと

祖霊祭は無事終わり、川岸の賑わいも徐々に収まった。

天音と英賀手は、鞠遊びの後、川辺の木陰に腰を下ろし、並んで笑い合っていた。


「天音……さっきの“お兄ちゃん”って、誰のことなん?」


英賀手の好奇心は止まらない。

天音はニコニコ笑いながら指差した。


「アレアレ! アレがわたしのお兄ちゃん!」


そして満面の笑みで叫ぶ。

「長上!」


英賀手は呆気に取られ、ただぽかんと口を開けるしかなかった。







祭事が一段落し、宮中に戻ろうとする天媛と夜比古だが、挨拶列が引きも切らない。

その中には長上も、門客を伴って並んでいた。


「天媛、夜比古さま、ご結婚おめでとうございます」


夜比古はにっこりと微笑みながら首を横に振った。


「まだ先の話ですよ、長上。

 でも、これでやっと……自分の子供を持てます」


その言葉に、天媛は思わず凍りついた。


(……はあ? いきなり子供の話やて?)


天媛の心はざわつく。

英賀手はまだ幼く、手がかかる養女やというのに。

夜比古も次期養父として、英賀手を可愛がっとったんちゃうか?


養女に来てまだ間もないんやぞ、いきなり実子誕生なんてーー英賀手戸惑うに決まってるやん。


(……ほんまにわかっとんのか? 英賀手のこと、ちゃんと考えとるんか?)


(仮に実子ができたら、もう英賀手に、見向きもせんようになるんちゃうん?)


天媛の脳裏には、母のことがちらついた。

天媛の時から既に難産で苦しみ、次子の誕生で、母子ともに亡くなった母の姿——。


その痛みと恐怖を、夜比古は想像もできへん——そんな気がした。


(あんたは何も……失わんで済むもんな)


(生まれよが生まれまいが、命まで取られるわけちゃうもん……)


さらに、心の奥で小さな怒りが芽吹く。

子供を作ることで、宗女との婚姻関係を維持したい……夜比古の、軽率で無理解な言葉の裏に、支配欲まで透けて見える気がした。


天媛はそっと、遠くで女の童とはしゃぐ英賀手の姿を見つめる。

小さな養女の無垢な笑顔が、余計に天媛の苛立ちを募らせた。


胸の底で決意が固まる。


守るべき者を抱きしめるために、少しでも強うならな、と。



すると、急に吐き気がこみ上げて来て、思わず袖で顔を覆う。


「うっ……あかん、なんやこれ……」


「天媛! いったいどうしたんです、まだお身体の具合が……?」


夜比古が心配そうに、天媛の背中をさすった。


「おやおやぁ、まさか……オメデタですか?」


長上の隣で控えていた門客が、隅に置けないなあ、という顔をしながら言った。


「無礼だぞ、門客。私はともかく、天媛まで愚弄するか!」


「夜比古さま! 申し訳ございません。

 門客には、私からあとできっちり処罰を与えますので、どうかこの場はお収めください!」


長上が平伏すると、周囲の目はなんだ、なんだ?と釘付けになった。


夜比古は咳払いする。

「わかった。ーーだが、両属朝は、我々の婚儀では、席をはずしてもらう。縁起が悪いのでな」


「夜比古……勝手に決めんなや、あて通さずに……」


「天媛。お加減が悪いのですし、もう退出されてはいかがですか?

 挨拶は、代わりに私が」





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