表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/102

月光花

月光が宮中の屋根を銀色に染めていた。

父方筋の男、内務を中心に、

「引き立て派閥」が静かに控えていた。


この派閥は、前宗主ーー天媛父の時代から築かれた、新興勢力である。


先々代のご落胤として宮中入りした天媛の父は、権力基盤の薄さを痛感した。

そこでーー親族だけでなく、市井や下級官吏からも、有能な者を積極登用した。


その血と実力で引き立てられた者たち――今ここに控える面々が、まさにその派閥だった。


古くからの重臣たちは、眉間に深い皺を寄せる。


「父方筋がでっかくなりすぎたら、宮中の勢力図がひっくり返ってまうわ……」

「せやけど、天媛があないハッキリ指名したんや。無視できひんやろ……」


重臣たちは日に日に圧力を強め、ついに切り出した。


「天媛をお支えするのが結婚相手の役目や!

 内務、結婚するんやったら職を辞めなはれ!」


内務は知的かつ穏やかに答えた。

「承知しました。引き継ぎを進めます」


だが、後任が決まらない。


引き立て派閥の者を据えれば、

重臣たちは「歴史浅い家に務まるかいな!」と猛反対。


仕方なく重臣派閥に声をかけると、


「いやあ、腰が……」

「犬が死にましてな……」

「明日から旅行やねん」


と、みんなくすくす笑いながら逃げてしまった。


後任はゼロ。

内務は辞められない。

結婚も、やむなく延期となった。


宮中は張り詰めた静寂に包まれた。

焦った引き立て派閥の面々が声を上げた。


「では、英賀手さまに許嫁を!」


その瞬間。


布団の中から、天媛の熱に浮かされた声が炸裂した。


「英賀手にはまだ早いわ!

 政争の道具になんかさせへん!

 あての結婚に英賀手は関係あらへんやろ!

 そこまで言うなら、ナシやナシ!

 内務と結婚なんかせえへん!!」


宮中が凍りついた。


重臣たちは目を丸くし、

(……マジか……悪魔合体……中止……?)

と内心で万歳三唱。


引き立て派閥は真っ青になって土下座態勢に入った。

天媛は布団に顔を埋めたまま、ぼそりと付け加えた。


「皆が納得するまで、結婚は延期や。

 あーあ……あて、花の独身やわあ~」


誰も口を挟めなかった。

内務だけが、月光に輝く髪を揺らし、静かに微笑んだ。


「――天媛の仰せのままに」


こうして、かはそに朝の悪魔合体は、無期限延期となった。


重臣たちは内心で勝利を確信し、

引き立て派閥は泣きながら土下座。


離宮では養女・英賀手が


「ねえねに捧ぐ! お花お花ー!」


と、庭中の月光花を摘んで周り、庭師を泣かせていた。


満月だけが、すべてを見届けて、

静かに輝き続けていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ