表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/102

純愛

天媛が布団から手を伸ばし、父方筋の男ーー内務ないむを指さす。


「ほら……おった……あて、この人がええ……」


女官たちは歓声を上げた。

「あぁ~~~やっぱりそうなんや~~!!!」


重臣たちの頭の中では、複雑な板挟みが生まれていた。


(あかんあかん。このままでは天媛父方筋の……)

(ご落胤として宮中入りし、非業の死を遂げた前宗主のーー)

(田舎モン親族たちが、えばりくさるだけやん!)

(やけど、天媛の“明確な指名”や。下手に動いたら政変の火種にも……)

(んで負けたら、今度こそしまいや……)


その静かな間に、内務は微笑みを浮かべ、静かに天を仰いだ。


「これで、ようやくなのかい……?

 長上と噂になってよかったよ。今まで、縁談を跳ね除けた甲斐もあった」



父方筋の面々は、心の中で静かに微笑む。


(これ……我ら千載一遇の機会では?)


 圧勝ムードは、言葉なくして場を支配する。


一方その頃、英賀手あがでは、天媛の養女入りが確定したことを知らされる。

そして喜びのあまり、せうびん氏の屋敷で庭中を駆け回る。


「わ~い! ねえねー♡」


 せうびん氏一族も、ほっと胸を撫で下ろす。


「これで外戚の地位は、今後も安泰♡

 英賀手が産まれた際は、男じゃないのを悔やんだものだが……

 あー、よかったよかった~」


しかし、重臣たちの思惑には反していた。


英賀手を擁する、せうびん氏。

彼らなら、宮中とも繋がりが深い。


だが、英賀手養女化で、天媛側に渡った直後ーー

天媛が内務と結ばれれば——


「養母(天媛)+養父(内務)の悪魔合体が完成」


→かはせに朝の宮中では、

 代々続く家臣派閥 VS ご落胤前宗主の引き立て派閥が対立している。


これはつまり、天媛の跡目がーー

養女・英賀手だろうが

実子・天媛と内務の子となろうが、


引き立て派閥の大勝利エンドである。

重臣たちの思惑は、完全に裏目に出たのだった。


天媛は熱でぼーっとしたまま、素の好みで選んだだけ。だが、政治地図は一瞬で塗り替わった。


ーー女官たちはすでに、心の中で純愛物語をしたためる。


「天媛がまだご幼少のみぎりから

 ずっと陰に日向にお守りして……

 女官の目が届く、月夜にしか現れず……

 他の女性には目もくれず……

 想い続けておられたん……?」


「せ、切ないやんか……でも、素敵やわあ……!!」


「だからずっと独身貫いてはったんや……

 天媛だけを心に……!」


月夜にしか現れない、父方イケメンの、風流な姿。

天媛の快癒を願い、千人針を携えて迷わず参上——その姿に、宮中の空気は一変する。


「天媛……お幸せに……(泣)」


重臣たちも、もはや強硬手段を取りにくい。

宮中全てが、父方イケメン × 天媛CP支持の空気で満ちていた。


長上は両属朝の帰路で、ふと独り言を呟く。

「よかったな~、英賀手。これでいつでも、ねえねと一緒だぞ」


ーー天命も偶然も、すべてがこの月夜に収束する。

 そして、父方イケメンの株は、宮中でノンストップ上昇したのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ