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月夜の美丈夫

「ーーでは、今度こそ」


長上は、自分の役目は終わったとばかりにそそくさと宮中を退出し、両属朝への帰路についた。


重臣たちは天媛の寝所に向かい、奏上する。


「天媛。

 せうびん氏の英賀手あがで殿をご養女として迎え、

 その後天媛は、例の三名より婿をお選びに。

 我らも、全面的に後押し致しますさかい」


「……あて、もう誰でもええけど……

 ……強いて言うなら、アイツが……」


「はて? ……どなたのことを?」


「月夜にしか出てこん、美丈夫……」


天媛は、布団から人差し指を、ひょいと伸ばした。


ーーすると。


ふわり、と簾の向こうに影。


月明りが差し込む中、

夜風をまとう男が静かに現れた。


「火急の為、失礼つかまつる。

 再従妹・天媛の容態を案じ、

 我が母から、千人針を預かって参った」


重臣たちは息を飲む。

「なんで今来るんや……!!」

「油断しとった……!」

「こ、これは……身内特権やな……」

「……くっ、これは……想定外や」

「皆の衆、落ち着け……だが、確かにこれは重い事態や」


天媛は布団から手を伸ばし、父方筋の男を指さす。


「ほら……おった……

 あて、この人がええ……」


女官たちは歓声を上げる。


「あぁ~~~やっぱり!!!」


重臣たちは、いよいよ慌てた。


「天媛、それは……御容体のせいで錯乱を……」

と柔らかく否定にかかるーーと思った瞬間。


御簾の向こうから、人影が顔を出した。

重臣たちの目の前に、今度はハッキリと、

月光を背負った、気品ある“父方筋の男”が現れた。


彼は身内特権で天媛の容体を聞きつけ、独自に宮中へ来た。

その上、女官ウケもバツグン。


ーーあ~ん、どうすればいいのだこやつ~!




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