【閲覧注意】勾人 ⚠️自殺に関する内容が含まれます⚠️
海鳴りが胸底に響く。
崖の端に座った瞬間、勾人の中で、ようやく全ての思考がかみ合っていく。
あの三夜ーー本当に想いなど通じていたのだろうか?
死んだ母の懸念こそが正しかったのではないか?
阿諛はただ、我慢を我慢とすら認識できず、勾人も含む大人たちに利用され尽くしていただけで。
「ここまでしておいて、死ぬのは……こわい」
生存本能ーーあんな見た目でキモチよくなれたのは、もうとっくに壊されていたからだ。
心も、内臓も、骨も、ズタズタに変形させられ、痛覚すらも快楽装置。欲望に特化した身体。
なのに俺は、良心の呵責なんかみじんも湧かない。
「いちばん大事な物を、いちばん俺が壊したかった」
こんな人間が……生きていていいはずがない。
死んだ母が可哀想だ。
こんな俺が息子だなんて……
母はなぜ、出立前夜に死んだのか?
初めから分かりきっていた。
ただひたすら、己かわいさに、目を逸らし続けていただけだ。
計里氏は消した。
あとは俺だけ。
でも……死後も誤解されるなんてまっぴらだ。
阿諛のために、阿諛の過去をなぞって、崖の向こうへ消えてしまおう。
そしたらいつかーーふとした拍子に気がついて、泣いてくれるかも知れないから。
阿諛……俺は、
オマエのこと……本当に好きだったよ。
ごめん。
だから俺が、一番壊れることにした……
これでやっと、お前と同じになれただろ……
阿諛……
「いたぞー!!」
敵兵の声に、ようやく踏ん切りが付いた。
重心を前に移動すれば、簡単に墜ちて行った。
「危ないでしょう! 勾人。そんな近くに寄っちゃ」
母の言いつけは、最期まで守れなかった。




