真相
勾人の心中は、穏やかではなかった。
以前、阿諛の保護を奉行所に願い出た際、阿諛を関所から通さなかった領主――
それはこの、今目の前に座るしつりではないのか?という疑念が、脳裏をよぎる。
「奉行所からの出頭要請には、肝が冷えた」
「それはどういう……!」
勾人が詰問しようとしたその時、薬師が奥から顔を出した。
しつりは薬を受け取り、その場を立ち去ろうとする。
「続きを知りたければ、夜、屋敷へ参れ」
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宮中の仕事を終え、勾人は教わった道順に従ってしつりの屋敷を訪れた。
そこでは、小寿林氏の地酒と山菜のぬか漬けが振る舞われる。
「阿諛は昔から、猫背気味の腰痛持ちでな」
「はあ……」
「我が傅役は姿勢の悪さを咎め、さらに蹴ったりもした」
阿諛は食が細く、時折腹を押さえて吐くこともあった。
傅役は『教育のせいだな』と笑いながら、優しく背中をさすっていた。
傅役は毎日、阿諛と手を取り合いながら牢屋や刑場を巡り、死体に化粧を施させた。
その際も傅役は『これが人の正鵠だ』と穏やかに教えた。
阿諛が妙ちきりんな宴会芸を披露したときも、傅役は『なつかしい』と笑っただけで、阿諛は無言で飲み込んだ。
「吾人と傅役には因縁がある。傅役は吾人の種違いの兄。
母は無理矢理、吾人の父に娶られ、吾人を産むと死んでしまった」
傅役は、吾人を殺すつもりであったのだろう。
吾人が物心ついたのは、誰も見ていない瞬間に、湖へ突き落とされた時からじゃ。
その後、父領主は川下りの事故で死んだ。同乗者には、まだ幼い頃の傅役も居た。
吾人と傅役の仲は険悪であったが、
傅役が私的に人を雇い入れてからは、まるで憑き物が落ちたかのように優しくなった。
ある日、傅役はとうとう仕上がった阿諛を連れてきた。
さきに手本を見せると言って覆い被さると、
阿諛に『俺が一番優しいだろ?』と囁いた。
「吾人の兄は、酷いやつじゃ」
「のう、勾人。天媛がわざわざ三夜の相手を別れさせたと聞いて、見に来てみたが――
そなたは兄と、どう違うんじゃ?」




