表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/102

真相

勾人の心中は、穏やかではなかった。

以前、阿諛の保護を奉行所に願い出た際、阿諛を関所から通さなかった領主――


それはこの、今目の前に座るしつりではないのか?という疑念が、脳裏をよぎる。


「奉行所からの出頭要請には、肝が冷えた」

「それはどういう……!」


勾人が詰問しようとしたその時、薬師が奥から顔を出した。

しつりは薬を受け取り、その場を立ち去ろうとする。


「続きを知りたければ、夜、屋敷へ参れ」





宮中の仕事を終え、勾人は教わった道順に従ってしつりの屋敷を訪れた。

そこでは、小寿林氏の地酒と山菜のぬか漬けが振る舞われる。


「阿諛は昔から、猫背気味の腰痛持ちでな」

「はあ……」

「我が傅役ふえきは姿勢の悪さを咎め、さらに蹴ったりもした」


阿諛は食が細く、時折腹を押さえて吐くこともあった。

傅役は『教育のせいだな』と笑いながら、優しく背中をさすっていた。


傅役は毎日、阿諛と手を取り合いながら牢屋や刑場を巡り、死体に化粧を施させた。

その際も傅役は『これが人の正鵠だ』と穏やかに教えた。


阿諛が妙ちきりんな宴会芸を披露したときも、傅役は『なつかしい』と笑っただけで、阿諛は無言で飲み込んだ。


「吾人と傅役には因縁がある。傅役は吾人の種違いの兄。

 母は無理矢理、吾人の父に娶られ、吾人を産むと死んでしまった」


傅役は、吾人を殺すつもりであったのだろう。

吾人が物心ついたのは、誰も見ていない瞬間に、湖へ突き落とされた時からじゃ。


その後、父領主は川下りの事故で死んだ。同乗者には、まだ幼い頃の傅役も居た。


吾人と傅役の仲は険悪であったが、

傅役が私的に人を雇い入れてからは、まるで憑き物が落ちたかのように優しくなった。



ある日、傅役はとうとう仕上がった阿諛を連れてきた。

さきに手本を見せると言って覆い被さると、

阿諛に『俺が一番優しいだろ?』と囁いた。


「吾人の兄は、酷いやつじゃ」


「のう、勾人。天媛がわざわざ三夜の相手を別れさせたと聞いて、見に来てみたが――

 そなたは兄と、どう違うんじゃ?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ