痛み止め
「おーい、勾人、また薬もろてきてや~」
天媛は御簾越しに顔をのぞかせ、眉ひとつ動かさずに言った。
「腰痛用や。あの腕のええ薬師に頼むんやで。適当にちゃうやつ持って帰ってくるんやないぞ」
勾人は心中で疑問を抱く。
(なぜ腰痛のない天媛のために、毎度毎度……反物の次は、腰痛薬か……?)
それでも、黙ってうなずく。
「はい、天媛の仰せのままに」
「ほな早よ行きや。道すがら、変なことせんと、ちゃっちゃと済ませて帰って来るんやで」
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勾人は天媛のおつかいで、腕のいい薬師の店へ足を踏み入れた。
調合を待つ間、待合室に腰を下ろすと、目の端に見覚えのある顔が映った。
最近、この店でちらほら見かける、若隠居の姿だ。
「……よく会うのう」
若隠居が、穏やかに声をかけてきた。勾人は少し身を引きつつ答える。
「はい、これも仕事ですから」
若隠居は一瞬、じっと勾人を見つめる。
「そちが、勾人か?」
「失礼ですが、どこかでお目にかかりましたでしょうか?」
「いや、ここ以外では会ったことはない」
勾人の胸に疑問が走る。
(ならば、なぜ名前まで知っている……?)
二人の間に、ほんの少しの間が生まれる。
待合室の静けさが、逆に互いの存在を際立たせるようだった。
先に勾人の頼んだ薬が仕上がった。
若隠居はそれを一瞥すると、独りごちた。
「やれやれ、一生ものか……」
「やはり、どこかでお会いしませんでしたか?
お名前を頂戴しても?」
すると若隠居は、まるで待っていたかのように、しつりという名前を名乗った。
山岳地帯である小寿林氏の元領主であるが、自身の持病の悪化に伴い、叔父に跡目を譲って都へ登って来たのだ、とも。
「小寿林氏といえば……長上のご出身でもありますね」
「確かにそうじゃが、よく知っておるな。
さすが三夜を共にしたお相手じゃ」




