❂《天邪鬼・さらなる無理難題:いちばん大事な物を献上せよ》
お白州は閉廷した。
天邪鬼はまだ笑いが足りず、朝廷で腹を抱えたまま、御簾越しに勾人を見下ろす。
「なあ、勾人。気ぃ付いたら“阿諛の古代成人認定”に乗っかったやろ?」
勾人は即興で短文詩をしたためて詠う。
これが、かはそに朝では求婚者たちに課せられた、
絶対ルールなのだ。
【東風吹かばーーうるさい。うるさい。忘れがたき夢……】
天媛からの返歌はない。彼女は滅多に詠わない。しかし他人には強要する。
「ふんふん。代償、払ってもろおか(☞゜∀゜)☞?」
勾人はため息をつきながらも詠み続ける。
【代償とは 何を示すや 我が心惑う】
天媛ーーいや、天邪鬼は、にや~~~~と笑みを浮かべる。
「うち、宗女やし? 求婚には“供物”が要るねん」
勾人は以降もひたすら短文詩を詠む。
【求婚などせぬ わが身かな ただ徒に、心ざわめく】
天邪鬼ーーいや、天媛は、組んでいた胡座を組み直す。
「ほな、勾人の……
〈●〉〈●〉✨ “いちばん大事なモン”✨
もろてこか?」
【いかにせむ。 知らぬ我を 試す天媛】
御簾越しに、天邪鬼ーーいや、天媛の瞳が妖しく光り輝く。
「勾人がいちばん大事にしとるの、何やろなぁ~?
“遺髪”か? “阿諛”か? どっちや?」
【詠み人知らず】
天媛は、ジタバタと御簾越しに蠢いた。
「はぁ~? ほな……阿諛やな? 献上して? 今ここで♡」
【如何にせん 彼は何処か 声も無し】
天媛ーーいや、天邪鬼は、パチンと指を鳴らした。
「はいそこ、阿諛の笑顔の幻を思い浮かべて、
その掌にのせて出せ。
出せへんかったら、“三夜事件”を奉行所に密告しとくわ♡」
【脅かされ 心揺らぎて 声もなし
眼前座るは まことの宗女か?】
天媛? 天邪鬼? もうどちらかは分からない。
どちらも同じこと。同じ人物による、同じ台詞だ。
「さあ、いちばん大事なモン、献上♡
ほら勾人、はよ~~?」
【我が掌に 掴めぬものを 差し出せと?】




