【閲覧注意】祈り ⚠️虐待に関する内容が含まれます⚠️
数え年の響きは、大人として扱われる目安。
だが、目の前の阿諛はどうだ――?
その全てが、勾人の胸に小さな衝撃を走らせる。
理性は告げる。
「古代社会的には問題ない、形式上は大人だ」と。
だが、身体は無意識に反応し、心の奥底にざわめきが芽生える。
いや、こんな感覚――
嫌悪とも、興味とも、期待とも、まだ言葉にできない違和感。
頭では理解しても、身体は熱を帯びる。
勾人はわずかに息を吐き、視線をそらした。
「……ふん、しょうがない。俺が言うまでもなさそうだな」
胸の奥のざわめきだけは、静かに、しかし消えることなく残った。
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朝の光が川面に反射して、冷たい靄の香りが漂う。
朝帰りした勾人は、母と共に川の上流へ向かう。
既成事実は母も知っている。相手は男。
古代社会では、全く問題にならない。
母は、懐の奥にそっと触れる。
あの時、勾人に名を授けた夜――
小さな勾玉を手に、母は息子の未来を祈ったのだ。
「この子が、健やかに生きられますように」
握りしめた勾玉の温もりと、初めて抱いた命への切なさ。
それは、今の勾人の姿にも、確かに重なって見えた。
朝の息子は、少々浮かれていた。
どこか、嬉しそうにも見える。
下流で水しぶきを上げ、誰かが水浴びをしている。
軽く手を振り、挨拶する姿は、いたいけそのもの。
知らない顔だ――と思いながらも、母は視線を外せない。
彼と息子の間に、微かに親しさが滲むのを感じてしまう。
「オマエ、元気そうだな! いつまで居るんだ?」
勾人の声は浮かれ気味で、まるで初恋のような響きが混じる。
母の胸底に、冷たいものが落ちる。
「ねえまさか……あのこと……?」
「問題ないよ。アイツ数えで二歳差だってば、……まだ帰りも、居るといいな」
勾人は、事も無げに答えた。
母には、すべてがつながって見えた。
朝帰り、浮かれた息子、相手の見た目……
そして、手のひらに残る、あの小さな勾玉の記憶。
あまりの現実に、あまりの絶望を感じた。




