表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

呼び名

 とかく狩りを覚え、長上(おさがみ)に打撃を与えたい。英賀手(あがで)は真の目的は伏せながら盛んに訴えた。


「わからない人たちですこと。あたくしは狩りがしたいのです。口喧嘩を見に来たのではありません。あやぎり朝には、こんなお手本未満しか勤めてないのですね。見損ないました」


「そうだな。我ながら人選を誤ったかも。留守役(るすやく)、他に心当たりの者は居ないか」


阿諛(あゆ)、頼むからやめてくれ。必ず挽回してみせる」


「いや、何もそこまで気にしなくても……、ただの子守だぞ」


「勢揃いして何を騒いでるの、お見舞いぐらい静かになさいよ」


 そこへ若い女が一人乗り込んできた。傍らには、風采の上がらない使用人の男一名も引き連れて。女は何も持たず両手を腰に当てているのに対し、男の方は、湯気の立つ食事の膳を両手で運び、何やら手荷物一式まで肩から提げて携えている。長上(おさがみ)は少し引きつった顔で、唐突に現れた二人を帰そうとした。


「もう来たのか海媛(うみひめ)、一旦出直してくれ」


「そんなのお断り。せっかく作ったのに、冷めたら元も子もないでしょう」


「じゃあ食べるから、薬は後回しだ」


すると今度は使用人の方まで不満たらたらな態度を取り出した。


「ええ~、急にどうなさったんですか、いつもは大人しくされるがままなのに」


「分かったからまだ近づくな。留守役(るすやく)、人払いしろ」


留守役(るすやく)は頷き、英賀手(あがで)匪躬(ひきゅう)をその場から追い立てながら退出した。


「あんな風に、男を従える蓮葉でも(ひめ)なんて。ご趣味が幅広くていらっしゃる」


英賀手(あがで)、先達は敬うべきだ。さもなくば早々に孤立する。まあ留守役(るすやく)の私は、(ひめ)がどうなろうと構わないがな。跡継ぎさえ産んでくれれば用はない、だがそれすら出来ない奴の多い事よ」


そう吐き捨てると、留守役(るすやく)は、ぶつくさ文句を言いながら去って行った。匪躬(ひきゅう)はその背中を恨めしげに睨み付けた。


「チッ、留守役(るすやく)め。仕留め損なった上に、阿諛(あゆ)との時間が水の泡だ」


「さっきからなんです阿諛(あゆ)って。長上(おさがみ)はあやぎりでしょう。面と向かって呼ぶものではありませんけど」


「うるさいぞ小娘、元はといえば全部お前のせいだ」


「んまあ~、失礼極まりない。私利私欲に走って自滅したのはそちらでしょう」




挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ