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【自作】我が娘

「……冗ッッッ談でねえ!

 あんたら父子は、どこまであたいを苦しめりゃ気が済むんだい!」


阿諛は、元里いちばんの美人からブン殴られた。

実行犯の身柄引き渡しを終えた、直後の出来事。

彼女はすさまじい形相で、阿諛に言い募った。

当然だ。ヘタしたら彼女も、実行犯の手によって、冗談抜きに死んでいたのだから。



指示役・阿子の身柄拘束は、既に終わっている。

阿子の父・兵部は当初、刑部の話など一笑に付した。


しかし帰宅後、兵部は阿子に与太話を聞かせた。

だがその反応を見るに、もう既に引き返せない領域にあることを悟った。


「そなたは阿子ではない。

 阿子は死んだものと思え」


阿子の自分かわいさから犯した罪には、

兵部一族全員の命がかかっていた。


ときは古代、連座処罰全盛期の時代ーー兵部の政治生命どころの話ではない。


しかも兵部は、

小寿林氏直系の血を受け継ぐ貴重な存在。

その娘の大罪は、小寿林氏による統治そのものの根幹を揺るがす。


阿子の死は決定事項。


だがその死をもってしても、小寿林氏内部での、権力闘争の火種となりかねない。


「阿諛、傑作だな!

 この目で小寿林氏の終わりが見られると思うと……

 嗚呼、たまらなく感慨深いッッッ」


昂る高揚の余り、刑部は阿諛を抱きしめた。

暢気なものだ。

刑部もまた、小寿林氏の分家出身であるというのに。


「刑部、離してください。しつりのところへ行かなくては」


「おやおや、ずいぶんと冷たいじゃないか?

 俺とお前の仲だぞ」


阿諛はあえてそれを無視した。

刑部も、普段なら激怒からの拷問まっしぐら。

だが彼の悲願、小寿林氏の落日に浮かれ、

もはやそれしき、大したことではなかったようだ。


「しつり」


「阿諛……やりおったな……

 そんなに刑部が大事か? 吾人よりも?」


「なんのはなし? それより。これからどうするの」


「アホかぁ!! なるようにしかならぬわぁぁ!!」


「あはっ、おれの助言要る? 倍にして返してもらうけど」


「ええい、なんじゃなんじゃ?!

 しょーもない話だったら即刻つまみ出す!!」


阿諛はしつりに耳打ちをゴニョゴニョ。

 


「刑部!! ご結婚おめでとうございます。これでようやくおさらばですね!」


阿諛の明るい笑顔とは対照的に、刑部は苦虫を噛み潰したかのような表情で立っていた。


刑部の傍らには、兵部の娘ーー婚礼衣装に身を包んだ、先女が寄り添う。

しつりの後継者問題は、これでほぼほぼ解決したようなものだった。


本家直系筋の兵部の娘と、

分家筋で領主の異父兄の婚姻。


極めて納得感のある掛け合わせだ。

今まで誰も言い出さなかったのが、不思議なくらいだ。



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