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【自作】陽動
腑分けを終えた。阿諛は決意した。
あれは義賊などではない。
必ず裁きの場に引きずり出すのだ。
「………金持ちの家、用意しないと」
阿諛には一軒だけ、アテがあった。
代吏と、その事実上の妻子が暮らす一軒家。
あの場に実働犯をおびき寄せる。
まずは刑部に話を通してーー乳母から離縁をちらつかせる。
その見返りだけでなく、代吏のじいさん方には、しばらく羽振りを良くするための、
とびっきりの贅沢もさせてやろう。
それから先に、兵部の次女の身柄も抑えて置かなくては。
義賊さわぎの発端となった現場ーーその被害者である山師の娘の証言、
「阿子様は、身内以外でいの一番に駆け付け、わたくしども一人一人に、励ましの言葉をくださいました。数日前に、お会いしたばかりでしたのに」
犯人は、現場に戻ってくる。ましてや初犯。
さぞかし不安で不安で、気をもんで、耐えきれずに様子を見に来てしまう、人のさが。
「兵部」
少し話が。刑部の言葉に、兵部は眉をひそめた。
いまだ義賊を捕らえきれない、
刑部御自ら話し掛けてくるなど、明らかにおかしい。
しかも余裕の態度で。
政務後の領主館の廊下。
兵部は、胸騒ぎを覚え立ち止まった。




