白銅の首飾り
阿子は、山師の屋敷を訪ねていた。
なんでも、草木を枯らして禿山を作り出したとかいう、あまりよくないうわさを耳にしていたし、たまたま観衆の中に、山師の屋敷づとめをしている者もあったからだ。
「まあ」
よくぞお越しくださいました。
土産の反物に微笑む山師の娘の首元には、白銅の頸飾が煌めく。
阿子はわらって、屋敷の内部構造の把握に務める。
ーー約一ヶ月後、山師の屋敷には、刑部の下級官吏を名乗る偽役人が現れた。
ーー約一週間後、寝静まった山師の屋敷。
ある者は縛られ、ある者は顔面を殴打され、ある者は一突きにされていた。
山師の蔵は開け放たれ、貧民街には、貴金属の類が広範囲に渡ってばらまかれた。
「何も分からないのです。気がついたら目隠しと猿ぐつわをされていて……」
彼女は声を震わせ、指先で目元をこする。嗚咽が小さく漏れる。
「騒いだら殺す、と……う、うううぅぅ……おとっつぁん、私たち、これからいったいどうしたらいいの……?」
彼女の肩が小刻みに揺れる。
首元で、形見となってしまった白銅の頸飾がかすかに動く。
「やっぱり、悪い事してたんだろうって……誰も助けちゃくれない……」
無傷で助かった山師の娘だが、その精神はズタズタに切り裂かれていた。
取り乱す彼女に、冷静沈着な声がかかる。
「この下手人は必ず引っ捕らえる。
些細な事でも何でもいい。
なにか違和感を覚えた事は?
使用人に、変化は見られなかったか?
借金苦や、人間関係の恨み」
「そんな……生き残った仲間を疑うだなんて……」
山師の娘は堪えきれず、机に突っ伏して泣き出した。
白銅の頸飾は、彼女の首元で煌めく。
「刑部」
刑部は冷静に山師の娘を観察し、状況を分析していた。
一旦は全てを疑わなくてはならない。
それが山師の娘だって、例外ではない。
ーー阿諛がこちらを全力で眺めて来る。なんだ?
ーー俺がこの娘を泣かせたとでも言いたいのか?




