表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/102

『阿諛太郎(あゆたろう)むかしばなし』

——桃太郎式・匪躬おぢゲットの巻——


むかしむかし、山里にひとりの童がおりました。

名を 阿諛あゆ太郎 と申します。


里で生まれ、倉に火をくべ、運命の波にころころと揺らされる、

なんとも騒がしい子でございました。



ある日のこと、阿諛太郎は悪しき盗賊にさらわれました。

これは一大事、と青ざめておったところ、

出会いましたのが、かつて武辺に名を轟かせた

勁槍けいそう将軍・匪躬ひきゅうおぢ。


匪躬おぢ、阿諛太郎をひと目見るや、

どんと抱きしめて申されました。


「阿諛ぅ……おたから……」


こうして阿諛太郎は、いともたやすく

“おぢ“を手下にしたのでございます。



手下を得た阿諛太郎、

そそくさと宿へと戻ってみれば、

あるじ傅役ふえきどのは――なんとまあ――

阿諛太郎を置き去りにして都へ旅立っておったのでございます。


そこへ宿の門客が駆け出し、阿諛太郎のうしろを見るなり、目を丸くしました。


「まさかあなたは――勁槍将軍。

出奔して行方知れずと聞いておりましたが……

阿諛、どこで知り合ったのだ?」


「お前、阿諛とはどういう関係だ?」


阿諛太郎、肩をすくめて答えます。


「なあに勘ぐることはない。

この人はただの兄弟子ですよ。ねえ、門客?」


門客も苦笑しつつ、合わせ申します。


「そうじゃな。……残念ながら師匠はとうの昔に亡くなられた」

(いや、もとからおらぬのですがな(^~^;)ゞ)



さて門客、阿諛が盗賊にさらわれてから戻るまでの話を、

ずずいとぶちまけました。

阿諛は聞くほどに腹の虫が煮えくり返り、

とうとう足を踏み鳴らして叫びます。


「傅役め~っ!

薄情なのは承知しておったが、見捨てられれば腹も立つ!

あんな冷血漢、主の資格なし!

もう辞職がてら一発ぶん殴らねば気が済まぬ!」


すると匪躬おぢ、どわははと豪快に笑って申します。


「そりゃよい。某も都へ参ろうぞ」


「ありがとうおぢさま、大好き!」


阿諛太郎がぎゅうと抱きつくと、

匪躬おぢは頬をかき、まんざらでもなさげ。

まさか都で要人暗殺ーー?

ここで門客、慌てて声を張ります。


「ま、待て! 私も同行いたす!」


こうして、

犬(=おぢさま)・猿(=門客) をお供に、

阿諛太郎は都へ向かったのでございます。



都に着くと、傅役どのは盛り場を遊び歩き、

まことに楽しげにしておりました。


田舎暮らしの辛苦をくぐり抜けた若造にとって、

都の夜遊びはさぞ眩しかろうもの。


阿諛太郎、すれ違いざまに声を張り上げます。


「傅役、覚悟っ!」


その瞬間、若造のすねを蹴り飛ばすと、

傅役どのは派手に転げ、肘をついて阿諛太郎を見上げました。


「なんだつまらん。まだ生きていたのか」


阿諛太郎は胸を張り、勝ち誇って言いました。


「ざまあみろ! もう愛想も尽きた。

今宵限りで主はクビじゃ!

帰ってしつりに嫌われろ、この不器用お兄ちゃ~ん!」


ああ、痛快なり。

阿諛太郎、笑い転げ、足元もおぼつかぬそのとき――


行き倒れの女に、どさりとつまずくのでございます。


かくて阿諛太郎の冒険は、

まだまだ続くのでございました。


めでたくない、めでたくない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ