靉靆(あいたい)
長上の断食冥婚は、表向き無事成功。
しかしながらその爪痕は、生々しく残った。
長上は、元来胃腸があまり丈夫ではなく、食も細い。
心身どちらか片方でも、負担が生じると吐いてしまう。
それがあの冥婚儀式を歴て、よくない学びを手に入れていた。
「たべないって、なんてラクなんだろ♪」
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「靉」
少年は、振り向いた。
「遅い! いったいどこをほっつき歩いて居た」
海媛は、今日もご立腹の様子。
長上は、今日も食事を抜いた。
まだ大丈夫。
兄に取り憑いた旱鬼・肥遺が、皆から少しずつ、体力を奪って兄に与えているから。
肥遺は、いつもいいなあ。俺も兄の側に居たい。
もう髪をモグモグしたりはしないから、
また高い高いしてはくれないだろうか?
地面に叩きつけられるまでのわずかな時間も、兄と過ごせるなら本望だ。
「海媛。食材を入手しました」
靉は飄々と、土鍋の蓋を開けて見せる。
ーークルックルルル♪ クルルッ?
土鍋の中から顔を出したのは、
超絶キュートなオコジョが一匹。
靉と目が合う。あれ? 兎は?
オコジョはそのまま、踊るように霧越京の宮殿炊事場を去っていった。
なんと逃げ足の速いことだろうか。
靉は、オコジョがうらやましくてならなかった。
やはり海媛に叱咤され、靉は鍋を処分しに塵捨て場へ向かう。
「長上?」
寝着に一枚羽織っただけの姿で、生き別れの兄が食事を捨てていた。
海媛が知ったら、さぞ怒り狂う事間違いなし。
「この事は内密に……」
「はい、長上。もちろんです」
靉は、ほほ笑む。
その代わり、海媛に進言しよう。
食材探しの旅に出る、外出許可を。




