冥婚三日断食・山室ナウ
石室の中、断食三日目。
許されているのは、塩と水のみ。
長上は白装束でガリガリ。頬はこけ、目は落ち窪み、まるで生きた屍だ。
✦
霧越京郊外の山室――天媛霊廟。
数週間前の出来事が、まざまざと黄泉返る。
長上は、久々に英賀手に対面すると言った。
「神託……よくわかった!! 冥婚する!」
「よしきた! ねえねのお墓(山室)で三日間断食するのだ!!」
英賀手はさっそく、医房から医女を呼んだ。
外部出身の凄腕医女だ。
「冥婚中は、外で健康管理します。ご安心めされよ」
✦
室内は灯明一本だけ。
外の覗き穴の向こう、英賀手宗女は、ガッツポーズを連発していた。
「ねえねに捧ぐ! 長上長上~」
カプ厨英賀手は、ウキウキが止まらない(^ω^)
「これでねえねと長上は、永遠の冥婚夫婦(´▽`)」
英賀手謹製・霊力9999×300枚のお札で、結界もバッチリだ。
長上に逃げ場など、初めからありはしない。
凄腕医女は、腕だけ石室から出して長上の脈を取る。
「脈拍38、血圧60/30……ギリギリ生きてます!
いつでも蘇生してさしあげます(◎_◎;)!」
✦
深夜2:13、室温が急降下、マイナス18℃。
長上の吐く息が白い蛇となり、季節外れの雪が室内に舞い降りる。
そして――雪女コスプレの天邪鬼登場。
白無垢に雪の結晶がキラキラと光り、髪は霜で覆われ銀色に光り輝く。
唇だけがドス黒い赤。
「ふふふ~オモロ!!^_^
長上が冥婚してくれるって聞いたから、化けて出てきたで~♪
さあさあ、冥婚しよか~? ねえねとチュッチュしよ~?」
雪の結晶をぱらぱら振りまきながら、天邪鬼が迫る。
長上はガラガラ声でビビりながら後ずさる。
「うわ……顔近っ?!……息が冷たい……(´д`)」
ーー次の瞬間 ドバァァァ!!
石室の隅に、黒い靄が大量発生。
顔面は青白く、目は充血して真っ赤、でも表情は泣きそうな子犬(T_T)
「長上そんな……冥婚がフリでも
やっぱり他人となんてツライ、俺と冥婚してほしい(´;ω;`)」
怨霊勾人、必死に手を伸ばす。
断食でフラフラの長上は立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。
雪女天媛はニヤニヤしながら、雪の結晶を振りまく。
雪女が長上の顔に手を添えようとした瞬間ーーバチッ!(◎_◎;)と煙発生
「あ痛!? なんやこれ(>_<)?」
✦
勾人は、冷静に札を指差す。……元天才覡によるチェック(^ω^)
「これは……宗女手ずからのお札だ。俺達は此処に来てはならない身。
黄泉の国に一旦帰ろう」
勾人、柏手をパンと鳴らす。
ーーボオオオ!!
英賀手のお札、一瞬で黒焦げ。
外で絶叫する英賀手。
「ええええ!? あたくし謹製のお札が……一撃で!?」
怨霊勾人、ドヤ顔で言う。
「まだまだ修行が足りないな。俺は特にしてないけどね( ̄ー ̄)」
怨霊勾人、くたばり損ないの雪女に声を掛ける。
「天邪鬼、黄泉に一旦帰るぞ」
勾人、黒い瘴気の手で天媛の襟首をつまんで歩き出した。
石室内に、衣擦れが響く。
ズ……ズ……ズズ……
「勾人!? 襟首引っ張るのやめや!
首チョロチョロなるやん!!これ一張羅やで(;゜Д゜)」
「うるさい」勾人は無表情( ̄ー ̄)
雪女天媛は、最後の悪あがき。
「キィー悔し! オモロかったのにぃ~!!(´д`)」
ーーズサッ!
二人の霊体が、石壁に吸い込まれていく。
✦
残された長上は、ぽつんと座り込んだ。
「……やっぱり勾人さんしか勝たん(・蛇・)」
「あたくしのお札が……あたくしの三日間の念が……(´;ω;`)」
外では英賀手が、うめきながら気絶。
医女は英賀手の脈を測り、無事生存を確認。
続いて長上の脈も見る。
「脈拍急上昇! でも長上ニヤニヤしてる!(^ω^)
ーー雪女に恋の病です!」
石室の中、灯明一本だけが青白く揺れ、生温かい風が吹いた。
「……勾人さん………雪男?」(^_^)
冥婚は誰ひとり結ばれなかった。
しかし心は、完全に勾人と結ばれた。
そして英賀手のお札300枚は、全焼した。




