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6 ホウレンソウが大事なことは、正義の味方でも変わらない。

 グリーンさんと偉い人のお話です。

 ケガの功名というか、レッドの自爆によりそれぞれのビークルへの通路を発見できた俺たちは、ひとまずそれぞれのコクピットへと向かうことにした。

 まあ、いくら大丈夫と言っても屁で汚染された場所にはいたくないというのが本音。そして建前として、それぞれのビークルには少なからずそれぞれの私物があるからだ。

「っと、なんでまた足首まで降りる必要があるのかね。」

 縦長のパイプを少しずつずり落ちながら俺はそんな不満が漏れる。ゴヨウダーは5体のビークルがそれぞれ、胴体と手足を担っている。俺が担当しているグリーンサイノスは、左足担当でビークル形態のコクピットが足首の場所となっている。合体時はシートだけが中央に移動する仕組みだが、今はその移動用の通路を下っているわけだ。

「おじさんにはつらいんだよね、こういうの。」

 当然だが全自動なのではしごなんて便利なものはない、ややつるつるとした曲面に両腕を押し付けながら一気に落ちないように慎重に降りていく。あれだ、どこぞの緑の山でたまにあるアスレチックみたいなやつ。変身状態ならあれだって余裕でクリアーできるよ。

「と、到着。」

 10メートル程度の縦穴を降りれば慣れ親しんだコクピットであった。

「端末は、こっちもだめか。」

 シートがないコクピットの端末をいじってみるがやはり反応はない。もっとも本命はそこではない。俺は振り返って工法のロッカーを開く。

「よし、こっちは開くか。」

 ゴヨウダーはあくまで最終兵器であり、時にはビークルで作戦行動をすることもあった。そのため、長期的な作戦を想定して、それぞれのビークルにはわずかだが私物をしまっておくスペースがある。携帯や財布などの私物、着替えなんかが推奨されていたが、俺はそういったものはほとんど入れていない。だってあれだ、万が一があったときに、身元の分かるようなものとか大事なものを置いておきたくないじゃん。

「まあ、今回はそれがよかったと。」

 ざっくりと目につくのは色んな味のアメ玉だ。禁酒禁煙が基本の勤務中に口寂しくてついつい買い込んでしまったものだ。そして、特注の通信デバイスだ。

「電源は入る。だったら。」

 ポチポチと操作し、お馴染みの起動音に心底ほっとする。強力な電波での通信を発するこれは、普段なら作戦行動の支障になるからと使用は制限されているが、今はその時じゃない。

 手慣れた操作で、俺は登録してある連絡先を呼び出しコールをする。

『・・・わたしだ。』

「お前だったのか。」

 数秒後に無事つながった通信の向こう、いつものように堅苦し応答をする相手にわざとボケる。

『グリーン、無事なのか。』

「とりあえずな、長官どのも元気そうでなによりだ。」

 壁に背を預けて俺は返事をまつ。

『敵対勢力は、作戦計画どおり破壊された。正直、過剰戦力ではなかったかという意見もあるが、ゾンアークの勢力は地球上から消滅したとガイア様からお告げもあった。』

「なるほど、そっちにも連絡があったか。俺たちのことも?」

『直接表現はなかったが、我が子たちを頼むという託もあった、私を含めスタッフの大半はお前たちの生存を疑っていない。一部のバカは慌ててるようだがな。』

「だよね、あんな作戦立案しておいて。」

 最終作戦の詳細をはっきりとしているのは長官と俺だけだ。それにしても相変わらずこちらの3倍は離さないと気が済まないおっさんだ。話が長い。

『恨みたければ、好きなだけ恨めばいい。だが私は地球の存続という可能性が一番高い作戦を採用したし、お前たちも納得の上でのものだし、各国の頭でっかちどもも説き伏せて、過剰ともいえる戦力を確保した、その結果として、今後のこと。』

「そんなんどうでもいいんだ、現状を教えてくれない?」

 当初は、偉い人って感じで萎縮もしてたが、本質を知ってしまってから、長官に対して俺が経緯を払うことはなくなった。たぶんイエローあたりもそうだけど、まあ組織なんてそういうものだ。

「ちなみに、ゴヨウダーは、完全にガス欠、分離はおろか、緊急用のハッチもまともに開かない。無理にこじ開けてもいいなら、脱出は可能だが、それだと困るんだろ?」

『理解があって助かるよ。』

 壊せる壊せないというのは別として、俺たちがゴヨウダーに不本意な損害を出せば面倒になる。それは長官も分かっていることだろう。

『現在は、破壊の余波が収まるの待って半径1キロメートルを封鎖、観察している状態だ。観測班の話では、灰色になったゴヨウダーは仁王立ちしているそうだ。』

「その中に、俺たちがいるってことだ。」

 エネルギー切れで灰色になるって、ちょっと前のガンダムの装甲みたいだな。劣化したとかじゃないといいけど。

『連絡をしてくれて助かった。こちらからも救助班を派遣する。くれぐれも無茶はしないように頼む。』

「目途はついてるのか?」

 外から見ている長官なら、もっとわかるはずだ。

『おそらくだが、5日ほどで基本システムは回復するはずだ。天気予報もばっちり晴天だ。』

「太陽光発電とかじゃないよな?」

『わからん、だが地球の守護神であるゴヨウダーは、自然のプラーナを動力としている。そしてもっとも効率的な充電は太陽や地熱によるものだ。だとしたら完全停止状態からでも5日、かかっても10日で復活するはずだ。』

「OK、難しいことはあんたたちに任せるよ。こっちは5日をめどにサバイバルしておくとする。」

 それ以上は責任はとらないぞ。おじさんもさすがに暴れちゃうぞ。という意味ね。

『わかった、10時間ごとに連絡をくれ。それまでは極力ゴヨウダーに余計な手出しはさせん。』

「そうだな、とりあえずいったん切るぞ、さすがに5日もバッテリーが持つ気がしない。」

 返事は待たずに俺は通信を切って電源を落とす。

 このデバイスは強力なんだけど、バッテリーの消費も激しいんだよね。

 それにしても、長官様は優秀だ。なによりゴヨウダーの専門家なので、5日ほどがんばれば、この場所からも仕事からもおさらばできるというわけだ。

「くそが。」

 5日もかかるという事実に俺は悪態をつくしかなかった。


 

 


 戦隊の人たちって、きっとビークルに私物を置いてるんだろうなという妄想。そして、どんなものでも個人の一存で使えるものじゃないという世知辛い設定です。

 そして、残り5日間、グリーンのメンタルはもつのか、まて次回。

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