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5 機密だとか規則だが、非常時に守るほど善人でもない。

 建設的に対策を考えるグリーンに対して、他のメンバーは・・・

 さて、ここまで語っていたところで、疑問にもった人もいるのではないだろうか?

 密閉空間なら明りはどうしたというやつだ。もちろんライトとかも消えてる、ただ壁とか天井の素材が蓄光素材だったというだけだ。なんかすごい強度にこの便利機能。まったくもってとんでもない。だがそれも一時期的なもので、一部では光が消えつつあった。

「こういうときに、このスーツなのか変身の機能は飛んでもだよな。」

「・・・どうしましたグリーン。」

「なんでもないよ。」

 適当にイエローをあしらいながら俺は、再び必死に頭を働かせた。スーツの関係で俺たちは暗闇でもほとんど関係なく視界を確保できている。例えるならば暗いというよりも絵の具か何かで黒いといった印象の中に、それぞれのパーソナルカラーがはっきりと分かる。徐々に凹凸が見にくくなっているのか、光が消えて境目がわからなくなってきたということだろうか?それともお互いの存在を知覚しているのか、だがこのままだと、精神衛生上よろしくない。

 まいったねー。

 ほんとにまいった。せめてそれぞれのコクピットに戻れれば、スマホとかで明かりを確保できるのだが。任務中は基本的に持ち歩けないし、返信用の腕時計は、ゴヨウダーが動かないならリストバンドにしかならない。自前のライトとか付けるべきだよね、ほら頑丈さが売りの時計とかみたいなやーつ。

「なあ、ここからどうするんだ、しりとりでもするか?」

 うん、レッドくんのおバカな発言は和むわー。ありえねーと笑いながら、気づけば他のメンバーも自分のコクピットに座っていた。体力があっても、立っているのは落ち着かないのだ。

「レッド、それは究極的にネタが尽きた時のコミュニケーションほうだよ、うける。」

「ピンク、そうかな?」

「おれもそう思うぞ、それにそういう気分じゃない。」

 相変わらずの様子の3人だが、この子らはこれでいい。ただこの深夜バスのようなテンションはどうにかしたい、おじさんにはつらいのだこういうの。

「状況からできることはいくつかある。一つは現状維持、このまま助けが来るのを待つこと。」

 だから、こういう建設的なようで無駄な話もしちゃうぞ。

「さっきも言ったが、状況が状況だ、今も本部が何らかの手段を講じている可能性は高い。言い方は悪いが俺たちは貴重な人材だからな。」

「グリーン、その言い方はないと思うぞ、本部のみんなだって仲間だ、仲間を信じろ。」

 うん、信じてるよ。だから静かにしてくれるならこの状況維持が一番だ。

「次に考えられるのは、ゴヨウダーのどこかを壊して無理やり脱出することだ。まあこれは最終手段だと思ってくれ、成功する可能性は低いし、後が怖い。」

 いくら超人的な力があっても、ゴヨウダーはそれ以上に頑丈だし、勝手に壊しても絶対嫌味を言われる。

「そうだよ、ゴヨウダーがかわいそうだよ。」

「・・・そこはわかりませんが、精密な機械ですし最後の手段ですね。」

 理由はそれぞれだが、概ね理解は得られた。

「問題は、時間の問題ってことだ。まあのんびり待つとしよう。」

 生命維持的なものは生理的な問題は、変身した今なら問題ない。

 ぷーーーー。

 ただ、精神的な問題は別だ。

「あっ、すまん。」

 落ち着いて沈黙のあとに漏れる、独特の空気音と悪びれた様子のないレッドの声。

「バカ野郎!!」

 即座に立ち上がって俺はレッドの首をギリギリと締め上げる。

「ご、ごめんって。」

 だめだった、そうそうにこいつは気絶させるなりなんなりの対処をするべきだった。

「レッド、最悪。」

 密閉空間でも俺たちのスーツは生存を可能としてくれる。宇宙服を着ているようなものだ。だが、精神的にはきつい、想像してみて欲しい、長い渋滞で運転中に同乗者が屁をこいたとき、貴方はどうお思うだろうか?

「お、ま、え、は、どうしてこうお約束をするかなー。」

 もしやらかすとしたらレッドだろうなって思ってたおれも大概だけど。俺は怒りを抑えられなかった。

「グリーンさん、落ち着いてください。暴れると、なんか広がる気がする。」

「お前も余計なことをいうんじゃねーーーー。」

 正直、俺はキレていた。決戦終了後の安心感とか今までのあれやこれ。うん大人げないと思う。

「もう、どうして、こう。あああ。」

 ただそれを具体的な言葉にするわけにはいかないという大人の気持ちと我慢の限界というのがすれ違い、それは行動にでた。

 レッドを振り回し、イラつきのままに地面を踏みしめる。

 バンバンと物騒な音を立てて、俺はしばし暴れた。そして、

「くたばれー。」

 遠慮なくレッドをぶん投げた。恐らく戦隊としての活動の中でもトップクラスの勢いで投げた。あれ、オリンピックの競技とかであるひも付きのボールを投げるあれ。

 どガーンとすごい音をたてたレッドは壁に激突した。

「ぐえー。」

 まあ、頑丈だから生きているだろう。

「すまない、とりみだした。」

 とりあえずビビらせたことを謝罪すると、他のメンバーは親指を立てて答えた。うん、こいつら最高だな。

 ただ、期せずして、自力で脱出する難しさを俺は試してみることになった。そして、結果はキズ一つないゴヨウダーの内壁が教えてくれた。

「・・・大人しくしているしかなさそうですね。」

 イエローさんの言葉はわりと重い。いくら大丈夫とはいえ、汚染された場所にはあまり長い支度はない。

「ねえ、まってみんなよく見てみて。」

 と思った矢先、気づいたのはピンクだった。レッドがぶつかった壁に近づき、どんどんとたたく。

「ここ動くよ。」

 わずかにズレたその隙間に手を突っ込み、力を入れるピンク。彼女もまた怪力である。

 べリ、ミシッ

 そんなやばそうな音とがしたあと、壁の一枚はあっさりと横にスライドした。

「これって。ブルーモービルの。」

 気づいたのはブルーだった。

「・・・そうか、それぞれの接続部なら、動くかもしれません。」

 イエローの言葉に俺も気づいた。いくら頑丈でゴヨウダーは合体ロボだ、5体のビークルはそれぞれ手足と同体となって合体し、それぞれのコクピットから移動して、その時はなんかシャッター見たいにスライドしていた。

「よし、やるぞ。」

 そこまでわかったら俺たちの行動は早かった。それぞれのコクピットからの導線を思い出しながら壁に近づき、遠慮なく殴り、蹴り、動くか試みる。

 機密、規則、この非常時にそんなこと言ってられるか。

 結果として、俺たちはそれぞれのビークルへの隔壁を開くことに成功したのだった。


 

緊張状態だからこそ、発生してしまう生理現象ですが、それがときに 人を本気にさせる一例

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