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4 これでも戦隊なので、余裕は余裕なのです。

最年長でおじさんなので、グリーンさんはわりと慕われているのです。

「はい、馬鹿ども、今から大事な話をするので、心して聞くように。」

 パンパンと手を鳴らしながら、注意を引きながら俺は正座する3バカとイエローを見回す。

「おっさん、急になんなんだ。」

「そうよ、急にイエローを嗾けるなんて卑怯よ、おじさん。」

 予定どおりブーブーと文句をいう二人は無視します。正直、何をどう話していいか俺にもわからんのだ。

「よし、まずレッド、ピンク。一応作戦行動中だから、すぐに変身しなおせ。」

「ええ、いいじゃないか。」

「・・・しなさい。」

 はい、イエローさんナイスフォロー、ここは学校じゃないし、俺たちは戦隊なので、肉体言語にだって訴えちゃうぞ。

「わかったよ。」

 怯えつつ立ち上がってレッドは、見栄を切る。そして腕を回しながら、その場でフィギュアスケート選手のように一回転してから、膝から着地する、あれあれ映画とかでよく見るヒーロ着地ってやつね。

「変身。」

 そして、赤い光に包まれてから、なんかよくわからな音が流れた後で、レッドは全身タイツとフルフェイスの姿に戻る。

「あぶな、レッド、気を付けろよ。」

 回転に弾かれそうになったブルーが文句を言うが、ごもっともだろう。ちなみに今のレッドの一連の動きには特に意味はない。ただ、機密保持のために周期的に変身の前振りっぽいことをいれるように俺たちが訓練を受けたというだけだ。ただ変身するだけなら、腕時計みたいな端末をぽちっとするだけでいい。

 まあ、レッドの場合はノリでやっているけどね。

「今の動きいる?」

「だって、この方がかっこいいじゃん。」

 だそうです。

「よし、とりあえず変身はまだできると。」

 いつも通りの茶番を目にしながら、俺は懸念していた問題の一つが解決したことにそっと安堵した。

「じゃあ、改めて話をするが、最後まで聞けよ。」

 念押ししたうえで、俺は、イエローにも話した俺たちの置かれている状況について3人にもわかるようにユックリかつ丁寧に説明した。

 ガス欠でゴヨウダーが全く動かないことだな。

「つ、つまり、ゴヨウダーはもう動かないってことだな。」

 なにやら寂し気なレッドに理解させるのには、かなり苦労したがそこは割愛させていただく。

「ありがとうゴヨウダー、ゆっくり休んでくれ。」

 ねぎらうようにレッドは手近な壁を優しくなでる。まあ、相棒として一年間も戦っていたのだ、愛着もわくというやつだろう。

「あっだめだ、これわかってないんわ。」

「・・・ですね。」

「レッド、バカだからなー。」

「きざ、ブルー、私たちどうなるの?」

 まあテンションの差はいつものことだ。時にはレッドのこの馬鹿正直さが戦隊のピンチを救ったことだってある。今回も俺としては充分な成果だ。いやー我ながらレッドを上手く使うものだ。

「みんな、ガイヤやゴヨウダーの分まで、がんばろうな。」

 何をだよ!とツッコミたい気持ちをぐっとこらえ、俺はうんうんとうなづいた。こういうまっすぐなあり方は若者らしくて好ましい。それに何より、他のメンバーが必要以上に深刻にならないで済んだのだ。

「じゃあ、これからの方策だが、全員、絶対に変身はとくな。」

「なんでだ、お、グリーン。」

「おっさんでいいぞ、レッド。」

 間を開けず質問してくるレッドだが、他のメンバーも似たような顔だった。

「まず、俺たちの変身状態は、長時間、過酷な環境でも過ごせるようになんだかすごい力が備わっているのはわかっているな。」

「おう。」

「状況として、ガス欠状態のゴヨウダーはどうなっているか正直わからん。ただパッと見た限り、分離してビークルに戻る気配はないしだ出口なんてものもない。」

 だよね、とイエローに水を向けるとうなづかれる。

「・・・緊急コードや手動切り替えコードも反応がありません。」

 ちゃかり他のことも試していたらしい。おいおいやっぱり深刻だな。

「えっ、それとどういうことなの、イエロー。」

「・・・言ってしまえば遭難です。」

「そうなんですか。」

 はい、ブルーくん減点です。

「なにせこいつは海の中でも宇宙でも活動できた、その機密性は確かだろう。当然換気システムとかの生命維持装置も止まっている。」

 つまるところ、俺たちの現状は洞窟の崩落とかで閉じ込められた遭難者と変わらない。

「ええええ。」

「はい、落ち着いてねー、ピンクさん。そのための変身だ。」

 事実をさらに正確に理解して悲鳴をあげそうになったピンクを制して俺は説明を再開した。

「幸いなことに、変身システムは生きている。ゴヨウダーのシステムとは別系統だったことが幸いしてな。この変身のご都合主義な性能は分かっているだろう。」

 うん嫌と言うほどに、雪山や火山の河口付近、なんなら海に落ちてそこから生還したこもある。それだけこのスーツの生命維持機能は優秀なのだ。飲まず食わず、寝ないでも1週間は活動できた。はいこれ俺の体験談です。

「つまり、緊急で命の危機はない。それに俺たちの安否は本部でもモニターされている。だから近いうちに救助的なにかがあるはずだ。」

 ここまで話してみて、俺もまた安心していた。閉じ込められていこそいるが、変身はできる。それならばしばらくは命の心配はないし、飲み食い、何よりトイレの心配もない。

「こんなのさっきの戦闘や、これまでの訓練を考えたら余裕だろ。」

 極力、やる気なくおちゃらけているように俺はそう締めくくった。

「ふふふ、なにそれ、あいかわらずだねグリーンは。」

「・・・ある意味尊敬します。」

「グリーンさん、ありがとうございます。」

「おう、よくわかんないけど、グリーンの言うことに従っておけばいいんだろ。任せたぜ。」

 若干一名不安はあるが、これでも俺たちは戦隊だ。このくらいなんとでも乗り越え、

「られたらいいな。」

 うん、絶対、ただでは終わらない。


 

 

 衣食住と生命の安全は確保した戦隊メンバー。

 次なる行動はどうなるのか?

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