3 安全装置がないのではなく、想定外が想定外すぎただけだ。
現状の把握と説明1
さて、戦闘後の無駄にあがったテンションによる茶番は無視して、俺は再び自分のコクピットのコンソールを叩く。とりあえずうんと、スンとも言わない。一年以上放置したデジカメとかもそうだけど、あれバッテリーが完全になくなった状態、あれを想像してもらえばいい。諦めて俺がコンソールやコクピット周辺のつなぎ目っぽいところを色々いじってみる。うんあれだ、非電力の緊急装置とかないかなってやつ。
「・・・グリーンどうしたんですか?」
そんな様子に疑問をもったのか、イエローも3バカを見守るをやめて俺の近くに来た。
「落ち着いて聞いてくれ、この状況、かなりめんどくさい。」
「・・・詳しく。」
声を潜めて俺はイエローに語り掛ける。3バカには聞かせられない大人な話をする必要があるとき、イエローは察しが良くてホント助かる。
「完全にガス欠、ガイアの支援とかやらで、ゴヨウダーのエネルギーは補助とか予備とかも全部すっからかんになっている。だから、全く反応しない。」
「・・・つまり。」
いやいやイエローさん、それを俺に言わせますかねー。というかイエローさんの方がくわしいよね、このゴヨウダーの仕組みとか構造は。
「動かすことはおろか、分離機構も機能しないっぽい。つまるところ、閉じ込められているわけだよね。」
「・・・まじで?」
「まじまじ。」
うなづいたのち、イエローはそそくさと自分のコクピットに向かい端末を色々いじる。そして俺と同じように周囲を色々と観察し、やがて諦めたように肩を降ろして戻ってきた。
「・・・緊急用のコマンドも、再起動コードも反応がありません。これは。」
「うん、閉じ込められちゃったね。くそが。」
イライラして俺はコクピットを叩くが、反応はない。叩けば直るなんて都合のいいことにはならない。
なんぞ、このゴヨウダーは、ガイアの守護とかいうよくわからん技術と最新鋭の工学技術を導入された、人類最強の兵器だ。ゾンアークの一派が破壊工作をしようとしても侵入することすら叶わないセキュリティに深海や宇宙空間でも稼働可能な頑丈さと気密性。そして、おっさんやティーンエイジャーでも使いこなせる充実のインタフェイスとサポートシステム。複製をしようと各国のスパイ的な人材までいたとかいう話もあるが、複製はおろか、装甲を剥ぎ取ることもできなかったという。
「まあ、いまじゃただの鉄くずだけどな。」
それもエネルギーがあってこそだ。完全にガス欠した今、ここは頑丈な牢獄でしかない。
「・・・流石に想定外です。」
「完璧なシステム、完璧な機械なんて存在しないよ。」
それこそ公務員時代はたくさんあった。行政システムの穴をついて、給金をむしり取るやつに、当たりまえにルールを破る住人、電子化したときは、バグが多すぎて紙書類のほうがましだと思って何日も徹夜をしたものだ。まあ、まっとうに生きて出世してきたエリート自衛官さんには厳しい現実かもしれない。
「・・・どうしたらいいでしょう?」
すがるようにこちらを見るイエロー、あいにくとフルフェイスなのでその顔はわからないが、きっといつものように眉毛をきっとしてにらむような眼をしているはずだ。
「まあ、こんな状況は想定してなかったしねー。」
むしろサバイバルとかはそっちの担当じゃないか? そういって突き放すことは可能だ。そうやって気づかせることができれば、この場の主導権をイエローに全部任せることだって可能だ。
だけどねー。
「まあ、落ち着けって、とりあえず、あの馬鹿どもにも話してからだ。」
仮にも年長者だからね、おじさん、頑張る気はないけど、若い子に無理をさせるのも後味がわるいんだよね。
「・・・たしかに、まずは全員でこの事実を共有すべきです。」
「ああ、それに少し考えはある。」
このやり取りの間、俺はずっとコクピットに寝そべるように座っていただけだった。当然考えなんてものはない。
「まあ、とりあえず、あの3人止めてもらっていい?」
「・・・了解です。」
ふんすと力こぶを作り、イエローはのしのしと未だにじゃれ合っている3人に向かっていく。うん、こういうときは、一番力が強いイエローに任せるのが一番だよねー。
「さて、マジでどうしたものか?)
言っておくが、俺は元素人でしかない。それでも何とかするために、必死に頭を働かせるのだった。
次回、5人揃ってももんじゅの知恵とはならない。