出会いはいつも劇的に
龍女伝が始まります。2000年生きてきて暇を持て余した龍女の前に、男装の王女が現れる。言いたいことだけ言ってすぐに投身自殺。わけもわからず、とりあえず完全回復魔法をかけておかえり願おうとした。
ゆっくりと話を書いていきます。
キジトラの猫ちゃんをなでながら、三毛ちゃんにパソコンの邪魔をされながら。
どうして猫はパソコンを打ち込む手に邪魔をしたがるのだろう。
話によると習性だから、認めるしかないようだ。
2000年ほど生きてきた。何をするでもなく、霊山の魔素を食い散らかして。
でも、暇だ。時折覗き見る人間界は移り変わりが激しくて、100年たたずに入れ替わる。思い入れをする間もなく代替わりをしていく。
つまらない、実につまらない。このまま何となく1万年を過ごすのかと、ぼんやり考える。
私の龍生に何か変化が起きないかな、
考えていたら、来ましたよ。
熱血を絵にかいたような少女が。
「あなたに会うために、この霊山に昇ること5度、そのたびに門前払いとはあなたに心はないのか」
いや、招待もしていないのに訊ねてくるのはそちらの勝手、と思っていたら続けて
「今や我が国、国民は飢饉により飢えに飢えている。そんな状況を知りながら何もしない。できるのにしないのは大いなる罪だ」
ほう、私に責任を押し付けるのね。
「龍よ、私にはあなたに差し出すものはこの命のみ。どうか受け取って、我が民の苦しみを救ってくれ」
言うが早いか、洞窟を飛び出して崖下に飛び降りてしまった。
まったく迷惑な話だ。
仕方がないので200メートル下まで確認に行く。
いましたよ。何とか虫の息。途中の木にでもぶつかったのか、生きてはいる模様。
仕方がないので、完治の魔法をかけましたよ。
私だって罵倒された挙句、目も前で死なれてはしばらく寝覚めが悪い。
傷が安全に癒えていることに少女は驚いた様子。やるよ
「勇気に免じて、話だけでも聞いてやるよ」
問いかけに少女は応える。
「私はこの国の王子だ。うち続く旱魃で国土は干上がり、作物の収穫が全くなくなりました。数年前に霊山の龍殿の話を聞き、助力をお願いしたく参りました。切羽詰まった挙句ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
あら、割とまともな子じゃないの。ちょっと好感度アップかな。
「私の役目はここで命を落とすことではなく、もう一度国民と共に生き残る方法を探って、一人でも多くの民を救うことですね。お教え肝に銘じて、国で手を尽くす努力をしようと思います」
この子、何言ってんだ。死体があるのが嫌だし、うっとおしいからお帰り願いたいだけなんだけど。
私の心の声を無視して、少女は晴れやかな顔で帰ろうとしている。ちょっと面白いかも。興味を惹かれてしまった。
「あなた、王子の格好をして、先ほども自分を王子だといったけど、実は姫だよね」
私の言葉に男装の少女はぎょっとした顔でにらみつけてきた。ちょっと怖い。
「事情をお察しください。我が国の王の実子は私一人。幼いころから王子と偽って育てられました」
「またなぜ」
「ある大貴族が、王位の簒奪をもくろんでいます。私に何か落ち度があれば廃嫡し、自分の息のかかった遠縁の者を玉座に座らせ,後ろで操る陰謀を抱いています。私が生まれる前からその動きはあったのですが、察した父王は私を王子として育てて、そのたくらみを阻止しようとしたのです」
王家にはいろいろあるのね。しがらみのない龍でよかった。
そう考えていると。
「ですから、私が女であることが知られれば、無のなる者たちに国は滅ぼされかねません。私はどこかの貴族に輿入れされて、民の苦しみを救うことができなくなってしまいます。
「なんだ、お前にその気があるのなら、お前を男にしてやろうか」
王女の表情が固まった。
驚いて呆けた顔がおかしくて、私は千年ぶりの大笑いをさせてもらった。ので、笑いが収まったところで了承を得て、王子の体に変更させてあげた。
ちょっと筋肉を足して、色男に寄せて、でも服を着れば目立たない程度に体内を強化しておく。細マッチョの出来上がり。
「もう少し筋肉をつけた方がよいか?」
僅かな霊力でできることだし、私はやさしいのだ。
「いえ、あまり大きく変わるとかえって怪しまれますので」
「そうか、男の強さはパワーだと500年前に聞いたんだが」