別別
なにもしたくない。
なにものにもなりたくない。
凪いだ海を眺め、穏やかに過ごしたい。
なのに君はぼくを可哀想だなんて揶揄するのだね。
可哀想? どうして?
ぼくは気づいただけだ。
この孤独を抱きしめていたい。
いや、嘘だ。君が好きだ。離れたくない。
けれども心のなかは孤独でありたい。
すがってしまわないように。
寂しそう? 可哀想?
つれないこと言わないでよ。外野は黙っててよ。
疲れさせないでよ。
楽でいたい。
苦しくなりたくない。
でも、生きていたい。
たったそれだけのことなんだ。
簡単なことのはずなんだ。
生きるなら、人生が砂の味では飽きてしまうから。
人が頑張る理由なんてシンプルでしょ。
生きることは苦しみを伴う。
それを否定するほど子どもじゃない。
苦しいのは、どこに向かって歩いていけばいいかわからないことだけ。
灯りはどこですか。
どこにいけば灯りは手に入りますか。
この道にはどんな茨がありますか。
あの道には何がありますか。ガソリンスタンドは潰れてませんか。
そっか。こんなふうに迷子になるぼくが、君は可哀想に見えたのだね。
ああ。やっぱり、君、ずっとそばにいてくれない?
寂しいんだ。悲しいんだ。
生きていくのに君が必要だ。
君はぼくの帰る理由。勇気の源。
背中を押してくれるだけで頑張ることができてた。
今になって理解しても遅いね。
君からしたら理不尽だね。
傷つけたのはぼくのほうだ。
こんな後悔するなんて思わなかったな。
それでも君のいない道を歩くよ。
ひとりぼっちの道だとしても、休む時間が長くなっても。
灯りはきっとある。君から離れた今ならきっと見つけられる。
ぼくを連れて歩くことだってできる。
君の穴を埋めず生きることだって、できるのだ。