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町の再開発計画を書類とし、王都へ向かう。前回と違い馬車内の空気は明るい、試算ではゲームやソロバンの売り上げを計上すれば余裕で足りそうだし許可は出ると思っていた。
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「う~む・・・計画に穴は無いし国の予算を使わないと言うのも素晴らしい、しかし許可は出せない・・・」
「理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
重苦しい空気の中、宰相はあっさりと言った「都市の規模と爵位が合わない」と・・・
全くの盲点であった、計画通りの規模となると子爵で領地の加増無しなら何とか、と言う事らしい。
「そう言う事なら計画はそのまま進めよ、頑張ってくれたまえオセロ子爵」
陛下がいきなり入室してきてぶっ放した。宰相は静かに片眉を上げ「その心は?」と聞くと
「オセロ一つで騎士爵だぞ、ウォーゲームとファイブストーンそれにソロバン、それだけ開発した功労者にけち臭い事を言うな、伯爵でもいいくらいだ」
「前例のない陞爵は貴族たちに混乱をもたらします、下級貴族までならよろしいでしょうが上級貴族である伯爵はなりません!」
「ならば子爵で決定な、領地の加増も無いが都市としての格は上げられる。
それから宰相、今回の陞爵を前例とし、爵位と領地そして都市の関係性を見直すように、このままいけば与える地が無くなり戦争一直線だぞ、どこも拮抗した戦力であるのに二国で戦争した後は周りの国に攻められると分からん宰相でないだろう、まだ国を富ませ強国にならねばいかんのに国内で足の引っ張り合いは愚の骨頂と知れ」
「前例に囚われ過ぎておったようです、申し訳ありませんでした陛下・・・」
「と言う訳だ、好きに都市を作るが良いオセロ子爵、寄親だったエロールド子爵にも悪いようにはせん、オセロ子爵家も王家の直下にするから遠慮せずともよい」
「格別の御配慮を頂き感謝いたします」
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ダトゥルに戻った俺はさっそく町割りをするため漁師、港湾、運輸、職人、そして商人の代表たちと話し合う。
ある程度町割りが決まったら地主たちとの城外の土地に関する話し合いだそこで俺は金で解決するか子爵領に代替え地を用意させるかを選ばせた、札束で叩くような真似はせず、と思っていたが貴族との直接の話し合いはすでに相手側からすれば・・・十分脅しとなってしまったようだ、以降はクドに任せておいたんだが人選を誤ったようだ・・・今で言うなら国会議員に会ったあとヤク○が出てくるようなものだった・・・
クドは「そんなに悪人顔じゃねぇはずなんだけどなぁ・・・」と言っていたが安心しろ十分悪人顔だ。
十分な土地を確保できたし早速住宅の建築を始めさせる、これに並行して王都につながる道などの拡張を行っていく。
あとはある程度形になるのを待って移住を始めてもらおう、そして後回しになっていた・・・エロールド子爵への挨拶だ・・・
ゴトゴトと走る馬車の中、俺の頭の中ではドナドナがエンドレス再生されていた・・・エロールド子爵に謝りに行くために・・・
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「子爵になって寄親と同等になったんで陛下の直下となりました、ごめんねテヘペロ」
こう言えたら楽なんだがなぁ・・・と思いつつエロールド子爵の屋敷に着いた・・・
屋敷に入るなりエロールド子爵が出迎えてくれていた・・・
「おめでとう!早馬で連絡は貰っている、あっという間に並ばれたな、そうそうこれからはシャストと呼んでくれ、俺もマルコンと呼ばせてもらう」
「じゃあシャスト様と」
「シ ャ ス ト」
「 」
子爵、いやシャストは俺の陞爵を喜びその日は遅くまで酒を酌み交わした。
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「旦那さま、決済できるものは済ましておきましたが、目を通してもらわねばならない書状や決済が溜っております」
机の上のこの束はなに?漫画みたいに高いんですが・・・漫画のように床にまで置かれていないのは救いかと思ったらロットさん・・・その手に持ってるものは何ですか?追加ですかそうですか・・・
カリカリ、バン、パチパチ・・・静かな執務室で延々書類と向き合ってると燃やしたくなる時がありませんか?今の私なら火の魔法がすぐに使えそうな気がします・・・
書類の中に一枚の手紙が入っていた、ふむふむなになに?はははパーティーの招待状だとさ、日付は三週間前、パーティーの日は一昨日だってさ、あはははっはは・・・これまずくねぇ?
「ザルクス伯爵よりの書状ですな、十日前にも同じ招待状が来ましたので詫び状を添えてお断りしておきましたが何か問題がございましたかな?」
「ロットさんがやってくれてたのなら安心だな、俺は字が下手だからなぁ・・・あまり大変なら書士を雇うとしよう、匙加減は任せる」
「旦那様、俺ではなく私と仰ってください、あと私も呼び捨てにしていただくようお願いいたします」
・・・ここは政治家先生の言い方の出番か
「前向きに検討します」
睨まないでお願い・・・
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昼過ぎシャストから書状が届いた、妹の誕生パーティが有るそうなんだがそれに託けてまた酒を飲もうぜ!という内容だった、ロットに了承の返事を書いてもらいクドに走ってもらう、足でじゃないよ、ちゃんと馬でだ、いつの間にかあいつ乗馬マスターしてやがった・・・
オリトに良い酒とシャストの妹が喜びそうなプレゼントを持って来て貰い準備は万端、書類も粗方処分したしちょっとくらい嵌め外しても平気だろう。
そして俺はそのパーティで運命の人と出会うことになる・・・
陞爵~爵位を上位へ上げること
6/3 修正
オセロ一つで男爵→オセロ一つで騎士爵