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「おい、一緒に王都に行くぞ」

 そんな子爵となったエロールドの一言から騒動が始まった。


『貸倉庫屋マルコン閉店のお知らせ』


 泣く泣くそう書いた張り紙をする、騎士爵だと寄親である男爵でも良かったが準男爵を通り越して一気に男爵になると王と謁見し、叙爵(じょしゃく)される必要が出てくるそうだ。

 生鮮食品を預かる貸倉庫家業では出し入れが激しく、王都を往復するために長く留守にすると預けている人が取り出せなくなるためである。

 貼り紙をし、徐々に減っていく荷物、一月が過ぎ残っている物は有るが邪魔にもならないし、取りに来ない=金を払ってないと言う事だ。


 『最大の彼方号』の積荷に関して

「連絡が無く入金もないため荷物の所有権を

 破棄したと見做し貸倉庫屋マルコンが処分します。」


 そう貼り紙を残し、クドとゴウを連れてエロールド子爵の元へ行った。

「まさかマルコンが貴族様になるとはねぇ・・・」

「・・・」

「そう言うがお前たちを雇えるようになったのも騎士爵貰ってからなんだが?」

「騎士は騎士だろう?あれ?ちがうのか?」

「違う」

「一応貴族様のはずなんだがなぁ・・・」


 そんな弾まない会話を続けエロールドの領主館に着くが門番に呆れられた。


「普通男爵様って馬車に乗ってくるんですがねぇ・・・」

「ええ~そんなルールがあったのか・・・」

「まぁまぁ、そういう意外性がオセロ卿なんて言い方に含まれるんだぜ」

 いや・・・クドそれフォローになってないから・・・


 エロールド子爵は腹を抱えて笑ってた。

「男爵がフェイントで徒歩で来る・・・うぷぷぷ」

「すいませんその辺の常識も知らないもんで・・・」

「俺のお古だけどマナー本な、陛下に謁見するときはそれなりにマナーも求められるぞ、あとは服装だが・・・特注になるな」

 貯金が目減りするぅぅぅと頭を抱えていると

「大丈夫、安心しろ陛下から準備金を預かってる、マナーを頭に叩き込むことを考えておけ」

「うわあああああプレッシャーがーーーーーー」


 悶え苦しむ俺を見てエロールド、クド、ゴウまで笑っていた、ちくそう・・・


「元々自分の為の娯楽だったんだがなぁ・・・」

「諦めろ」


 ぼそっとゴウがとどめを刺す・・・ゴウの一言は効くなぁ・・・


 馬車と服の用意で三週間、王都まで馬車で一週間閉店の準備も合わせると二か月近く掛かってしまった、謁見して遅い!斬首だ!とかにならんだろうか?


 謁見と叙爵はガチガチに緊張してたお陰で碌に覚えてなかったがクドの一言で意識まで飛んだ。


「いや~『エロールド子爵はバカラボン子爵の領に入り納めよ、オセロ男爵はエロールド子爵の後を任せ港町ダトゥルの領主とする』って言葉はびっくりしたよなぁ?」


 領主・・・俺が・・・領主の仕事なんて俺の人生設計には入ってねえ・・・


「控えの間で倒れたって聞いたから様子見に来たが・・・」

「人生設計がどうとか呟いてましたが・・・」

「「キモがちいせぇなぁ」」


 そう控えの間の兵士が言ってたそうだが俺は小市民なんだああああああ・・・





「おお!これが『知らない天井だ』って奴だな」

「起き抜けに相変わらず変な事口走るなよ・・・」

「心配したぞ」

「・・・これからも迷惑かけるかもしれないが、頼んだぞクド、ゴウ」



 領主か・・・マジどうする?

 まずは執事、家の取りまとめをして秘書っぽい事もしてもらわねばならない、次にメイド、メイドかぁ~うへへへへへ・・・いかんいかん、おや誰か来たかな?


「邪魔をする」(邪魔するんやったら帰ってー・・・陛下相手に言えるわけがねぇ・・・)


 またガチガチに緊張してしまうが陛下と宰相が帰った後でクドが教えてくれた中身は

 ・軍にも在籍してほしい事

 ・配属は将軍直下の輜重隊に配属になる事

 ・隊長でなく副隊長格となる事

 ・隊長がもうすぐ来るってさ


 最後のは早く言ええええええええ!


 ノックの音がして入ってきたのはよく言えば威圧感が無い人当たりの良さそうな・・・悪く言えばやる気の無さそうな貴族さんだった。


「ルッツ・ザルクスだ伯爵だが気にしないでルッツさんと呼んでくれ、得意なことは金勘定と逃げ足だ、君がいてくれたら長年の夢だった厨房馬車に改造する予算が出る、よろしく頼むよ」


 そのあと差しさわりのない挨拶を済ませルッツさんは退室していった。


「小市民にはきついなぁ、まぁ兵を率いろとか言われなくて良かったが・・・」

「小市民、笑えるな」

「うん」

「ゴウ言っとくけどお前は領兵のまとめだし、クドお前は執事候補だぞ」

「「・・・」」

「まぁ給料は上がるだろうが・・・って沈んだ顔からにやけるまで早いな!」

 まぁいいその分一緒に苦労してもらうさ




叙爵~貴族または華族の爵位に叙せられること。ウィキペディア叙爵の欄より抜粋


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