無の彩り
えっと……ほとんど知識不足なので、わけがわからない部分あると思います。
ご了承を……。
景色という物が見えた時に感じた物は無。
白い部屋の白い服を着た人に感じた事も。
青い空を飛ぶ白い物体も、茶色の上に緑色の点々もそこに何があっても無かった。
そこには必ず色が存在する。
そこには何も色が存在しなかった。
「――問題無いですか?」
白い服が最初に発した声の前半が、意味が無いように感じる。
答えなかった、そこに音が無いから。
音が理解出来る物には色が明るい、暗いが存在する。
音が理解出来ない物には色が存在しない。
「どこに行くんですか」
声に何も感じない、どこに行こうと構わないような言い方。
歩けど、音も色も自分には何も無かった。
外に出ようともそこには、色や音を感じても自分は感じ無い。
周りを表現すれば景色が彩られる。
周りを表現できなければ、景色が無い。
「返事をしませんか、まぁいいでしょう」
後ろから聞こえてくる音。
自分が発しようとしても何も出ない。
何も気にならず歩いていく、そこに喋りかける人がいた。
「こんにちは、これが?」
周りの無から1つだけ様々な色や音があった。
1歩ずつ近づく音や、高くて明るい色と好奇心を含んだキレイな声。
この美しい人は誰なのだろうか。
『……』
先程まで聞こえた音は、何も発しない。
自分は何も発する事はない。
「うーん、じゃあ……こんにちは」
キレイな声で、様々な色を含んだ音は伝わった。
『こんにちは』
自分にも音を発する事が出来た。
何も無かった音が初めて、そこに生まれた。
何故その音を発する事が出来たのか、それは同じ音を知っていた。
知らない音は発する事も出来ない。
知っている音は発する事が出来る。
「喋った! なら次はね……さようなら」
『さようなら』
一緒の色は表現が出来ない、ただそこにあるのは同じ音。
だけれど自分に1つ1つ音が入っていくのがわかる。
もっと教えて欲しかった、自分の知らない音が入っていく様に。
「うんうん、えらいえらい」
『……』
その音には明るい色が感じたが、返す音が無かった。
いつか自分はこの音を、音で返すことが出来るだろうか。
何か手を動かしているが、無に近い音。
「それじゃ次は……ありがとう」
『ありがとう』
音が発することが出来た。
もともと知らない音だったけれど、発する事が出来ていた。
こんにちは、さようならも同様だった。
「うん、これ私にやらせてください!」
「本当かい? 実はどうすればいいか迷っていたのだよ」
『……』
無意味の音を紡いでいた。
自分は何も発する事もしない、何も知り得ない。
不意に首あたりの何かを抜かれて持ち上げられた。
自分の意思では動けない。
自分の意思で動こうとしないといけない。
「もし、これに命を吹き込んでくれるなら全力で協力しよう」
「大丈夫ですよ、私の言葉に反応してくれたんですから」
『よろしく、お願いします』
しっくりきた音があった。
その音は元からあった気がする。
この人なら、自分に音をくれる気がする。
もし、自由に音を発する事が出来るようになった時は。
どの音よりも発しようと思う。
『ありがとう』
と、その時には色と一緒に伝わるといいな。
そうして、黒い世界へ消えていった。
音は色々な色と共にあり、その音には表情が存在する。
今はもう、何も発せない自分では無かった。
「今日は、どんな歌を聴かせてくれるんだい?」
『そうですね、マスターにありがとうを』
大きな身体は、テーブルという物からでも大きく感じる。
あの時から、自分を育ててくれた方に。
自分というロボットを育ててくれた方に。
ありがとう。
お読みいただきありがとうございます。