33 戦争とドブス同盟
「……腹減ったなあ」
「ノドも乾いたよぉ」
「──ングゥゥ」
「ノゾミ、ニーリス。もう少しでワンコ村に着きますわ」
チグリの街から脱出した俺たちは、街道を半日、ひたすら歩いていた。
ニーリスが、かなり手荒に道を切り開いたせいか(ただの街人を風で吹き飛ばしただけではなく、思い切りグーパンしたり蹴り飛ばしてた)追っ手はいないが、着の身着のままで逃げてきたから食い物も水すらもない。
ユフィーの便利リュックも宿屋に置きっぱなしだ。
「もうラミスなんだよな」
「ええ、すでにここはラミス神聖王国ですわ」
「アウァァッ」
国境や検問なんかは特になく、チグリを出て街道を東へ進み、緩衝地帯である荒れ地を抜けるとラミスの領土となるらしい。
確かに風景は長閑な草原になってきていた。
「ワンコ村に着いたら何か食べましょう」
ユフィーが腕の中の俺へ微笑む。安定の美人顔だ。……けど、その顔が僅かに歪む。
「でも……」
「でも?」
「ンギィッ?」
「その前に、それをなんとかしなきゃよね」
「ああ……そうね」
「ングゥゥウウウウウ!」
ユフィーと俺は横を歩く[それ]へ目を向けた。
そこには、さっきから会話に入ってきてんのか、よくわからん奇声の主たち。
デロデロ……。
付いてきちゃった。しかも全部。数百匹。
今、俺たちを上空からみたら、ニーリスとアナスタシアを先頭に紫色卵の大行列だ。
デロデロたちは、荒れ地に入った辺りから一匹、また一匹と現れ出して、付かず離れずで俺たちに付いてきたのだ。
襲ってくる訳でもないし、もう面倒くさいから見なかったことにしてスルーしてたら大量に増えてた。
さっき振り返ったら、おそらくはチグリにいたデロデロ全部だろう数がゾロゾロと後ろにくっついてきている。
なんなんでしょうね。
「ノゾミンを主と認めたとか?」
「死闘の末のブス同士の友情ですわ。ドブス同盟ですわね」
前を行く二人が好き勝手言ってるけど、このまま人里へ入ったら大騒ぎ間違いなしなので、ユフィーに地面へ下ろしてもらう。
立ち止まって振り返ると、デロデロたち全員がピタリと静止したので近くのヤツに話しかけてみる。
「……なあ、お前ら、いったい何目的?」
「ンンッン……グアッァ」
……意味わからん。
「朝みたいに命令してみたらどう?」
「でも、それだとしばらくしたらまた現れそうな気が……」
突然村の中で大量発生してもパニックになること間違いなしだ。
そのせいでまた逃げる羽目になったら最悪だもんな。
なんとかうまく意志の疎通ができないもんか。
「でも、言葉は理解しているのよね?」
「そうか、それか!」
俺はデロデロたちを見渡すと、咳払いを一つしてこちらに注目させる。
「みんな、これから俺が質問するからイエスの場合は頷け。ノーの場合は首を横に触れ。いいか?」
「「「「「ングーッ!」」」」」」
全員が奇声を漏らしながら頷いた。
なんか気色悪い……。でも、これならいける!
「お前らは、俺と友達になりたいのか」
「「「「「アァウゥー」」」」」
全員首を横振りだ。
「じゃあ、俺の敵か」
「「「「「ンォァァッ」」」」」
これも横振り。
ちょっとほっとした。こんな変なのにずっと狙われたくないからな。
しかし、じゃあなんで付いてくるんだ?
その後、「仲間になりたいのか?」とか「部下になりたいのか?」とか「じゃあアホなのかこのやろー」とか聞いてみたけど、全部答えはノーだった。
さっぱり目的がわからん。
まさか、アナスタシアが言う通り、本当にブス同盟っ!?
いやいや、まったく意味分かんねえし、そんな訳は──。
「ノゾミとドブス同盟が結びたいのですか?」
「「「「「ングアアアアアアアッ!」」」」」
「ええええっ!?」
アナスタシアが聞いたら、全員頷きやがったよ!
なんだよそれ、ふざけんなよ。
異世界歴×○年 ドブス同盟締結。ってなにその歴史。
だいたいさ!
「誰がブスだコノヤロー!」
「ノゾミですわ」
「「「「「アアアアアアッーー!」」」」」
もういいよ。……全員頷いたよチクショウ。
「……ノゾミはカワイイわよ」
「そうだよ、ノゾミンは最高だよ」
ユフィーとニーリスがフォローしてくれるけど、おそらくはブサカワイイとか思ってんだろうな。
まあ、こんなデフォコアラだからしょうがないけどな……。
「で、結局のところ、そのドブス同盟ってなんなんだ?」
「知りませんわ」
「あ? お前が言ったんじゃん」
「みなさん変な顔なので、なんとなく思いついたのですわ」
「え? ……じゃあ、意味は?」
「ありませんわ……ブスと言う真実以外は」
「なんだそりゃああああああああっ!」
この数瞬後、チューバッカとデフォコアラによる第二次ドブス戦争が勃発したのは言うまでもない。




