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23 運命の日、きたる!?

 

 ポケットの中にあったもう一つの紙切れ。

 その中にはビー玉より少し大きめな水晶玉が一つ包まれていた。

 

 中で赤黒い靄が渦巻いてる。

 

 なんだ、これ?



「ちょっ、ちょっとノゾミン、それ!」



 不思議玉を眺めてたら、突然ニーリスが俺を地面に下ろした。



「ん? なに?」



「それ、……メテオ玉じゃないの」



「あ? なにそれ?」



 よく分からんが、ニーリスの顔が若干引き攣って見える。



「なにそれって! 賢者ローウェスが作り出した超高純度の魔石に大魔法メテオを封じ込めた稀少戦術具じゃない! 昔一度だけ見たことあるから間違いないわ。なんでそんなもの平然と持ち歩いてんのよ!」



「……え!?」



 大魔法メテオって、もしかして隕石召喚するやつ?



 ゆっくりと、だが確実にニーリスが後退っていく。



「いい、ノゾミン落ち着くのよ。そんなもの使ったら辺り一帯火の海よ。あなたも死ぬわよ」



「ええっ!?」



「だ、だから、危ないから動かないで、ね!」




 う、うそ~ん……。




 ニーリスは近くにいたローブ姿のやつらに逃げるよう指示を出しはじめた。

 

 最初は、



「そんなバカな」



 とか、



「まさか。なんでそんなものを珍獣が?」



 だとか余裕かましてたけど、ニーリスが俺の持つ玉を指さすと、大慌てで来た道ダッシュで戻りだした。

 


 ああ、ガチでやばいみたいだなこれ。


 それにしてもあの親父、そんな危ねえ物を無言でポッケに忍ばせやがって、正気じゃねえな。

 ……あ、スレイヴってアホだった。

 



 けど、これはチャンスだ。



「な、なんだと!」



 騒ぎを耳にした熊男が騒ぎ始めた。



「て、てめー……。俺たちをわざとおびき寄せて自爆でもするつもりだったのか。……なんて危険生物だ」



 勘違いまで始める。熊男、マジ脳筋だな。



「お、おい、お前ら! 逃げるぞ!」



 そして、速攻で撤退指示。



 前もそうだったけど逃げるのだけは速いな。


 アナスタシアを運ぼうとしてた盗賊たちはキョトン顔してるが、熊男が我先に逃げ出すと従いだした。


 アナスタシアを地面に打ち捨てて走り出す。



「じゃ、じゃあノゾミン。私も行くから。それ使っちゃダメよ」



 最後に残ったニーリスが更に後退していく。


 警戒してか、こちらを向いたままだ。



「分かったから逃げていいよ。あ、それともう襲わないでね」



「もう襲わない。だから絶対使わないでね」



 いや、そんなビビんなくても大丈夫。



「パグロームって言って投げなきゃ──あっ!」



「あっ!?」





 しつこいから説明しようとしたのが悪かった。


 手を振った拍子にメテオ玉が、掌からするりと零れ落ちていく。


 そういえば、今の俺の手は毛むくじゃらのもふもふだった。

 人の手と感覚が大分違うの忘れてた。




 てへっ。


 ……。


 …………。






「うわあああああああああああっ!」



「きゃあああああああああああっ!」



 カツン、カツン。


 乾いた音を響かせてメテオ玉はコロコロと地面を転がる。

 そして、俺とニーリスの中間辺りで静止。



 一瞬の沈黙。



 そして突然の巨大化。



 禍々しい赤黒いオーラを空へと放つ。




「──アナ! おい、起きろ!」



 俺は気を取り直して、地面に横たわるアナの元へダッシュして、ダイビングヘッドをかました。



「……ん、……きゃあっ!」 



 ボフッという程良い衝撃でアナはすぐに起きた。眼前にあった俺のブス顔に悲鳴あげながらだけど。



「てめー、こんな時に人の顔に驚いてんじゃねえ! それよりメテオだ。メテオが降ってくる。逃げるぞ」



「メテオ……? どうしてですの?」



「説明してる暇はねえ! 兎に角逃げるぞ!」



「……無駄よ」 



 悟ったような声がして振り返ると、ニーリスが茫然と空を指さしていた。

 

 見上げれば、赤黒いオーラに導かれるように、光る物体が上空に現れていた。



 しかも、十個ぐらい。



「……数、多くね?」



「少しぐらい離れたって、あれの衝撃には耐えられないわ」



 ニーリスは、何を思ったのかその場に尻を落とした。



「百年……短い命だったわ」



「諦めんの早くねっ!? つうか百歳なの!?」



「ノゾミン。生まれ変わったら、世界中の種族を一緒に拷問しようね」



「いや、無理……。それよりニーリス。お前魔法使えんだろ。なんか方法ないのかよ。強烈な風で押し返すとか」



「そんな都合のいい魔法があるならやってるよ。だいたいメテオから身を守るなんて、超高度な防護魔法プロテクションを施した上で爆風の衝撃を風の最大魔法【テューポーン】で相殺するぐらいしなきゃ無理よ」



 なんだテューポーンて。初めて聞いたわ。

 

 つうか、詰んだ……。

 

 俺は腕力もないし魔法も使えない。自分で自分の身すら守れない弱小生物だ。

 普通、そういう場合は多少機転が利いたり頭が良かったり何かしら取り柄があるもんだが、俺にはブス顔以外ない。

 


 空からは、ゴゴゴゴゴッ! って死の音が響き始めている。

 隕石はその姿を大分確かなものにしている。

 おそらく後一分ぐらいで落ちてくるな、これ。



「わたくし、──◇○☆△%□」



 事態をやっと把握したのか、アナスタシアが何か呟いたが、メテオの音がうるさくてうまく聞き取れない。

 

 けど、ニーリスには聞こえたのか、何故か目ん玉見開いてアナスタシアに駆け寄っていく。


 

 なんて言ったんだ? 


 

 まさか、こんな時に天然の暴言? ありえるな。

 

 悟ってたはずのニーリスが必死の形相でアナスタシアの胸ぐら掴んで、強制ヘッドパンキング状態だし。




 ああ、それにしてもメテオの音うるせえ……。




 さて、どうする?

 こんな姿で、死にたくはないが方法が思い浮かばん。


 諦めたくはないが……。



 でも、どうせ死ぬならせめてユフィーの胸の中がよかったな。

 最後を迎えるなら、ぷにょんって弾力の中だよな。むにゅんって。

 ああ、一回ぐらい直で触ってみたかったな……。



 あ、やばい。現実逃避しちまった。


 死の間際に、最後に思い浮かべたの【おっぱい】って、俺終わってるな……。



 ……。


 

 頭上にはギュイイイイイイン! って凄まじい音の隕石。


 アナスタシアとニーリスが、こっちに向かって何か叫んでる。

 けど、なんかもうどうでもよくなってきた。

 


 ……。


 

 だって、もうメテオがすぐそこなんだもん。

 足掻く時間もない。

 

 終わりって結構あっけないよね。

 覚悟を決める余裕すらもないんだから。

 




 次の瞬間──。


 凄まじい閃光が走り、すべての音が消えた。 






 その日、──メテオは降り注ぎ、俺の世界は終わった。



次回はふざけた挿絵、プロローグにあったフリマ広告を載せます。

乞うご期待?

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