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俺はラノベが大嫌い  作者: 壬生京太郎
第一部:邪神復活編
6/18

第六話『真実の鍵(佐竹山くんのシナリオ講座)』

「何の話だよ」

「とぼけないで」

 読が突きつけたスマホには、栞からのメールがあった。


□□□□□□□□□□


差出人:哀川栞

件名:告白したけど


 振られた(´;д;`)


□□□□□□□□□□


「誤解だ。告白なんてされてない」

「ならこのメールはなんなの」

「分からん。そんな雰囲気、1ミリもなかったし」

「鈍感の上に難聴、ソードくんは本当にラノベの主人公ね」

 カチンときた。

 ここでいう難聴っていうのは、女の子の告白を「え? なんだって?」って聞き逃すラノベの黄金パターンだ。自慢じゃないが、俺の耳は10メートル先のゴブリンの足音だって聞き逃さない。

「大体な、俺は読が来ると思ってたんだよ」

「私だったらどうだっていうの」

「そりゃいろいろ考えるだろ! 手くらいつないだ方がいいのかなとか!」

「…………」

「…………」

 気まずい雰囲気が流れる。

「……とにかくもう一回考えてよね。栞、本当にいい子なんだから」

 それだけ言うと、読は踵を返して駆け出した。

 なにやらいろいろ失敗したらしい。

 それくらいは俺にも分かった。

 でもなんだか不条理だ。

 明日もう一度しっかり話そう。

 そうすればあいつもきっと分かってくれる。


 そのはずだ。



 次の日、読は学校を休んだ。

「今日は学食か、ソード」

 無機質な白い長机で一番安いラーメンをすすっていると、佐竹山くんが声をかけてきた。

「心配するな。私の掴んだ情報によると、山本くんなら今日は検査で病院だ」

「検査?」

「例の事故の後遺症だ。日常生活に支障はないが、今も定期的に通院しているらしい」

 そういえば高校初日、生徒はみんな学校のはずなのに、読は俺の戦いを見ていた。

「なにかあったのか、山本くんと」

 佐竹山くんは隣に座ると、視線をこちらに向けることなく、カレーを口に運び始める。

 言いたくなければ聞きはしないが。

 そう言っている気がした。

 気を使いやがって。佐竹山くんのくせに。

「あいつさ、俺をハッピーエンドにしてくれるって」

「ほう」

「それでさ、中学の同級生を紹介してくれた」

「なるほど、それは山本くんが悪いな」

 意外なほど即答だった。

 こいつ、俺と読との関係を勘違いしてるんじゃなかろうな。

「物語は、内なる欲求が満たされてはじめてハッピーエンドとなる。山本くんは少しばかり脚本の才能が不足しているようだ」

「……?」

「ソード・シンクラインが真に求めるもの、それが果たされない限り、ハッピーエンドは訪れない。そういうことだ」

 目が覚めるような思いだった。

 言われてみればその通りだ。

 俺が求めるもの、それは美少女との恋でも、ラッキースケベでも、うまい弁当でもなく。

 もちろん読自身でもなく。

 確かにあいつには才能がない。

 なぜなら、俺が求めるものは……

「うっ……?!」

 右目の視神経が掻き回されるように痛む。

 周辺の魔力が大渦のように荒れ狂っているのだ。

 過去幾度かの来襲でも、これだけの規模の乱れはなかった。

 遅れて地面から押し上げられるような衝撃が響く。

 地震のはずはなかった。

(……なんだ?)

 ふらつく足で窓に駆け寄る。

 駅側の市街地から噴煙が立ち昇っているのが見える。

 連中はいったい何を送り込んできたんだ。

 異変に気付いた生徒たちが集まってきた。

「ソード、見ろ」

 佐竹山くんがスマホを差し出す。

『ニヨニヨ動画』の速報にはこう書かれていた。

『高瀬市に未確認生物出現』

 消防とも警察とも分らぬサイレンが響き、尋常ならざる空気がここまで伝わってくる。

「未確認生物……?」

 学校にも二台のパトカーが乗りつけされた。


 そして校内放送が流れる。


「1年B組、新蔵院蒼人くん、至急職員室まで来てください」

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