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俺はラノベが大嫌い  作者: 壬生京太郎
第一部:邪神復活編
2/18

第二話『組織のエージェント(ラノベ化のおさそい)』

「あれ?」

 屋上の扉にはカギがかかっていた。

 学校の屋上は自殺防止などの理由で閉鎖されていることが多い。

 あの手紙、いたずらだったのだろうか。

 そんなことを考えていると。

「もしかして閉まってる? おかしいなあ。ラノベじゃ定番なんだけど」

 長身の女子生徒が上がってくる。

 垢ぬけない雰囲気、手入れの行き届かない長髪、そしてメガネ。

 しかし見た目で判断はできない。

 政府の人間、組織のエージェントという可能性もあるのだ。

「君は?」

「まだ二日目だから仕方ないか。同じクラスの山本読やまもと・よみ、よろしくね、新蔵院蒼人くん。いいえ」

 ポケットからスマートフォンを取り出す。

「勇者ソード・シンクライン、かな」

 読が差し出した画面には、昨日撮影したらしい、戦う俺の姿があった。

 やはりこいつ、組織のエージェント。

「何が目的だ」

「あなたが知るすべて」

「何のために」

「あなたの持つ情報は世界を揺るがしかねない。いえ、きっと大騒ぎになるわ。本物の勇者の体験をもとにしたラノベ……間違いなく大ヒットする!」

「……は?」

「ライトノベル。知らないの? 今じゃ図書館にも置いてある、100億円超の巨大市場よ」

 違う、そうじゃない。

「あなたの体験をもとにしてラノベを書くの。ちょっと待って、どこ行くの」

「帰る」

「この写真、どうなってもいいの」

「誰も信じない。中二病扱いされるのがオチだ」

「一緒にラノベのトップを目指そうよ、ソードく~ん!」

 今度は泣き落としか。

「それにな」

 俺は冷たく言い放つ。

「俺はラノベが大嫌いなんだよ」


「へ……?」

 狐につままれたような顔で、読は俺の顔を見た。

「いやいやいや、ラノベはああ見えて懐の広さとテーマ性は……」

「だってラノベって、嘘だろ」

 読は絶句した。

「嘘っていうか、夢か。簡単に手に入るものならだれも憧れたりしない。ラノベに描かれるってことはみんな欲しいけど手に入らない、夢だ」

 俺もラノベは読んだ方だ。

 そこに理想を見たこともあった。

 しかし気付いてしまったのだ。

 それは手に入らないから、ラノベだ。

「夢くらい見たっていいじゃない」

「叶わない夢なんて麻薬と同じだ。ほとんどの夢は叶わず壊れる。リアルこそが最強なんだ」

 読がむくれる。

「ならソードくんはなんなの。異世界の勇者なんてラノベそのものじゃない」

「ソード・シンクラインはもう正義とか誰かのためになんて戦わない」

「どうして」

「話してもいいが、ラノベのネタにはならないぜ」

 どうせ誰も信じない。

 なら言ってしまったところで問題はないだろう。

「そいつはさ、妄想に憑りつかれていたんだよ」

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