赫々戦争~日本郵便防衛庁輜重課の苦悩~
ちょっと短いですが、なぜ郵政省に対し過激な労働闘争を繰り広げる全逓派にも各種郵便防衛の為の装備が配備されているのかの説明回です。
……後書きより面白くないかも。
日本の郵便を防衛する日本郵便防衛庁にも、他国の軍事組織と同様に兵站を担う部署がある。
その名も輜重課。
日本全国の郵便局に駐屯する郵便防衛部へ、武器弾薬、車両、燃料、被服などの配分や輸送を担っている。
その中でも武器弾薬や戦闘車両の配分を掌握していたのは郵政省トップからの出向組だった。
これは日本郵便防衛庁で内戦を繰り広げる各派閥への武器弾薬の配分を、郵政省や郵便防衛庁へ反抗的な全逓派への配分を少なく、従順な全郵政派への配分を多く偏重させる為である。
だれだって自分達に銃口を向けるような奴らに武器弾薬を渡したくはなかったのだ。
後の三里塚闘争、千葉県成田市の新東京国際空港建設に反対する武力闘争において、多くの空港公団作業員や機動隊員が行政代執行による土地収用や家屋取り壊しの最中、全逓派や旧軍派の郵便戦車に轢殺された事を思えば、彼ら輜重課の判断は正しかったのかもしれない。
だがそれもすぐに問題が発生した。
あまりにも全逓派への配分を少なくし過ぎた為に全逓派が機能不全に陥った所まではまあ良かった。
だが肝心なのは、日本郵便防衛庁で全郵政派に次ぐ多数派勢力であった全逓派が機能不全に陥ったという事である。
全逓派が機能不全に陥っている隙を突いて勢力圏拡大に動いた全郵政派も、しかし全逓派が持っていた地域全てにまで郵便防衛を実施するには人手が足りないのだ。
この結果として生じたのが、郵便防衛における空白地域である。
当該地域にて郵便を守るべき郵便防衛庁部員は全逓派であったが為に割り当てられた郵便保護銃は三八式歩兵銃が2人に1丁、弾が1人に5発のみ。
後ろ盾のソ連や中国からの武器供与も、その恩恵に預かれるのは北海道や九州などの一部地域のみだった。その彼らにしても最新兵器がタダで供与されている訳でもなく、殆どがモシン・ナガンや中正式歩槍などといった旧式兵器で凌いでいる始末。
これでは郵便局を防衛する事すらままならず、全郵政派が来襲した、いやしてくれたならば郵便局を無血開城する他無かった。……しかしその全郵政派は待てど暮らせど、呼んでみても来なかった。
ツキノワグマに銃剣を括り付けたゲバ棒で立ち向かい、そして倒れたとある全逓派郵便防衛部員を誰が責められようか。
どう考えても諸悪の根源は輜重課に他ならなかった。
だが、その余りの惨状に自らの経験が重なった旧軍派が輜重課に全逓派への配分改善を訴えるが梨の礫。
旧軍派による全逓派へ武器弾薬の横流しも行われたが、そもそも少数派閥である旧軍派に大した余裕があった訳でもなく、空白地域が僅かに狭くなった程度の効果しか齎されなかった。
しかし、思いがけず早期にこの事態は打開される事となる。
切欠は世論の一声だった。
「同じ郵便料金を支払っているのに、郵便防衛部員の派閥によって郵便防衛力に差があるとはどういう事か?」
郵便というものは、大きさや重ささえ同じならば全国一律に料金とサービスが設定されているのだ。
それなのに、輸送や配達の護衛を担当する郵便防衛部員の派閥によって、片やピッカピカの六四式郵便小銃とパンパンに膨らんだ弾納を引っ提げて、片や錆の浮いた三八式歩兵銃だけを引っ提げていて。―――これを同一サービスだと言ってのける輜重課、そして郵政省に数々のクレームが舞い込んだのだ。
こうして時の国会をも騒がせた騒動の結末として全逓派への配分は他派閥に対しやや劣る程度まで改善される事となる。
もれなく派閥間抗争が激化するというオマケが付いたのだが。
問)三里塚闘争で土地収用の為、今まさに空港公団や機動隊がブルドーザーで家屋を破壊しようとしている現場を目撃した郵便防衛部員の思いを答えよ。
なお、破壊されようとしている家屋は郵便防衛部員が携えている郵便の配達先とする。




