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アフガニスタンへ~郵便を守るべく選ぶ道~

 郵便。


 それは物流の一形態。


 あるいは、国家の血脈である。




 手紙は届く。


 国土の隅々に至るまで、例え火の中水の中であろうと、手紙は届く。


 なぜなら、それは国家という肉体の血脈に流れている血液と同義なのであるから。


 届かないという事は、すなわち国家が重篤な病に侵されているという事である。




 ならば、日本郵便防衛庁は日本の郵便を守るべし。




 だが今、日本の郵便はとある病に侵されていた。


 いや、誰も気付かぬふりをしていただけで、実のところ何十年も前から日本の郵便は病に侵され続けていた。




 その病の名は―――




 『()()




 それも慢性的な、巨額の赤字である。


 そして病原菌の名も明らかだった。その名も―――




 『()()()便()()()()




 まあ、あれだけの軍事組織を抱えていれば、いくら国家予算を補填に充てようとも一介の行政組織に過ぎない日本郵政省が大赤字を避けられる筈も無し。


 わかっていたのだ。どうやっても赤字になるなんて。


 だから、他国では当たり前の高価で高性能な主力戦車を配備せずに歩兵戦闘車を特殊郵便輸送車両(郵便戦車)と言い張って配備したり、航空郵便防衛部も最初の頃は予算をケチりにケチってF-104Sで済ませたり、海上郵便防衛部だって立派な艦隊を幾つも揃えはしたがあれは有償による船舶護衛(郵便扱い輸送)によって採算性に有る程度の目処があったからだ。


 それが今では堂々たる世界第三位の軍事組織。3万5000両の郵便戦車、300機の郵便戦闘機、7個の郵便護衛艦隊が揃っているのだ。


 大赤字になるのも当然の話である。


 さらに追い討ちを掛けたのが1997年、財政投融資からの切り離しである。


 財政投融資という大きな財源を失った郵便防衛庁は、予算に占める郵政省への依存度を更に高めていった。

 縮小再編も行なったとはいえ、郵便防衛庁の存在自体が郵政省の赤字の根源である以上、それは気休めにもならなかったのだ。


 これに対し、国が予算を投じられれば良かったのであるが、そこで立ち塞がっていたのが憲法九条の壁である。


 日本郵便防衛庁が国家の戦力では無いという事を示すため、日本郵便防衛庁の予算に占める国家予算の比率は49%以下と定められていたのだ。


 それでも日本政府は郵政省の他に運輸省をカバーにしての郵便防衛庁への予算投入も行なっていたが、やはり限界があった。




 限界だったのだ。




 そして彼らは決断する。




 2001年5月。


 時の内閣総理大臣は親米派で知られていた。


 しかし、かつて郵政大臣と郵便防衛庁長官を兼任した人物でもあった。


 その名も、鮫島純一郎。




 後に「郵防庁をぶっ壊す」の発言で世間を騒がすことになる、その人である。


 


 彼らは望んだ。


 郵政省を日本郵便防衛庁という枷から解き放つ事を。




 そして望みは叶えられた。




 言い方が悪いが時期が良かったのだろう。


 2001年9月11日。


 アメリカ同時多発テロ事件が発生。


 死者3000人を超える超大規模テロ事件に対しアメリカと国際社会は報復を決意。実行グループであるアルカイダへの報復のためアフガニスタンへの侵攻を決めた。


 そのテロとの戦いの為に、アメリカは物流屋を欲した。


 10年前、1991年の湾岸戦争においてアメリカ軍を中核とした多国籍軍は、クウェートを挟むとはいえペルシャ湾沿岸に近いイラクとの戦争でさえ現代の戦争が必要とする膨大な兵站輸送に限界を露呈し掛けたのだ。


 それを今度は内陸国アフガニスタンを相手にまた?




 そしてアメリカは、物流(兵站)のプロフェッショナルたる日本郵便防衛庁に目を付ける。


「なあ、あの旅客機、もちろん郵便も積んでたんだよ。アメリカ国内郵便が殆どだったんだけどさ、きっと日本宛の国際郵便も少なからずあったよねえ」




 

 2001年10月21日。


 一つ、日本郵便防衛庁を繋ぎ留めていた手綱は切り放された。


 『平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる郵便への攻撃に対して日本郵便防衛庁が実施する防衛出動措置に関する特別措置法』と『平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法』、通称『対テロ郵便防衛出動特別措置法』と『テロ対策特別措置法』が国会で成立、制定された。


 この『対テロ郵便防衛出動特別措置法』により日本郵便防衛庁に課せられていた予算の制約は完全に取り払われた。

 それというのも、この特別措置法によって他国軍を顧客としての有償兵站輸送が可能となったのだ。たとえその郵便料金を『テロ対策特別措置法』により日本政府が肩代わりしていようとも、今はそれで良い。


 これにより日本郵便防衛庁は独立採算制への一歩を踏み出せたのだから。




 2001年10月25日。


 そうして日本郵便防衛庁はアフガニスタンの地を踏んだ。


 彼ら遣アフガニスタン独立統合郵便防衛部の仕事は、不朽の自由作戦に参加するNATO軍への兵站輸送である。

 郵便防衛庁を名乗っていながら郵便防衛庁が郵政省を赤字に陥れている、つまり郵便防衛庁が郵便の敵となっていた訳です。

 ならば他から金を持って来れるよう独立採算制に変わる他無し。つまるところ民営化。


 そうして日本郵便防衛庁は、対テロを口実に独立採算制への、そして民営化への一歩を踏み出しました。

 またアフガニスタン派遣を口実に不採算部門である国内郵便防衛事業を更に縮小再編し、これを派遣の長期化を理由に常態化させる事で経営の健全化。という狙いもあるようです。

 はたしてそう上手く日本郵便防衛庁の思惑通りに行くのでしょうかね……。


 あとアフガニスタン編ですが、アフガニスタン派遣はあくまで民営化を目指す日本郵便防衛庁が取った手段であるため、たぶんアルカイダとの戦闘も山程ありますでしょうが話の構成としてはたぶん控えめな予定です。たぶん。

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