西側か東側か国産か~郵便防衛庁の赤化を食い止めろ、ソ連製はやめてくれ~
事の発端は、郵便防衛庁で調達の決まった水陸両用車両である。
これが調達が決まったものの、どの車両にするかの選定で騒動が起きた。
「アメリカ製のLVTP-5って奴、重量が37tって重過ぎない?車幅なんか3.5mもあるし通れる道あるのか?ソ連製のPT-76やBTR-60ってのなら重量が10~15t、車幅なんか3mそこそこで鉄道輸送も楽らしいぞ」
どういう訳か、車両の選定候補にソ連製が紛れ込んでいたのである。
さらには老朽化したM24軽戦車をはじめとした特殊郵便輸送車両の更新のための新車種候補の中にはT-55が、三八式歩兵銃やM1カービンなどの郵便保護銃の更新候補にはAKMなどと、近々更新予定であった装備の多くにソ連製が紛れ込んでいたのだ。
いったい何故だ?
その原因は郵政省と郵便防衛庁が入る本省庁舎の立地、東京都港区飯倉町にあった。
なんと外苑東通りを挟んだ斜向かいが在日ソビエト連邦大使館であったのである。
この為に、本省庁舎を出入りする郵政省と郵便防衛庁の職員らは頻繁にソ連外交官やスパイらからの接触に曝され、ソ連製兵器のセールスを真に受けるのはまだ良い方で、酷い場合には完全に共産主義に感化されてしまった職員までいる始末である。
しかも、なまじソ連製兵器が日本の国情に合致していたというのも具合が悪かった。
先に挙げた水陸両用車両については、アメリカ製は重く巨大で日本の道路事情と相性が悪いのと対照的に、ソ連製は小型で軽量と大きなメリットがあった。
特殊郵便輸送車両、つまり戦車についても、アメリカ製は体格の大きな欧米人向けに作られているきらいがあって小柄な日本人には不向き。それに対してソ連製は車内がコンパクトで、日本人と同じく小柄なモンゴル人でも運用に問題が無いという。
郵便保護銃については、ソ連に対抗して自動銃が要求されていたが、アメリカ製は反動が強く連射が不向きで日本人には到底扱えない。他方、ソ連製なら威力こそ劣るが扱い易く連射も容易だという。
こういったソ連製兵器の長所をにやけ顔で話す郵便防衛庁長官の胸には共産党バッジが紅く輝いていたのだから、日本政府とアメリカ政府は仰天した。さらには、いくつかの車両や装備については試験購入して既に納入済みであったから、それはもう驚天動地である。
共産主義に対する防波堤であったはずの日本の、唯一の武装組織が何時の間にか赤化してしまっていたのだ。
これには日本政府も大慌てで郵政省と郵便防衛庁においてレッドパージ、共産主義者の粛清を行い、本省庁舎については近年中に霞ヶ関に移転される事が決定された。
そして残った問題は更新予定であった装備群の数々である。
ヘリコプターに関してはアメリカにも種類が数多あるので、日本の国情に適合する機種もあるだろうと。そして結果的にそれは見つかってシコルスキー社のS-58とS-64、アメリカ軍ではCH-34とCH-54の名で運用されている輸送ヘリコプターに決定された。
逆に言えば、ヘリコプターだけが順当に決まったとも言えたのだが、その他の装備についての話はそれぞれ次に詳しく記しておこう。