遣ソマリア独立統合郵便防衛部~ホワイトハウス狂騒曲~
さて、1993年9月のアメリカ合衆国大統領は誰?
「ク、クリン……クリリン?」
なろうは実在の存命人物を実名で登場させちゃいけないのですが、つまりは今年2016年のアメリカ大統領選挙の某候補の夫です。
9月21日、JST21時00分、EAT15時00分、EDT10時00分。
アメリカ合衆国、ワシントンD.C.、ホワイトハウス・シチュエーションルーム。
「このクソ大統領がァ!!」
その拳は、ハワード海軍長官が振り抜いた拳は見事にクリリン大統領の左こめかみを強打、大統領の身体をソファーから弾き飛ばした。
「俺はなあ!!貴様が大統領執務室でセックスフレンドとナニをしようが知ったこっちゃねえ!!」
「だけどなぁ、その間に俺ン所の空母が2隻も沈められるたァどういう事だ!?ァあ!!答えてみろよ!?」
その人、クリリン大統領の知る人ぞ知る交際遍歴、というか女癖はあまりにも……酷かった。
例えば今朝、インディペンデンスとキティホークが沈んだまさにその時、彼は大統領執務室の隣の書斎でホワイトハウス実習生の女性と“不適切な行為”の真っ最中だったとか。
「貴様が一つ命令を出していれば、たった一つの命令さえ出していれば潜水艦で大泊を沈められた!インディペンデンスもキティホークも沈まずに済んだ!!4000人の海軍兵も死なずに済んだんだぞ!!!」
「それが、それが、それがァ!!貴様のせいでェ!!!」
その海軍人生の多くを潜水艦勤務で過ごしてきたハワード海軍長官にとって、空母2隻が屠られようとしていた時に、それを救い得たはずの潜水艦を動かせなかった事は何よりも屈辱だった。
いや、動かすだけならば彼の独断でも出来たのだ。それが核戦争の引金になったとしても。
なにしろペルシャ湾にはかつて冷戦を争ったソ連の残滓、ロシア海軍太平洋艦隊も展開しているのだ。そんな海域でアメリカ海軍の潜水艦を戦闘状態に移行させたならば、それがロシアを刺激しないはずが無いのだから。
だから、ペルシャ湾でアメリカ海軍の潜水艦を安全に動かすには政治的に高度な調整が必要だった。例えば、アメリカ合衆国大統領とロシア連邦大統領とを結ぶホットラインを通じた交渉であるとか。
しかし、そんな時にクリリン大統領がしていたのは愛人との肉体的交渉である。
そしてもう一度、ハワード海軍長官は拳を振り上げ、シチュエーションルームの床に倒れこんでいるクソへと振り下ろそうとした。
だが、その拳は止められた。
「ハワード海軍長官、もう良いだろう。大統領の顔をいくら殴ってもどうにもならん」
「サ、サイパン国防長官!、しかし」
「いいかい?下半身で動く輩に一番効くのは、やはり下半身なのだよ」
呆気なかった。クリリン大統領の股座はサイパン国防長官によって躊躇なく踏み潰された。
「おや、大統領?発作でも起こしましたかな?情事も程々にしないとお身体に障りますよ。誰か、大統領は執務に耐えられんようだ。医務室に運んでおけ」
そうして、ピクピクと痙攣を起こしながら引き摺られていくクリリン大統領を、誰もが軽蔑の目で見送った。
「はぁ……、今もなおソマリアでアメリカ軍兵士の命が失われているというのに、まったく何という事をやってくれたのです」
ようやく、ここで初めて口を開いたのはゴーン副大統領だ。
「副大統領、今更それを言う貴方も相当ですよ」
「まったくです。そもそも大統領執務室のドアの鍵をシークレットサービスから奪った拳銃でブチ抜いたのは―――」
「オホンッ!……さて、知っての通り状況は深刻だ。ほんの数時間前まで同盟国も同然だった日本が、その日本の郵便防衛庁がアメリカに宣戦布告。それとほぼ同時刻にペルシャ湾で空母2隻と乗員4000名、ソマリアで陸軍兵500名を屠った。まさに深刻極まりない」
「さらに付け加えるならば、第五艦隊は日本海上郵便防衛部の第三郵便護衛艦隊に全くと言って良いほど被害を与えられませんでした」
「ソマリアのモガディシュでも同様に、一方的に屠られています。虎の子のM1戦車がキャンプから出撃する間も無く艦砲射撃で撃破されたのが致命的でした。先程入った情報によればM1戦車の残存はたった2両との事です」
たった2両。しかしそれでも、8インチ艦砲などという陸上砲とは規格外の砲に狙われた戦車が2両も生き残ったのは奇跡に近かった。それも現場の乗員が機転を利かせ、8インチ砲弾の巨大な着弾孔を戦車壕代わりに車体を突っ込ませたのが功を奏したのだった。
しかし、その話で最も重要な要素は戦車の生存についてでは無かった。
「だが、戦車がたった2両生き残った所で大戦型重巡相手に何か出来る訳でもなぁ。……待て、モガディシュのキャンプは艦砲射撃を食らったのだろう?なのに通信は生きてるのか?」
「まさか、衛星通信アンテナはそんな頑強じゃ……ありませんね」
上がってくるはずのない情報の出所について探りを入れてみれば、それと共に更なる混沌が姿を現した。
「何?モガディシュ空港の部隊は無傷!?攻撃すらされていない!?」
「国連の命令で遣ソマリア独立統合郵便防衛部が戦闘停止!?いったいどういう事だ、遣ソマリア独立統合郵便防衛部は国連の統制下にあるのか!?」
そんな中、アメリカ政府首脳を更なる混乱に落とし込む事になる報が舞い込んだ。
「はぁ!?在日アメリカ軍が!?」
「在日アメリカ軍が攻撃されていない!?」
日本郵便防衛庁「そりゃ便宜上アメリカに宣戦布告こそしましたけど、郵便の敵は郵便ポストを撃ったソマリアのアメリカ陸軍。在日アメリカ軍とは何ら関係無いですから」
「……第五艦隊のインディペンデンスとキティホーク?あの2隻は空母ですからね。もし艦載機をソマリアまで飛ばされたら航空戦力に乏しい遣ソマリア独立統合郵便防衛部は敵討ち半ばで倒れる恐れすらありました。ですからペルシャ湾にいた空母3隻の内、2隻は沈めておく必要があったのです」
「結局は遣ソマリア独立統合郵便防衛部の指揮権を持つ国連から停戦指示があったのでアメリカ軍キャンプ掃討に移れなかったのですけど」
第五艦隊「俺達それじゃ完全にとばっちりじゃねぇか!!」




