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遣ソマリア独立統合郵便防衛部~みなさん、唐突ですが、私は、郵便が好きです~

 過日の、1993年9月18日に起こった事件のあらましはこうだ。


 アメリカ軍がSNAのアイディード派の部下4名の抹殺を企図し、もちろんUNOSOM IIからの了承を得ずに策定、実行された作戦で、その実は、幹部の乗る車を地上部隊で待ち伏せしてほぼ同時に吹っ飛ばすという単純明快なモノだった。


 だが、その作戦はうまく行かなかった。


 地上部隊の待ち伏せによる集中射撃、それを4地点でほぼ同時に行い、即時撤収。

 そんな単純な作戦が破綻したのは余りにも早かった。


 襲撃地点に向かうべく地上を走っていたとあるレンジャー小隊が渋滞に巻き込まれたのだ。

 その渋滞の原因は、マレーシア軍のパトロール部隊が走らせていた六二式郵便戦車が、操縦ミスによって現地住民の車を踏み潰してトラブルになってしまった事だというが、そんな事よりも作戦の遅延が危惧され、そして遅延してしまった。


 さらに、襲撃地点に辿り着いたレンジャー小隊にも不幸が襲った。

 偶々付近を通りかかったSNAの民兵らに見つかってしまったのだ。しかも民兵らが乗っていたテクニカルに載せられていたはずの機関銃は、先日パキスタン軍に見つかって没収されていたために積まれておらず、この為にレンジャー隊員らはその車がSNAの民兵のものだと、自身らが見付かった事に気付けなかった。


 こうして、アメリカ軍の作戦は遅延し、そしてアメリカ軍の知らぬ内にSNAはアメリカ軍の行動を察知し警戒を強めていった。


 14時33分。


 予定から13分も遅れながら、ようやく全てのレンジャー小隊が襲撃地点に到着。

 まだターゲットは襲撃地点に到達しておらず、各部隊指揮官らは一先ず安堵した。それが重大な思い違いであったのに、まだ気付いていなかったからだ。


 14時45分。


 ターゲットの乗る車が襲撃地点に接近中。しかし、その報告を上げたのはたった1個のレンジャー小隊だけだった。

 残りの3個小隊が待ち構える襲撃地点には未だ、ターゲット接近の兆候は見られなかったのだ。


 そして上空で追跡を担当していたOH-6偵察ヘリコプターから、新たな情報が入る。


「ターゲット1とターゲット3がルートを変更、このルートは襲撃地点を通過しない。さらにターゲット2は来た道を引き返している!繰り返す―――」


 ここに来てようやく、アメリカ軍は自身らの行動がSNAに察知されていた事に感づいた。


 だが流石アメリカ軍と言うべきか、対応は早かった。

 予定通りに道を進むターゲット4は所定の計画通りに吹っ飛ばし、来た道を引き返しているターゲット2への襲撃は断念。これで手の空いた2個レンジャー小隊を、残りのルート変更したターゲット1とターゲット3を追撃するレンジャー小隊へそれぞれ援護に向かわせる事にしたのだ。

 同時襲撃と、ターゲット2への襲撃を捨てた代わりではあるが堅実な作戦変更であった。


 14時50分。


 アメリカ軍の行動を察知しえなかったターゲット4が、実のところアイディードとは距離を取っていた為にアメリカ軍の行動を知り得なかった彼は、車と共に蜂の巣となり炎上。

 彼を護衛していた民兵も同じ運命を辿った。


 それと共にモガディシュに響き渡ったアメリカ軍の、M723アサルトライフルから放たれる4.85×49mmNATO弾の特徴的な高い銃声と、M2重機関銃から放たれる12.7×99mmNATO弾の重厚な銃声はターゲット1とターゲット3の耳にも届いた。

 遂にアメリカ軍の本格的な反撃が始まったのだと。そう理解した彼ら2人の行動は対照的だった。


 ターゲット1は自らが乗る車の針路を変更、あちこちのセーフハウスに寄って新たに民兵を護衛の足しにしつつ、自らのアジトに戻っての篭城を企んだ。


 ターゲット3は車から降りて細い路地で身を隠しつつ、部下の民兵には囮として車を逆方向へ走らせ続けさせた。


 15時15分。


 ターゲット1の乗る車とその護衛の車列は運の悪い事に、ターゲット4を屠ったばかりのレンジャー小隊の真正面に躍り出てしまった。

 彼らはそこで激しい銃撃戦と繰り広げ、最初は頭数の多い民兵らが押していたものの、もう一つのレンジャー小隊が彼らの後方に出現して挟み撃ちにされるとたちまちの内に殲滅されていった。

 この戦闘の最中、ターゲット1は頑丈な鋳鉄製の赤い郵便ポストを盾にして、M2重機関銃の12.7mm弾にガリガリと郵便ポストを削られても身を小さくさせて何とか生き長らえていたが、後ろから現れたレンジャー小隊から放たれたM723アサルトライフルの4.85mm弾に呆気なく倒れた。


 しかしターゲット3が乗る車への待ち伏せは成らなかった。

 この車のドライバーに与えられた命令は、とにかく逃げ続けること。彼はその命令に忠実に、セーフハウスに立て篭もる事もせずただひたすらに滅茶苦茶なルートで逃げていた。

 この為にアメリカ軍は空から監視をしているにも関わらず、ルートを予測して地上のレンジャー小隊を先回りさせる事が中々出来なかった。


 15時40分。


 ついにレンジャー小隊がターゲット3の車を視界に納めた。

 既に待ち伏せといえる状況では無かったが、それでもついに追い詰めたのだ。


 レンジャー隊員はハンヴィーの銃座に据えられたM2重機関銃の照準器の先にその車を捕らえ、そして蜂の巣にすべくトリガーを押し込んだ。


 この時の彼ほど、バックミラーの存在を神ほどに感謝した人物はいなかったに違いない。

 自らに向けられた重機関銃の銃口をバックミラーに見たとき、彼は即座に車を諦めて飛び降りる事を選んだ。 


 そして次の瞬間、12.7mmの弾頭が毎秒13発もの勢いで撃ち出され、そして容赦無く無人の車を射抜いていく。

 誰かが飛び降りたのが見えたとはいえ、それが無人であることとの証明とはならないからだ。


 そして無残にも今日3台目となるスクラップとなった車の中に誰も乗っていなかったのをレンジャー隊員が確認して、ようやく彼らはまんまと囮に引っ掛かった事に気付かされたのだった。


 そしてターゲット3は無事にセーフハウスに逃げ込む事に成功し、ターゲット3の車を運転していたドライバーは車から飛び降りた時の傷を身体の彼方此方に生々しく残しながらも、運良くアイディードらSNAの幹部らが会合中だったモガディシュ中央郵便局に逃げ込めたのであった。




 こうして話は9月20日の今に戻る。


 モガディシュ中央郵便局の4階にある食堂。そこに集うのはSNAとUSCなどモガディシュで覇権を争いあう軍閥と、そして遣ソマリア独立統合郵便防衛部の代表者らだ。


 先日のアメリカ軍の襲撃によってSNAは一時的に活動を控え、そして幹部らはモガディシュ中央郵便局3階の貸しオフィスに泊り込んで身を潜めていたが、しかしアメリカ軍に殺された幹部の一人(ターゲット4)が穏健派だった事もあって、彼らはアメリカ軍への怒りでその身をわなわなと震わせていた。


 だが、今日の会合を開いたのは彼らSNAでは無く、遣ソマリア独立統合郵便防衛部だった。


 これまで各軍閥の和平会合を開いていたのはSNAとUSCの穏健派らが主であり、遣ソマリア独立統合郵便防衛部がその役目を担う事はそれまで前例の無い事だった。


 そして、遣ソマリア独立統合郵便防衛部の最高責任者となるモガディシュ中央郵便局の局長、郵政省から派遣されていた彼が壇上に上がり口を開く。


「みなさん、唐突ですが、私は、郵便が好きです」


「お客様が心を込めて一字一字書いたお手紙をお届けして、そのお手紙を受け取ったお客様が見せる笑顔が大好きです」


「だから、私は郵便が大好きです」


「ちょっと、本音を言わせてもらえば、郵便防衛庁はあんまり好きじゃ無い」


「事ある毎に大業な装備や鉄砲を振り回し、汗水や機械油を撒き散らして大事なお客様のお手紙を汚してしまう奴らなんか大嫌いだったね」


「それでも、あらゆる天変地異にも負けず、熊や猪といった恐ろしい害獣にも立ち向かって配達の完遂を目指す彼らの後姿にだけは、尊敬の念を禁じえないんだ」


「そんな話、ここソマリアから遠く離れた東アジアの、更に隅っこにある島国のお話なんて、君達にはよく分からないかもしれない」


「だけどね、私は、郵便が好きなんだ。大好きなんだ。それだけは君達に知ってもらいたい」


「だからね、SNAのアイディードさんがお手紙を出してくれた時、私は本当に嬉しかったんだ。アイディードさん、本当にありがとう」


「そして他の皆さんも、お手紙は出してくれてないけど、いつもこの食堂を利用してモガディシュ中央郵便局を賑やかにしてくれてありがとう」


「ほんとは私、この国に行きたくなかった。ソマリアは内戦中でとてもとても恐ろしい国だと聞いていたし、正直言って、私はこの国に行きたくなかった」


「でも違った。皆さんは、とても行儀が良い人たちで、恐ろしい人たちじゃなくて、実はソマリアってそんなに悪い国じゃないあな、って思ったんだ」


「そう、ソマリアは良い国だと思ったんだ」


「……でも、アメリカはそう思わなかったみたいだった」


「先日、アメリカ軍がSNAへ仕掛けた攻撃で沢山の人たちが亡くなりました」


「彼らは、もしかしたら彼らは、いつか内戦の終わったソマリアで手紙を出して、手紙を受け取れるはずだったのだと思うと、私は凄く悲しい気持ちで一杯になります」


「アメリカ軍は、そんな彼らを容赦なく殺しました」


「戦場となった通りにポツンと立っていた郵便ポストに身を隠していた一人も、確かにSNAの幹部でした。アイディードさんと一緒にアメリカ軍を攻撃していた一人だったと聞いています」


「でも彼は、その時彼は、確かに郵便ポストにしがみ付いて、生き長らえようとしていた筈なのです」


「それを、アメリカ軍は彼を、郵便ポストごと滅多撃ちにして殺したのです」


「私は、悲しいです」


「彼は、手紙を出す為に郵便ポストへしがみ付いた訳では無いのでしょう」


「ですが、彼は、確かに郵便ポストを頼って、最後の頼みとして、そして殺されたのです」


「っそれが、私には、とても悲しい」


「だから、今、私は、アメリカ軍を、憎んでいます。とても、とても、憎んでいます」


「誰かを殺す為に、郵便ポストごと銃で撃ったアメリカ軍が、憎いです」


「だから、私は、彼ら郵便防衛庁の郵便防衛部員らに、アメリカ軍への攻撃を指示しました」


「郵便防衛庁は、郵便を、郵便インフラを、郵便ポストを守るべく存在している武装組織です」


「だから私は、郵便ポストを撃ったアメリカ軍への報復を、指示しました」


「報復は明日から開始される予定です」


「それが何時まで続くかは分かりません」


「その間、皆さんにお願いしたい事はただ一つ、たった一つだけです」




「私たちの敵、アメリカ軍は、私たちで討ちます。その間、皆さんには、一切、手出ししないで頂きたい」


奴ら(アメリカ軍)は、私たちが討つのです」

SNA&USC&etc(((アメリカ軍、死んだな……)))




やめて!郵便護衛重巡洋艦仲泊の艦砲射撃で、米軍キャンプを焼き払われたら、モガディシュ中央郵便局への増援部隊まで潰滅しちゃう!


お願い、見捨てないでパキスタン軍!あんたらに今見捨てられたら、レンジャー中隊やデルタフォースはどこに帰還すればいいの?


弾はまだ残ってる。ここを耐えれば、日本郵便防衛庁(JPDA)に勝てるんだから!


次回「アメリカ軍 死す」。オープンファイヤ!




……遊○王ネタ入れるタイミング間違えた&少佐ネタにしようと思ったけど諦めた。

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