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日本郵便防衛庁~明らかになった世界第3位の軍事力~

 1991年12月25日。


 ソビエト連邦が崩壊。


 これに代わって現れたロシア連邦及び連邦構成国は共産主義や社会主義からの脱却を志向し、自由主義の国への第一歩を踏み出した。


 これに伴い東西冷戦、“資本・自由主義陣営”対“共産・社会主義陣営”という対立構造も氷解。


 資本・自由主義陣営の盟主であるアメリカ合衆国も世界情勢に対して一息付ける余裕が出来たのであった。


 その為、アメリカ軍は世界各地の同盟国や、“同盟に準ずる関係を持つ国”に駐留させていた部隊を再編すべく、各国の軍事力を改めて精査する事にした。


 だが、“同盟に準ずる関係を持つ国”と文書に記してみて、彼らは少しばかり違和感を覚えた。


「はて、こんなまどろっこしい関係の国があっただろうか?」


 そして調べてみると、その国が“日本”だと分かり、その関係の理由も判明した。


「ああ、そういえば日本は第二次世界大戦の後に再軍備が頓挫して、その回避策として郵政省の下に軍事組織を創設してたな。国家の軍隊じゃなくて郵便の軍隊じゃ、国対国の同盟なんか意義も無しだよな」


「郵便の軍隊なんてチンケな規模じゃ、在日米軍も膨れる訳だ。といっても最近は海上部隊が中東のシーレーン防衛に参画したりと規模も拡大してるし、予算だけはあるのかF-14やらイージス艦も配備してて合衆国(我が国)との演習もまずまずの成績と聞く。となれば在日米軍をいくらか縮小しても良いだろう。どれどれ、日本郵便防衛庁の規模はっと―――」


 これが発端だった。

 日本郵便防衛庁の規模が世界に知れ渡る発端となったのだ。


「ね、年間予算が750億ドル?!な、なんだコレは?!合衆国の軍事予算の1/4に届く額を、日本は郵便防衛に使ってるのか!?一体何にどうやって!?」


 そして詳細を調べてみれば、日本郵便防衛庁は以下の通り膨大な戦力を抱える世界第3位の堂々たる軍事組織となっていたのである。




■陸上郵便防衛部


●総兵力

 ・常備部員―350,000人

 ・予備部員―21,000人

(基礎的な軍事訓練を完了した、有事の際に召集される郵政省職員)


●装甲車両

 ・六二式郵便戦車―2,200両

 ・六六式郵便戦車―7,000両

(六二式の後継車両。106mm無反動砲が2門を、ENTAC対戦車ミサイル(アメリカ軍制式名MGM-32A)が2門に換装)

 ・七一式郵便戦車―18,700両

(六二式と六六式の後継車両。対戦車兵装をTOW対戦車ミサイル(アメリカ軍制式名BGM-71)が2門に換装)


 ・六五式郵便自走砲―3,200両

(六二式の車体に105mm榴弾砲M101を搭載した自走砲。郵便物積載不可)

 ・六六式郵便対空戦車―5,500両

(六二式の車体にエリコンKD35mm機関砲が1門と対空レーダーを搭載する砲塔を備えた対空戦車)

 ・七一式郵便対空戦車―2,900両

(六二式の車体にMIM-72短距離地対空ミサイルを2発懸架する砲塔を搭載した対空戦車)


 ・六四式工作車―5,200両

(六二式の車体にクレーンや排土板など工作機材を搭載した工作車両。郵便物積載不可)

 ・七一式通信指揮車―100両

(六二式の車体に無線機や簡易的な司令部設備を設置した車両。郵便物積載不可)

 ・七四式移動郵便局―300両

(六二式の車体に簡易的な郵便局設備を設置した車両)


 なんと総計で45,000両を超える装甲車両を保有しているではないか。

 しかもそれらが全国2万4千を数える郵便局の内1万4千局に分散配備されているというが、北海道だけで4,880両も配備されており、分散配備もここまでくれば何とやらである。そんなにソ連と羆が怖いか。

 さらに全ての車両の車体は六二式郵便戦車とほとんど変わらずそのまま、これは非常時の鉄道輸送に際しての貨車への積み込み性が重視された為であったが、これが量産効果を発揮して車体のみの価格が1800万円にまで下がっているという。


 まあ一応、細々とした点では搭載エンジンの性能向上や排気ガスの清浄化であるとか、重い小包の扱いを容易にするために郵便物積載室床面へローラーコンベヤを設けるなどと、目に見えない箇所で多くの改良もあるにはあるのだが、ここでは省略されている。


 そしてこの六二式郵便戦車、アメリカ海兵隊で採用された派生型であるLAV-106とその改良型が存在するのであるが、これらがなんとベトナム戦争以来よく活躍して現在でも親しまれているという。

 アメリカ海兵隊員いわく、元は郵便物積載室であった兵員室の抗甚性がべらぼうに高いのだとか。

 それもその筈、地雷等の真下からのダメージは車体下側のウォータージェット装置が吸収し、側面からの被弾によるダメージは車外の箱型中空装甲と車内両脇のエンジン、さらにエンジンルームと郵便物積載室を遮る防火壁が阻むのである。

 これが為に戦車の次に信頼できる車といえばLAV-106(六二式郵便戦車)などとまで謳われる始末、兵士を戦場まで安全に配達する事に定評のある装甲車としての地位を確立したのであった。


●航空機

 ・AH-1S攻撃ヘリコプター―98機

 ・UH-1汎用ヘリコプター―152機

 ・UH-60汎用ヘリコプター―68機

 ・CH-47輸送ヘリコプター―60機

 ・CH-54輸送ヘリコプター―44機


 航空機に関しては、まあ予算相応なのだろう。

 しかし、運用実績を見るとかなりの頻度で“航空速達”なる郵政省の速達郵便サービスで輸送ヘリコプターを使ってやがる。

 たった50ドルの追加料金さえ払えばハガキ1枚でもヘリを飛ばすなんてどうなってるんだ。




■海上郵便防衛部


●総兵力

 ・常備部員―51,000人

 ・予備部員―1200人

 ・艦隊数―6個


●主力艦艇

 ・オレゴン・シティ級重巡洋艦(基準排水量14500t)―1隻(ロチェスター)

 ・寺泊型郵便護衛重巡洋艦(同14800t)―4隻(寺泊、大泊、仲泊、京泊)

 ・直江津型郵便護衛イージス重巡洋艦(同16200t)―1隻(直江津)


 ・柏崎型郵便護衛軽巡洋艦(同9600t)―8隻(柏崎、犬吠埼、根田内崎、楯崎、鞍崎、羽衣崎、荒砥崎、端崎)


 ・佐渡島型海上郵便局艦(同34,000t)―1隻(佐渡島)


 ・ギアリング級駆逐艦(同2600t)―2隻(チャールズ・R・ウェア、フロイド・B・パークス)

 ・雪椿型郵便護衛駆逐艦(同3200t)―26隻(雪椿、木犀、銀杏、大山伽羅木、楠、海紅豆、杉、黒松、山桃、花の木、オリーブ、檜、桜桃、赤松、貴、マキ、琉球松、躑躅、蝦夷松、欅、北山杉、豊後梅、白樺、フェニックス、櫟、姥目樫)


●基本艦隊構成

 ・重巡洋艦―1隻(艦隊旗艦:オレゴン・シティ級、寺泊型、直江津型)

 ・軽巡洋艦―1~2隻(艦隊予備旗艦:柏崎型)

 ・海上郵便局艦―0~1隻(佐渡島型)

 ・駆逐艦―4~5隻(ギアリング級、雪椿型)


 主力艦艇が総トン数28万9100トン。

 さらに建造中の直江津型と佐渡島型の同型艦と、老朽化しているギアリング級と雪椿型の後継艦によって8個艦隊にまで増備する計画があるというが、現状6個艦隊の内、日本本土には第二、第五、第六の3個艦隊しか居らず、残りの3個艦隊が全て中東に派遣されているというのは本土防衛をおざなりにし過ぎてるのでは無いのだろうか。

 せめて、本土艦隊の配備が一段落するまで中東海域は2個艦隊でやりくりするとか……、いや、最初の第一郵便護衛艦隊からいきなり中東に配備した日本郵便防衛庁には野暮な話だったか。


 それにしても、どの艦も設計が第二次世界大戦染みているというか、被弾前提の砲填兵器によるインファイト志向が強すぎだろう。

 しかもなんで全ての戦闘艦の()()速力が35ノットなんだ。それってつまり本気出せば40ノット出るって事で、そこまでして砲戦がやりたいのか。


 それと雪椿型駆逐艦の“オリーブ”と“フェニックス”とやら、どうしてこんな日本らしくない艦名になった?……何、抽選のくじ引きで香川県と宮崎県が選ばれた?


●航空機

 ・RF-14B―12機

 ・E-2―6機

 ・C-2―12機

 ・SH-3―48機

 ・SH-60―30機


 “RF-14B”?あの馬鹿高いF-14が……“偵察(R)”?

 日本郵便防衛庁(アイツら)、あの超高級戦闘機を偵察機にしやがった!いったい何考えてるんだ……。


■航空郵便防衛部


●総兵力

 ・常備部員―66,000人

 ・予備部員―600人


●航空機

 ・F-104S―36機

 ・F-14A/B―204機

 ・RF-14B―24機

 ・EF-1A/B―280機


 ・E-2―28機

 ・E-3―12機


 ・C-130―24機

 ・YS-11―52機

 ・US-1―24機


 そして航空郵便防衛部、さすが“ハイハイ・ミックス”と揶揄され、アメリカ空軍よりも予算が恵まれているとさえ云われるだけあるな。

 まさかF-14をライセンス生産して、さらにF-14より高い機体と平行配備する国が出るとは思わなんだ。


 EF-1(120億円のチタン塊)は世界最速戦闘機の座に君臨、NASAが実験機として買ったほどの機体だもんな。

 我らが合衆国の空軍は金額を見て膝から崩れ落ちたし、そもそも悲しい事にアメリカにあれだけのチタンや耐熱合金を戦闘機に仕上げて量産できるような技術は無いのだ。

 しかもマッハ3.5で飛行中のEF-1からAIM-54(フェニックス)を発射したら200km先まで飛んでいったとか、AIM-54のカタログスペックでの射程は150kmだぞオイ。


 それにベレンコ中尉亡命事件以来、早期警戒機の導入にも熱心と来た。ホントに金持ちは羨ましい。


 おや?このYS-11とかいうMade in Japanの旅客機、やたら保有数が多いな。どういう……って殆ど輸送機(Cargo)型で日常の普通郵便輸送に従事!?

 郵政省からの業務委託って、軍事組織が一端の営利事業やってやがんのかよ。通りで輸送機が多い訳だ。

 何々、C-130で62式郵便戦車の空挺降下までやった?おいやめろ海兵隊がLAV-106で真似するだろうが。


 しかも最後の最後に乗ってるUS-1とやら、滑走路の無い離島への郵便輸送飛行艇とか言ってるが、どう見ても大戦中の二式大艇(H8K Emily)の近代化再生産機に見えるのは気のせいかな……。




 ともかくだ。

 総括すれば、日本郵便防衛庁は陸上戦力と航空戦力において必要十分どころか、一部に於いては過剰なまでの戦力を保有している。

 こうもなれば在日米軍は空軍の爆撃機部隊と海兵隊を幾らか残して置けば十分。それこそ輸送部門なんか郵便扱いにして郵便防衛庁に委託してしまえば良いじゃないか。

 海軍も日本郵便防衛庁の艦隊整備計画が完了すれば、潜水艦部隊を残してハワイなりフィリピンなりに移せるだろう。


 そうだ。

 ここまで軍事力があるのなら、それこそ国連軍に組み入れて一つ国際協力してもらうのも良いかもしれんな……。

このリストは他の1991年以前の時系列に入る小話の追加に応じて更新する予定です。

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