第二十九話『探索』
草原に不自然さを与える、そんな階段を下りていく。
日光を遮る地下へ行くわけだから明かりが気になったが、壁面にはロウソクのようなオブジェクトが埋め込まれている。
ほのかな明かりではあるが、視界が闇一色に覆われることは無いようだ。
「それなりに明かりがあるんだな。暗かったらそれ用のスキルも用意しなくちゃいけないし、流石に考慮したのか」
「開発者じゃないから分かりませんが、【罠設置】【罠解除】【気配察知】に各種罠の派生スキル。これに加えてそういった便利系スキルまでとっていたらもうそれは探索特化プレイヤーですね。あまりに必要スキルを増やすとダンジョン探索のハードルが上がりますし、確かに難易度調整をしてあるのかもしれません」
モンスターとの戦闘を考えると探索特化というのはパーティー前提のスキル構成だな。
キャラクターを複数作れないこのゲームだから、事前に計画してるか無理やりスキル合成して枠を圧縮させないとできない育成方針だ。
「お、お化け屋敷みたいに真っ暗じゃなくて良かったわね、ミル」
「私は暗いところ、好き。慣れてるから」
後ろを振り返ると表情がすぐれないピノンさんが、前方のミルの肩に触れながら歩いている。
明かりがあるとはいえ薄暗いからな、あっち系が苦手な人は苦手だろう。
「ピノンさんは近未来編はプレイできなさそうだね」
「戦闘相性はいいのですが、性格的には絶対に戦いたくないです……」
こうしてしばらく降りると、階段が終わり広いホールのような場所にでてきた。
……すごいな、これは。
言葉にするのが難しいな。階段を下りると地下に凄い空洞があって、そこに石造りの壁がたくさん並んであって。
なんとか文明の遺跡! って感じがするんだが地表じゃなく地下の空洞にこうやって存在すると神秘性よりも不気味さが上回るな。
そんなことを考えると、スっとリサが前に出て周囲を見渡す。
そうしたかと思えばすぐさま【罠解除】の動作を始めだす。
手の動きが止まり、恐らく解除が成功したのであろうタイミングで話しかける。
「早速罠か。もし失敗して発動するとどうなるんだ?」
「私自身は近頃罠にかかったことがないのですが。爆発してダメージを受けたりモンスターが寄ってきたり、状態異常にかかるガスが噴出したりします」
「リサさんがいないと私達じゃ攻略できないね」
「回復アイテムを大量に消費しながらでいいならいけるでしょうけど、戦闘中に罠にかかればそれどころじゃないですからね」
そう言って前進を開始するリサを、追い抜かないように追尾する。
壁が通路を形成しているかのように絶え間なく配置され、迷路というほどでは無いが見通しは良くない。
壁と壁に挟まれた通路は左右からのモンスター襲撃を警戒する必要が無い反面、空間がどうしても狭くなる。
「モンスター、来ます! "ポイズンモールド"と"カースビートル"を確認。準備を!!」
リサに言われて前方を注視する。
何もいないが……、いや何か動いているのがだんだん見えてきたな。
俺では敵の種類どころか距離さえはっきりとは分からないが、【気配察知】スキルがあれば分かるのか。
確かに飛び道具を使うプレイヤーには相性が良いスキルだし、交戦するか見極める上でも役に立つな。
「射線を、空けて。【ピアッシングアロー】」
ミルの言葉を聞きみんなが近いほうの壁に寄る。
弓を扱う彼女もまた【気配察知】で位置が把握できているのだろう、先制攻撃を仕掛けたのだ。
遠いのではっきりとは分からないが、音で命中したことが窺えるものの、ヤツらの動きは止まっていない。
「ポイズンモールドは物理が効き難いです。カースビートルは単純に硬い、魔法か属性スキルで仕掛けましょう!」
リサとアミが杖を構える。物理が効き難いなら防御に徹する、そう決めて俺は盾を構える。
各人が適した行動をすれば良い。
特化方針でやっているのだ、汎用性は捨ててある。
アタッカーが常に主役である必要性は無い。
「敵対する者を、焼き尽くす力。今ここに!【ファイアブレイズ】!」
「炎よ! ……って過剰火力ですね。キャンセルします」
ミルの弓に反応し襲撃の速度を上げてきた魔物達であったが、特化されたアミの炎魔法で焼かれ消滅する。
恐らく土属性なのだろう、カビの塊とでかくて不気味なカブトムシだ、火を着けられればひとたまりもない。
「流石に特化してあるだけあって威力がすごいですね」
「属性相性も良いみたい。久しぶりに活躍できそう」
「アプトス山脈は火炎じゃ効果でにくいですからね。ここでは思う存分に力を奮ってください。では進みます」
杖をしまって進軍再開。
確かにこれくらいの敵なら三人でもいける場所だな。
矢の一撃が微妙だったミルが残念そうな顔をしている。
「様子見の一撃。二の矢、撃つ間も無し。むー」
まあ仕方ないことだ。俺も盾を構えるだけで終わっちまったからな。
でも例え全ての戦闘で活躍できるわけじゃなかったとしても、詠唱不必要の射撃が行える後衛がいるのは心強い。
アイカさんとのパーティーでそれは分かっていることだ。
「遠くのターゲットを先制攻撃したり、攻撃を素早く止めることができるのは遠距離攻撃ができるミルだけができる仕事だ。俺にはできないことだから頼りにしてるよ」
「ラージウッド……。ありがとう。頑張る」
イェリコほど幼くは無いが、頭をぽんぽんしたくなる聞き分けの良い女の子だ。
ピノンさんがミルを大事にする気持ちが分かってしまうくらい、保護欲を掻き立てる性格と容姿。
こんな子を攻撃に晒させるのは気分的にも絵的にも嫌だから頑張らねえとな。
しばらく進むと少しだけ開けた場所に出る。
リサが説明を加えたいということもあって、少し休憩を取る。
そろそろ警戒のレベルを上げるべきだと俺も判断したので、各種インセンスを焚き始める。
「……香りの付いたステータス上昇アイテムですか。変わった趣味ですね。意外です」
「よく言われるよ。どうだい? この精神を落ち着かせるフランキンセンスのようなかお――」
「リアルじゃ引きますけど、ここはゲームですからね。有用な物は取り入れる先輩の姿勢、私は好きですよ」「り……なんでもない」
くそっ、アミやピノンさん、ミルは理解派だったのにリサは否定派か!
「それでは話を始めますね。この先を見ると分かるように通路が左右に分岐しています。右は行き止まりですが隠し扉があって、左はその扉を開けるスイッチがあります。一旦全員で右に行って罠を解除、その後に私とアミ先輩で左通路に向かいスイッチを押して扉を開けます」
「全員でまずスイッチを押しに行けばいいんじゃないのか?」
「スイッチは押した状態を維持しないと扉がしまるのです。隠し扉を進んだ先にはその扉を開けるスイッチがまた設置してありますから、三名にはそちらをお願いします」
「確かにこりゃソロお断りな仕様だ。了解した」
進行予定が決まり、まずは罠を解除しつつ全員で右通路の行き止まりへ向かう。
確かにリサのいうように行き止まりだが扉は見当たらない。彼女は見えるそうだが。
リサは周囲の罠の解除を完了し、アミを連れて俺たちから離れる。
あっちは二人だが属性相性が良く高ダメージを叩きだせるアミと探索に慣れたリサだ、大丈夫だろう。
モンスターの姿が見えないし、ミルも気配を察知しないということなのでスイッチが押されるまでは待ちの時間になる。
この際だ、気になっていたことを話しておこう。
「悪いな。リサは悪いやつじゃないんだが、割かし本気でゲームをやってるみたいだから二人には合わなかったかもしれない。ソロプレイヤーでもあるし、集団という雰囲気が苦手なのかな」
「いえいえ、お気になさらず。いれてもらえただけで私達は良いのです」
「ピノン姉さんと同じ。この世界を見て歩けるだけで、私は満足。それにここ、リサがいないとこれなかった」
「そっか。急な募集に応えてくれてありがとな。自分はそれなりにガチでやってるけど、やっぱりみんなでわいわいやるのが俺は好きなんだ」
「ふふ、仲間想いのラージウッドさんらしいですね」
仲間想い、か。
そうだな、やっぱりゲームが楽しいのは突き詰めると仲間がいるからだ。
ソロプレイに価値が無いってわけじゃないが、俺はたとえ効率が下がっても色んな人とプレイしたいと思う。
レアモンスターを狩るという目標こそあるが、別にそれは一時的な話であって強さにこだわっていないプレイヤーとだって仲良くしたい。
確かに志を同じくした仲間同士で集まって、目標に向かって進んでいくのはめちゃくちゃ燃えるし、かけがえのない時間だった。
ギルドを作ってカイや仲間たちと暴れた日々はそのゲームを止めた今でも俺の宝物。
だけどRC3では色々な人と触れ合っていきたいんだ。
「そういえばどうしてリサさんは仕掛けの存在が分かったんでしょうね」
「ん? 関係するスキルレベルが高いからじゃないのか?」
「左通路のスイッチやここの隠し扉の有無はソロでも分かるでしょう。でも一人でしたらこの先のもう一つのスイッチについて分からないはずですよね?」
確かにそうだ。だれかが左通路のスイッチを押したままにしなければ中には入れない。
入れないのに隠し扉の先にスイッチがあるなんて分かるはずがない。
ここに来た時はソロじゃなかったのか?
「扉が開きました」
「お、あっちもスムーズにいったんだな。よし、行くぞ」
まあリサも協力者を連れて行ったりすることくらいあるだろう。今回の俺たちのように。
雑念を払って扉を進むと台座らしきものがあり、その上には確かにスイッチが存在していた。
そして情報通り、扉は時間の経過とともに閉まり始める。
――tell リザラーザ
「リサ、スイッチを確認したぞ」
「分かりました。すぐそちらへ向かいますので押しといてくださいね」
通話を終え、スイッチを押すと再び隠し扉が開き始める。
ソロプレイヤー終了の仕掛けだが、見方を変えれば探索系スキルを取得したプレイヤーをパーティーに加えるご褒美ともいえる。
そんなことを考えていると、やがて足音が聞こえてくる。
「無事合流ですね。では先にいきましょう」
「分かった。何か注意点はあるか?」
「特別なことはありません。この先は距離が短い通路に小部屋があるだけです。そこに宝箱があって、ついでにそれを守るボスがいます」
「おいおい、もうボスかよ! 狩られてる可能性は無いのか?」
「別のダンジョンにも似たような仕掛けがありました。仕様が同じなら大丈夫です。隠し扉の宝箱を取ると隠し部屋とスイッチは一定期間経過で消滅します。再び別の場所に仕掛けが復活しますけど、それには時間を要するみたいです」
ダンジョンの隅々まで歩き回る、そういう探索じゃなく狙ったお宝をすかさず回収するためのパーティーだったのか。
ボスも話を聞くとフィールドマップのボスっていうよりは宝の番人って感じだな。
「次の曲がり角の先にボスがいます。“グリーンガーディアン”、土属性のボスで体力が自然回復します。威力が高い先輩たちのスキルで一気に畳み掛けましょう」
「待った。俺から言っておきたいことがある」
「ダイキ先輩、何でしょうか? 私が罠を張って、火炎魔法と剣スキルをお見舞いすればすぐ終わると思うので、作戦を練る必要は特に無いですよ」
リサが何事かと俺を見据える。
戦力と準備は万端でこれ以上何か必要なことでもあるのか、そんな感じだ。
言葉を出すか正直迷っていたが、彼女の様子から察するにこのままではダメだと確信する。
「リサがソロでも挑むことができた相手だ、たしかにそれで倒せるかもしれない。でも今の俺たちはパーティーでここに来てるんだ。効率や最適解を求めて集まったんじゃない。それぞれの意思でここに集まったんだよ。それを分かってくれないなら、例え契約違反だと憎まれようとも、俺は降りる」
「ちょっと待ってください。どういう意味ですか? 各人ができることをやって敵を倒す、それだけじゃないですか」
「じゃあなんでピノンさんやミルに指示を出さないんだ? 彼女たちだって戦えるぞ」
「それは……!」
リサはパーティーを組み始めて、もっと言えばピノンさん達と青い森で合流してから雰囲気が変わった。
始めの方は慣れてないだけかと思っていたが、彼女は人見知りもあまりないようだしその線は俺の中で消えていたのだ。
冗談を言わなくなったし、何より笑うことが無くなったのだから楽しさが既に存在していないのだろう。
そして二手に分かれるときの人選と今回の言動で、リサが二人に思うところがあるということがはっきり分かる。
「彼女達は俺の急な募集に応えてくれた。普通のプレイじゃ発見できない、ここにこれるだけで満足してるって言ってくれたんだ。その気持ちをスキルの有用性とか能力で選定して踏みにじりたくないんだ」
「ラージウッドさん、私たちは別にいいんです。満足してますし、お邪魔なのでしたら帰りますから」
「いいんだ、言わせてくれ。最初は俺の気のせいかと思っていたが、思い返すとやっぱり五人になって以降、リサの雰囲気から『ゲームをする楽しさ』が感じられなくなってきたんだ。ガチじゃないプレイヤーに何か思うところがあるのかもしれないが、俺は仲間を大切にできない人間と一緒にゲームをしたくはない」
ゲームにまで怒りの感情をぶちまけたくはない。だから怒りの感情は抑えて話しているつもりだが、流石に雰囲気は伝わる。
だれともニコニコして接する必要なんてない。それはリアルだろうがゲームだろうがそうだ。
もしカイが本心から外見の良さを自慢してくるような奴だったら今のような関係は無かった。
でも付き合っていくうちに、俺には無いあいつなりの考えと、あいつの中にある好きな部分を俺は見つける。
ちゃんと接していかないと分からないことはたくさんあるんだよ。
それを始めから否定するんじゃ関係性の芽は絶対に生まれない。
「ダイキ、ちょっと言いすぎじゃ……」
「アミ先輩大丈夫です。ダイキ先輩、結構私のこと、見てるんですね」
「いや、鈍い俺でもわかるくらい、敵意を振りまいてるんだと思うぞ。俺でこれなんだから、二人がどう感じるか考えて欲しいんだ」
「そうですよね。やっぱり伝わっちゃいますよね」
リサの表情に怒りの色は無く、ただ真面目な顔をして問題の渦中にある二人の方へ向き直る。
伝わってくれたはずだ。これで逆ギレして喧嘩にでもなれば、俺は今後彼女とは行動できない。
「お二人は悪くないのに、嫌な気分にさせてしまってごめんなさい」
「だ、大丈夫ですよ、気にしてませんし。リサさんみたいに真剣にプレイしてる人の気持ちも分かるつもりですから」
「本当にごめんなさい!!」
何度も謝る彼女、以前の強気な態度から一転して泣きそうで、か弱い女の子の表情に変わる。
少し悪いことしたかと思ったが、このことが無ければ多分気まずいままになるだろうし、俺もリサとパーティーを組むなんてことは無くなる。
意見のぶつかりあいの結果そうなるのならば仕方無いが、お互いの気持ちが分からないまま縁を切るなんて俺は凄く寂しいと思う。
「言い訳に、なるんですけど。話を聞いて、もらえますか?」
「ああ、聞くさ。幸いモンスターも湧いてこないしな」
少し泣きながら彼女が話し始める。
リサはRC3にハマる以前、俺やカイ同様に別のゲームをプレイしていた。
今のように蓄財を精力的に行い、おいしい狩場の最前列にいくための努力を惜しまなかったそうだ。
全力でプレイする、情報収集やスキル取得の計算に抜かりが無い彼女らしい。
ただそんな彼女があるときに情報掲示板で晒されてしまう。
リサの所属していたギルドはあるボスの出現時間を把握し、それをほぼ占有という形で狩っていた。
あるときリサがメンバーを連れてボスを攻略していたところ、普段見慣れないプレイヤーが現れボスに攻撃を仕掛け始めた。
ボスのドロップは与えたダメージ量で獲得の優先権が決まる。
わざとボスをプレイヤーにけしかけてひき殺す輩がいる中、彼女と仲間たちはそれはしないで純粋にダメージレースに挑んだ。
このまま倒してドロップはリサ達のものになる、勝負とはそういうものなのだからと考えていた。
しかし予測は外れる。
途中からボス攻略に参加していたプレイヤーはボスについての知識がほとんど無く、狩場で狩りをしていたらたまたまボスが湧いたから参加した、その程度のプレイヤーだった。
仲間がボスの接近を止めるための魔法を定期的に展開していたのだが、こともあろうか威力の高いスキルを打ち込むためにそのプレイヤーがボスへ前進、魔法の射線を遮ってしまう。
ボスの近接攻撃を物理的に止めれるメンバーがいなかったので、止む無くリサとメンバーはテレポートを使って戦線を離脱。
結果、乱入したプレイヤーはボスのラッシュによって死亡する。
「ボスでMPKされたと言いふらされたのか」
「……はい。もともと妬まれていたのもあると思うんです。そこそこの確率で高値のアイテムを落とすものですから」
ピノンさんとミルさんは話を黙って聞いている。特にピノンさんは話の途中に何度も頷く動作を見せていた。
優しい人だし、今回のことを怒るというよりも理解しようとしているのだ。
「だけど、MPKなんてギルドの評判を落とす事、絶対しませんから! ボスの占有だって、みんなで協力してちゃんと時間を把握して、作戦や必要装備を揃えて挑んでいるんです。回復アイテムだって消耗するからただおいしい思いをしてるわけじゃないんです。それなのに……!」
「リサさん、落ち着いて。私はボスのこととか良く分からないけど、頑張ってたのにそれは悔しいと思う。やりきれないと思う」
「アミ先輩、ありがとう。でも、もう全部ダメになっちゃったんです。ボスに倒されたプレイヤー、大手のまったりギルドのメンバーだったからうちのギルドにものすごく非難がきちゃって。ギルドマスターはかばってくれたけど、次第にギルド内でも諍いが生じてきたんです」
ギルドといっても考え方や志が全く同じ人間が集まるわけじゃない。
組織でも人望がある人とない人、恩恵に与れる人とそうでない人がでてくる。
そういうもんだと受け入れる人間ばかりだったらギルド運営も楽なのだろうが現実はそう上手くいかない。
「全員じゃないことは分かってます。でも、それでも私はいわゆる『まったり派プレイヤー』を信用できなくなりました。前線に立つこともしないでレアドロップの情報を待つだけの人達。自分達で攻略できなければ延々と愚痴を漏らして。あの場所をうばった人達が今でも憎いです。だからここでは少人数やソロでプレイすることにしてたんです」
「ボスの占有とかギルドのやり方とか、考えることはたくさんあると思う。リサを晒したプレイヤーは間違ってるとも感じる。だけどそれはピノンさんやミルには関係の無いことだ。ギルドを大事に思ってたなら分かるよな?」
「はい。ギルドは人が集まってこそのギルド、ですから。本当にごめんなさい」
分かってくれたみたいで良かった。
俺は説教できるほど偉い人間なんかじゃねえ。だけどしないほうがいい事としたほうがいい事があるってことくらいは分かる。
リサはミル達と心の付き合いをしたうえで存在の否定をしたわけじゃない。
生理的に合わないのならばそれは分かれた方がお互いのためだが、そういうわけじゃないんだ。
話して分かるなら、とことん話してほしい。
「話、分かった。ミルは気にしないよ? リサ、凄くやりたいことをやりきってる感じがする。そういうの好き」
「私もここではまったり派プレイヤーになるのかもしれません。だけれどもいちプレイヤーとして思うのはみんなで楽しむほうが、数多くのプレイヤーにとってもゲームにとっても、素晴らしいことだと私は感じるのです」
まったりという言葉を諦観や自虐の意味を込めて使うプレイヤーも小数ながらいる。
でも二人はそうじゃない、敵意を振りまいてたリサを受け入れてくれる。
「良かったらフレンド登録しましょうよ。私が今後のお役に立てるか分からないですけれど、お話をして楽しむことくらいはできますから」
「ミルもそうしたい。そのほうが楽しいから。登録、しよ?」
「うん、うん。……ありがとう!」
少し恥ずかしそうに、申し訳なさそうに登録のやり取りをしている。
でも登録が終わると、硬かった雰囲気も柔らかくなって年相応の可愛らしい顔になった。
気取らない、素の表情のリサ。
出合って間もない三人だが、無事に関係を持てたようだ。
「時間とっちゃってごめんなさい!」
「いや、いいんだ。それじゃ作戦、立てようか」
「はい! 五人でやれる戦いをやります。必ずボスに勝ちますから!」
心地よい威勢とみなぎる気力。
解散の覚悟もしてたが話をして良かった。
今のリサのほうが絶対に俺は良いと思う。
気持ちよく終わるための結末、それには勝利を手にするしかない。
剣と盾、俺に付き合ってくれている相棒に少しばかりの願いをかける。
「ああ、やろう。絶対に勝つからな!」




