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Ruin & City 3 ―それぞれの世界で―  作者: 夕陽倍施工
第1章:ラージウッド編~楽しむということ
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第二十六話『違い』


「やった、人形がでたぞ!」


 手にあるのは鳥型モンスター【ピッキンの人形】。

 効果は『器用さ』の数値が4上がるという地味なものだ。

 だが考えてみて欲しい。これを装備品の全てのスロットに嵌めればどうなるのかを。

 10個嵌めれば40も数値が上昇。そして1レベル上がるごとに4ポイント、ステータスを伸ばせる。

 つまりレベルアップ10回分の能力強化と言えるのだ!


 ……まあ実際はステータスを伸ばすよりも『炎属性ダメージが5%上昇する』のような倍率アップ効果の方が強い。

 とはいえ目的があってステータスを伸ばすプレイヤーにとっては欲しいアイテムだし、火力が底上げされることは間違いない。

 何体目かは既に覚えていないが、久しぶりの人形ドロップは心が躍る。


「あ、ほんとだね! 素材を採りにきたオマケだけど、嬉しいな」

「ああ。次回の大仕事のための軍資金が整うな。しかしアプトス山脈が金策としてはかなり旨い部類だとは夢にも思わなかったぜ」


 今、俺とアミはアプトス山脈でピッキンやロックエイプを倒しまわっている。

 ファイアドレイク討伐時の報酬を分配するために素材を売り払ってみたところ、思いのほかいい値段がついたのだ。

 アロマ以外の生産スキルについて俺は詳しくないが、ピッキンが落とす素材は火炎属性耐性の装備品になるらしい。

 火炎属性は魔法において高火力という特徴がある。そして竜系のモンスターは火を吐いてくる。

 確かに最も対策しておくべき属性だ。

 ちなみにロックエイプが落とす素材も物理防御が高い防具が作れるということで需要がある。


 ここのモンスターが落とすアイテムはレアドロップですらない素材にもいい値段がつく。

 普通ならそんなおいしい狩場をプレイヤーが放置するはずがない。

 だがピッキンの飛行能力、ロックエイプの高い物理防御、何より二足歩行の人間にとって安定しない足場。

 これらの三要素が絡み、ここは一部の人間しか訪れない過疎の狩場となっているのである。


「攻略法を考えればどうとでもなるんだがな。アミ、頼む」

「わかった。【ファイアシールド】!」


 アミに頼んで火炎の障壁を展開してもらう。

 俺達に狙いを定めたピッキンが空中から炎を吐いてくるも、それを全て火のカーテンが遮ってくれる。

 炎という攻撃の選択肢を潰されたヤツが次にとる行動は、急降下しながらのクチバシによる攻撃だ。


「クエエエエエエェェェ!」

「悪いな、この距離は俺の距離なんだ!」


 【カウンター技能】で攻撃のタイミングを図る能力が上昇。

 この程度のモンスターならば、充分に『点』の攻撃で対処できる。


「【フラッシュストライク】!」


 瞬速の突きと敵の速度が重なる。

 クチバシをぎりぎりでかわしつつ、敵の柔らかい部位に剣が到達、ピッキンは物理防御が高くないので即死だ。


「素材回収っと。スキルレベルも上がってくれたかなあ」


 ラージウッド

 レベル45

 適用スキル

【片手剣技能Lv38】【パワーストライクLv30】

【フラッシュストライクLv28】【ミラージュストライクLv14】

【サークルストライクLv5】【トリニティセイバーLv5】

【グラビティーセイバーLv5】【パワーストライクⅡLv26】

【ストライク・ゼロLv24】【クロスストライクLv13】

        

【盾技能Lv30】【ハードシールドLv27】

【シールドバッシュLv22】【スロウシールドLv8】

【シールドブロウLv5】【シールドチャージLv10】

【ディフェンシブインパクトLv12】


【ステップLv25】【バックステップLv24】

【防御技能Lv24】【採取技能Lv21】

【アロマテラピーLv37】【カウンター技能Lv18】

【連携ボーナスLv20】


 待機スキル

【スピニングセイバー】【サインオブウィンド】

【サインオブファイア】

 スキル取得枠 466/1000


 系統スキルごとにスキルを整列させて見やすくしたものの、改めて文字として目にすると大変だな。

 スキル枠の関係上これを全部レベル50にするわけにはいかないから、そろそろ厳選しないといけない。

 【片手剣技能】、めんどいから剣レベルって呼んでるがこれが5レベルごとに一つ剣スキルを覚えることができる。

 ストライク系(一撃)がレベル20までに覚える剣技でそれ以降はセイバー系(連撃)になるようだ。

 今欲しいのは最高火力だから連撃よりも一撃だな。

 まあ【ストライク・ゼロ】が連続で撃てるようになるなら、連撃スキルとの合成もありだとは思うが……。

 

「アミはスキル、どうしてる? 迷ったりすることあるのか?」

「炎しかないから、楽でいいなって考えてるでしょ?」

「う……いやあそんなことはないぞ! 火炎弾飛ばしたり、障壁だしたり大変だもんな!!」

「視線が定まってないよ? ダイキは嘘をつき通すの、無理だね。浮気ができなさそうなタイプ」


 むむ。アミも結構言うようになってきたな。

 だけどこっちも遠慮しないでモノを言いやすくなるからいい傾向だと思う。

 ただアホキャラ扱いされるのは癪だから気をつけよう。


「剣はさ、剣レベル30を境に一撃の威力を重視するか連続攻撃を重視するかの分岐があるんだ。両方とれなくもないんだが悩ましい」

「難しいよね。炎も火炎弾を飛ばすのと爆発系、範囲系に分かれ始めてきてるのよね。それに属性特徴も絡んでくるから、スキル構築は本当に考えないと」

「属性特徴?」

「私が勝手にそう呼んでるの。魔法は属性ごとに補助をする能力が変わってくるみたいなの。炎は魔力を溜める【魔法チャージ】、詠唱を早くできる【クイックスペル】あたりかな」


 なるほどな。

 片手剣は衝撃波を飛ばせるという特徴があるし、槍は連続攻撃と【アクセラレートスピア】のような加速ができる。

 もしかしたら剣と槍のスキルを合わせて、超速く衝撃波が飛んでいく【アクセラレートストライク】みたいな技が作れるのかもな。

 特化してるからそれはやれないが。


「ときどき想像するの。私の【ファイアボール】とダイキの【パワーストライク】を合成したらどうなるのかなって」

「爆発する火属性の衝撃波か。やばい、楽しそう。……威力とか何も考えなければな」

「スキル枠とステータスの関係で使い物になるか怪しいしね。だから想像だけして、終わりって感じ」


 片手剣にある衝撃波の要素だけ欲しい場合、【パワーストライク】を覚えて合成、消費させちまえばその分の枠が空く。

 ただ【片手剣技能】自体は合成できないスキルだから、その分だけ枠が無駄になっちまう。 


「やっぱ俺達は特化でいこう。何だかんだで汎用は狩場の選択肢が広いが強敵相手だときついしな」

「ボスモンスターを倒すっていう選択肢が削られている、とも言えるもんね」



「そういうことなのよ! さすがにきつくなってきた!」



「ん!?」


 俺達の会話を何かが遮る。

 そう、声が聞こえた。まるで俺達の会話に参加しているような言葉。

 こんな過疎狩場に他プレイヤーとは珍しい。

 だがおかしいな、周囲にそれらしい姿が見えない。

 アミも辺りをきょろきょろと見渡している。


「ここよ、ここ」


 空間のある一塊が歪み、形を作り始める。

 だんだんと人型のシルエットがその姿を現す。


「なんだ、リザラーザさんじゃないか」

「ど、どうも」


 以前、ブラッディファングを討伐した直後に会った女性プレイヤーだ。

 妨害系スキルの取得に特化し、RC3ではお金を得ることを目的としてプレイしているらしい。

 そのためかお金になる狩場やモンスターの情報に詳しい。


「私程度の【ハイディング】を見破れないようじゃダメね。あのお子様はいないのね」

「イェリコのことか。今は一緒に行動してない。まあ俺達はモンスターを集めてドカーンしたりダンジョンで宝箱探したりしてないからな。そっち系のスキルはあまり必要がない」

「あると便利だけどね。ってかソロプレイじゃ必須」

「ソロでここまでってのは凄いな。結局ブラッディファングは倒せたのか?」

「お蔭様でね。もちろん強化されてない、普通のヤツ。結構稼がせてもらっちゃった♪」


 そっか、それはよかった。ギブアンドテイクが成立しているようで何より。

 ソロは戦闘でのリスクが高いが、アイテムの取り分が自分ひとりに全部くるからな。

 出現条件が分かってる彼女はそれで稼いだのだろう、装備品が露店で高値のものばかりだ。


「んでだ、どうしてこんなとこにいるんだ? いくらなんでもここはソロだと辛くないか?」

「フフ。私ね、スキルの数が50前後あるの。そりゃ確かに一つ一つの威力は劣るし枠が無駄になっている時もある。けどスキルは道具、使い方で何でも狩れるわ。この狩場は金銭効率がいいし、トライする価値がある」

「飛んでるピッキンは、どうしてるんですか?」


 リザラーザが取得しているのは短剣系と魔法系のスキルだ。

 妨害特化とはいえ、飛行生物を倒しているのだからアミには気になるだろうな。


「ひ、み、つ……と言いたいところだけど、特別サービス! 飛んでる敵には雷属性魔法が良く当たるのよ。風属性魔法から派生するんだけどね。その中でも威力と状態異常系に特徴が分かれてくるから、マヒを与える魔法を撃ち込むってわけ。落ちた敵は短剣でザックリ、ってね」

「んじゃあロックエイプは? 威力系の魔法が無くて打撃力の低いダガー使ってるときつくないか?」

「【ハイディング】でスルー! するときもあるけどちゃんと狩るよ。罠やら魔法やらで動きとめて、防御力無視のスキル使ったり毒で殺す」


 すげえな……。

 戦闘力って火力や戦術の読み合い以外にもこんな形でも表れるのか。


「ところでなんだけど、どうして私達のところに出てきたんですか?」

「そうだった。なんでストーカーみたいな真似してんだよ」


 意外と話しやすそうな雰囲気の彼女に流されてごまかされていたが、リザラーザは【ハイディング】で俺達の周囲に潜んでいたんだ。

 隠れるってことは普通じゃない、油断できねえぞ。


「フフ。人がしたがらないこと、そこにはチャンスの芽がある。この狩場に目をつけたプレイヤーはどんなのだろって思ったらあなた達だったわけ。どんな狩り方してるのかなってちょっと観察をね」


 もっともらしい話だが、その瞳がただの雑談をしにきてるような気分では無いことを示している。

 快活で、好奇心旺盛で、おいしいエサがあればすぐ飛びついていきそうな、そんな目だ。


「……俺達とまたギブアンドテイクなことをしようとしてるんだろ?」

「話が早くて助かるわ。ってそんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃない! この間も私の情報が無ければ初心者用のフィールドを何時間、何日間もうろつくハメになってたはずよ」

「確かに、情報が無かったらそもそも挑まなかったかもしれないからな」

「でしょでしょ? 当たり前の話だけど、儲け優先で協力者をないがしろにしてたらこの世界は渡っていけないわ。協力者にも相応の利益を! それが数少ない私の信念の内の一つよ」


 自分から信念があまり無いって言っちゃってるぞ。

 まあでも発想が自由で考え方が囚われてないから、妨害や罠特化みたいなスキル構築ができるんだろう。

 しかも相当の力量があるようだし、ある種の才能がこの世界で爆発してるのかもしれん。


「それで、具体的には私達に何を求めてるの?」

「さっき話してたでしょ、私は妨害系には特化してるけど一撃は重くないから小手先が通じない敵は辛いのよ。状態異常が効きにくかったりするヤツね。まあボスとかレアモンスターなんだけどさ。ちょっと手伝って欲しいヤツがいるの」


 そりゃそうだろう。スキルを特化育成して威力を高めている俺達ですらきつい時があったんだ。

 特にファイアドレイク戦では、仲間を守りきることができなかった。

 色々なプレイヤーとパーティーを組んで、経験を積んでおくべきかもしれない。

 少しだけ、過去の戦闘を振り返ってみる。

 

 イェリコからは役割に囚われない戦術、不利な局面でも効果的な一手を選択する集中力の凄さを思い知らされた。

 

 アイカさんとの行動で銃器による射撃の重要性、強力無比の一撃がいかに戦局に影響するのかを体験した。

 

 コーチの特訓では数値外の力、体の使い方、戦闘における意識の有無の重要性を学んだ。


 どのプレイヤーも当然のように意思があって心があって、やりたいことがあって。

 特化、汎用、ガチ、まったり、前衛、後衛。

 それぞれに違いがあるし、そこから感じ取ったことを活かすのは俺次第なんだ。

 組んでみて初めて分かることは多い。


「分かった。仲間とも相談するけどさ、協力するという方向で話を進ませてもらうよ」

「ありがと! そう言ってくれると思ってたのよ。情報は後で渡すから、狩りが終わったら露店通りの噴水に集合ね。こっちはこっちで戦利品を捌かないといけないからさ」

「了解だ。ちょっと今は暴れたい気分だったんだ、乗っかるからにはいい相手だと期待してるぜ」

「フフ、いい返事ね。それじゃ後で!」

 

 疾風のように駆けだしていくリザラーザ。

 【ステップ】じゃなしにあれだけの速度で走れるのは気持ち良さそうだ。

 そしてあれだけの速度でこの山道を移動できるのも、暗に彼女の能力を示している。


 討伐対象を聞いていないが、金銭効率に執心している彼女のことだ。

 回復アイテムを散財してしまうくらい無理な相手を選択してくることは無いだろう。

 何よりカイが探し出した人材。

 出会いは【ハイディング】ばかりで印象は良くないがこれまでの経験からして信頼できる……はず。


「どんなモンスターを狙ってるんだろうね?」

「分からねえな。レアかボスか、どっちかだろう。でもよ」


 人数が増えて戦利品を分配することになってでも狩りたい相手。

 強化されたファイアドレイクとまではいかなくても、ボスモンスターのピッキングよりは強い、それくらいのモンスターだろう。


「何がきても、剣を通し盾で守る。そうあるように頑張っていかなきゃな!」


 できなかったことを悔やむのは止めた。

 それ以上のワクワクと高揚感を、リザラーザの登場は俺に与えてくれたのだから。




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