第十一話『特化と汎用』
深く、心が落ち着くような香り。
樹木をベースにした、お線香に近いけれども不快感の無い、そんな香り。
俺は自作の蘇生アイテムを使用した。
"還魂の香"
樹皮と各種回復ポーションをベースに作成したアイテムで、瀕死状態のプレイヤーをLP1の状態で復活させることができる。
通常、プレイヤーのLPが尽きるとまずは瀕死という状態になる。
瀕死となった後に一定以上の時間の経過で死亡となり、死亡すると最初に呼び出された訓練所へ体が転送される。
このアイテムは瀕死から回復し、死亡を防ぐのでデスペナルティー――一定期間の能力減少を受けずにすむのだ。
このアイテムの効果を受け、ほとんど動かずもはや死体とも見て取れるような射手の体が、ピクンと反応を取り戻し始める。
「ミル、ミル! 大丈夫なの!?」
回復担当のプレイヤー、頭上にピノンと表示されている女性がミルと呼ばれた射手の少女の体を抱きかかえる。
「ピノン姉さん、ちょっと苦しいです……。あれ、ここはまだ、青い森なのですね」
「良かった、ミル。本当に……」
ピノンが目じりに涙を滲ませながら、ミルの短くサラっとした髪を優しく撫でる。
ミルはミルで、細いピノンの腕に優しく触れ返す。
顔が似ていないから実の姉妹ということでは無いのだろうが、互いが互いをとても大事に思っているのは分かる。
「これは現実じゃない、ゲームなんだ。二人とも大げさすぎだろうが。やられても王都に転送される、それだけだ」
ロングソードを持ち、結界魔法を行使していた男がダノン。
俺より若干背が高く、年齢も上に見えるし大学生くらいだろうか。
発言が少し空気を読めていない気がする。
「まあまあ、ダノンさん。とりあえずお礼が先でしょう? ラージウッドさんにクーラさん、それにゼラニウムさん。助けていただきありがとうございました」
フォローを入れるのが、愛嬌のある顔をしている後衛の男性、ケンイチ。
年齢が分かりにくいが、ダノンに対する応対からおそらく彼と同年代付近なのだろう。
「アイテムで蘇生はしたが、LPは1のままだ。早く回復しておいたほうがいい。良かったらこれを使って」
作成した回復アイテムをピノンに渡す。
まだ経験は無いが、瀕死から回復してもLP1の状態では満足に動けないのであろうことが見受けられたので、ピノンがミルに使えばいい。
「ありがとうございます。私もまだMPが回復しておらず、魔法治癒ができないものですから。初級の回復ポーションでも助かります」
そういいながら、彼女はぐったりしているミルにそれを飲ませる。
「……ピノン姉さん、これ、いい香りがする。回復量も多いみたい」
「え、確かにそうね。ラージウッドさん、これは初級ポーションではないのですか?」
「初級ポーションと色が似ているけど違う。"オリガナ水"。生産スキルで作ったアイテムだよ」
【アロマテラピー】によって川辺で採取したオリガナから作ったポーション。
香水のような扱いのアイテムなのだが、飲用することでLP回復の効能もある。
まあ、本来のポーション系アイテムは【薬品作成】スキルで作るものらしく、そちらで作ったアイテムよりは回復性能という点では劣るようだ。
だが店売りのノーマルなポーションよりかは、自作したアイテムの方が質がいいのでいくつか作成しておいた。
「戦闘中に使えればいいんだが、いかんせんさっきみたいな戦闘じゃ敵の注意を惹いといてもらわないと飲んでる暇がないからな。 治癒魔法のアドバンテージを思い知ったよ」
「そういえば、あなた達のパーティーにはピノンさんのような回復担当がいないのですね。それでボスを撃破するなんてすご――」
「俺らが先に取り巻きやら周辺の敵を減らしていたからだ!!」
ケンイチの言葉をダノンが荒々しく遮った。
顔は興奮で赤く、動作に落ち着きが無い。
自分達で勝てなかった相手を、自分達以上に勝てる見込みがない俺達が倒したことに納得がいかないのだろうか。
「あんたなあ……」
「(ダイキ、こここはまかせて)」
得意げな顔をしながら小声でカイが俺に耳打ちする。
「いや、あなた方に事前に環境を整えてもらっていたので、なんとか撃破できましたよ。すでにエントやらトレントの残骸がちらばっていましたし、最初からあの数を相手にするとなると厳しかったでしょう」
「ああ、お前らが必要以上にモンスターに囲まれなかったのはそのせいだ。 俺達がMPや回復アイテムを消耗してまで数を減らした。そもそもお前達はなっちゃいないんだよ。前衛は攻撃力は高いが、盾を持ってるくせに防壁魔法も使えない。だから敵の範囲魔法に被弾する。槍もたまたま枝の攻撃を凌いだからいいが、そもそも魔法とスキルを合成させて遠距離攻撃ができればそんな苦労もする必要が無い」
ダノンの講釈が止まらない。
前衛の俺とカイに対するスキル取得のダメ出しに始まり、終わるかと思えば次には装備品。
おいおいまだ続くのかよ、親友が上手く聞き役になってくれてるが流れはいい方向にいってないぞこれ。
貢献度とかそういうことじゃなくて、俺達がたまたま手助けして、たまたま勝って、それでいいじゃねえか。
そりゃあ確かに俺達が遭遇した時以上のモンスターがいれば、俺はアミという後衛を守ることができなかっただろうし、カイも万全な状態でスキルを撃つことはできない。
「いやあ、ほんとそれ言われちゃうと弱いですね。あはは」
「後衛の地味な彼女もおかしいぞ。なんで回復魔法の類を取得しない? 全MPを消費して、当たるかどうかの賭けの一撃にするということは……」
ギリギリ、と左手に握り締める盾の柄が軋むような音を立てる。
……俺はいよいよ、拳に力を込め始めた。
カイが応対してくれているが、もう我慢の限界に近い。
「この……!」
「はい、これ」
俺が踏み込むより前に、俺達から離れたところにいたはずのアミが前に出た。
その手には青く、そして微かに光る枝が四本並んでいる。
「エントロードのドロップ品【青の枝】。八個獲得したから、半分。これでいいでしょ?」
「あ、ああ。ボスモンスターが落とす素材アイテムは有用だからな。ありがたくもらっていくよ」
「ちょっと、リーダー……」
ケンイチの制止を無視しながら、それがまるで決まっているかのように遠慮も無く戦利品を取っていく。
ニヤケやがって、結局それなのかよ。
プレイスタイルのことで納得いかずに怒っている方が、まだこだわりが感じられてマシだった。
それにしてもアミはドロップ回収を行ってくれていたのか。
「これ以上、こちらから施すべきことは、ないから。失礼します。みんな、行こう?」
「あ、ああ」
「アミちゃん、ダイキ、すみません。……行きましょうか。ではこれにて」
カイが軽く会釈をして後にする。
彼の先ほどの"すみません"は、ダノンがレアアイテムを欲して俺達に突っかかっているということを見抜けなかった点に対してだろう。
正直、心底どうでもいい。
俺達は頑張って、結束して、勝利して、その空気を壊されたことが一番の不愉快だ。
「あの人、私たちを非難するの、これで二回目。絶対に交わることの無い存在」
「え?」
「昨日、ギルドでパーティー募集するときにダイキのスキルを馬鹿にしたうちの一人、だよ」
「なんか見覚えがあったり、似たようなことを言われた気がしたのはあの時に会っていたからなのか」
「なるほど、だからアミが治癒魔法を取得していないことも知っているのですね」
人の顔や名前を覚えるのが得意じゃない俺。
もちろん普段なら明確な非難を受ければ相手の顔なんて嫌でも覚えるだろうが、パーティー募集のときの周囲の対応が冷たくて、正直途中からあいつらとはNPCと接しているような感覚だった。
「恩を、自分の欲のためにああやって返す人間。これ以上、情報を流す必要も無いから。それに【アロマテラピー】は秘密でしょ?」
「そうだった、悪い。俺は別に隠す必要性を感じていなかったけど、ああいうプレイヤーもいるならちょっと考え改めねえとな」
「魔力のこもった枝だけあって【薬品作成】はもちろん、【アロマテラピー】の作成アイテム素材になりそうですからね。ボスドロップですし気持ちは分かりますが……いや、やはり分かりませんね。今後、彼とは関わらないようにしましょう」
先頭を行く彼女がふと立ち止まって、振り返り頭を下げる。
「ご、ごめんね勝手なことしちゃって。ダノンって人、覚えてたからあんまり会話したくなかった。だからドロップ回収をやってた」
「いいよ。 俺、アミが遮らなかったらプレイヤーに攻撃を仕掛ける羽目になってたからな。 あいつ以外は悪い人じゃなさそうなんだが」
「止めて正解ですよ。殴った程度じゃLP0にはならないでしょうが、プレイヤー攻撃は悪評の元ですからね。たぶんあの四人は臨時パーティーなのでしょう。ピノンさんとミルさんはそうじゃなさそうですが。まあ即席パーティーなら連携も取れないでしょうし、負けるべくして負けたのです。ダノンさん以外があのやりとりを冷めたような目でみていたのは、それが分かっているからなのでしょうから」
「レアアイテムはまあいいけど、勝利に泥塗られた気がして気が晴れないな」
「それ、なんだけど」
アミが鞄からごそごそと何かを取り出そうとする。
そしていよいよ取り出されたそれを見て、俺達は驚いてしまった。
「なんだこれ……」
「これはまさか!」
「……エントロードの、人形?」
彼女が取り出したのは、何とも無駄に精巧、緻密に作られた【エントロードの人形】だった。
樹皮のような肌、青みがかったその色、先ほどまで激闘をくりかえしたその姿そのままだ。
人形、思い当たることが無いわけではない。
プレイヤーが出店している露店の中には、少数だがモンスターをかたどった人形がたびたび見受けられた。
最初は人形を作成するスキルがあるのかとも思ったが、そうじゃなくてどうやら各種モンスターは低確率で自身をかたどった手のひらサイズの人形をドロップするのだそうだ。
まあ、【アロマテラピー】があるくらいだから人形作成スキルがあっても不思議な気はしなかったが、それらを扱っているどの露店も1~2体しか販売していなかったのだから、そういうスキルは多分ないのであろう。
あればそれなりの数を作成しているはずだ。
「モンスターの人形って、作成した武器防具に特殊効果を付与できるんだったっけ」
「僕達は取得していませんが、店売りじゃなく作成された武器防具、並びに敵がドロップするものには『スロット』といわれる枠があるそうです。その枠の数だけ、特殊効果をつけることが出来るのですが……」
「ボスモンスターの人形、効果が想像できないね」
確か【テラーウルフの人形】の付与効果が"素早さ+1"だった。
モンスターの強さに比例して、付与効果が上がるわけではないらしいが、ボスやレアモンスターだけは強力だったり特殊なものが多いらしい。
とはいえドロップ確率は高くなく情報はあまり出揃っていない。
「ちょっとずるしちゃったけど、この精巧な人形は確保しておいたの」
「アミちゃん、ナイスですよ」「よくやったぜ! 俺達が倒したし、問題ないさ」
効果は【鑑定技能】スキルを誰も持っていないから分からない。
ある一定以上のレアリティを持つアイテムは取得したときに効果が表示されず、鑑定をする必要がある。
仮に効果がどうしようもなくしょぼくても、こういったものを集める層というのがゲームには必ず一定数は存在する。
まあ、一応ボスモンスターのレアアイテムだからゴミということはないはずだ。
不満や悔しさの中に、ひとつの収穫が合った。
モンスターの襲撃にそなえつつも、ウキウキした気分で歩くその先に水面が見える。
「あれは……?」
徐々に開けていく視界。
俺達は自然と早足になっていた。
「きれい……」
「ああ、デジカメがあるなら撮って帰りたくなるな」
「これが青い森、の青の理由ですか」
少し開けた場所に、豊かに水を蓄え、そして青く清らしく発光する湖。
周辺の木々も、ほのかに青みがかかっているようだ。
「ヴァーチャル世界ってすげえよ。地球にもファンタジックで美しい場所はあるにはある。でもここは別格だ」
感動で心が震える。
たかがゲーム、所詮は作り物の世界、そうした認識を忘れさせる光景がそこにあった。
仲間の誰一人として、今は言葉を出そうとはせずに、目に映る世界を噛み締めている。
しばらくしたあと、街へ帰還するための体勢を整える準備に入った。
念のため周囲を警戒したが今のところモンスターが現れる様子もないので、俺達はそこで休憩と話し合いを行うことにした。
……回復のお香を炊きながら。
「今回のことは色々と考えさせられましたね」
「ああ。ボスとの戦闘はアミの魔法属性との相性がいいこともあって俺達のやり方でもやれることが分かった。だけど……」
「ダノンさんがいうようにある程度系統が似たスキル、ダイキでいえば結界魔法や防御系の魔法を取得することで行動の選択肢が広がるし、僕は攻撃魔法と槍技を合成させることで遠距離攻撃が行えるようになるでしょうけど……」
「私も複数属性に、手をつければもっと色々なことができると思うよ。 でも……」
威力を向上させ、関係するスキルへの習熟を重視する特化と、合理的に複数のスキル取得を組み合わせて、広く環境に対応させようとする汎用。
それぞれがそれぞれの可能性を信じ、前者が手札の多様性を犠牲に、後者が専門性を手放したのだ。
どちらが正解だとか、そういうのはきっと存在しない。
あるのは目的に対する姿勢の違いだろう。
「連携がおそらく未熟だったとはいえ、ダノンのやつらはエントロードに勝てなかったし、俺達は三人で倒せた。この結果で充分だろ。俺達は俺達のやり方で行くし、俺達と同じようなプレイしているプレイヤーが肩身の狭い思いをしてるなら、一緒にゲームをやっていきたい」
みんなが頷いてくれる。
汎用は現在のゲームプレイにおける定石かもしれないが、特化は強さなのだ。
否定されても、俺達はこのやり方でいく。
改めてこの方針による結束が固いものとなったように思う。
「しかし、いささかレベルが短期間で上がり過ぎたかもしれません。そろそろ装備を新調しましょうか」
「ずっと狩りをしてたからな。ただ狩りをしたといっても敵を大量に集めて範囲攻撃連射してたわけじゃないから、金策が充分でないし三人分の新調は厳しいな」
「いえ、青い森で素材が集まったでしょうから、そろそろインセンスを市場に投入しましょう」
「いいの? 存在が知られてしまっても」
「今日のことで、一応インセンスの存在は他人に漏れましたが生産スキルはバレていません。逆に今こそ売ってしまうべきでしょう。いずれ【アロマテラピー】も発見されるでしょうし、他の可能性としては別の生産系スキルで同様の効果のアイテムが作成できることもありえます」
話の結果、ステータス上昇系アイテムが市場に出揃ってないうちにインセンスを販売して稼いでおこうということに決まった。
技術を秘匿するという考えはあまり好きではない。
しかも長期間苦労し、研究に資金も投入したような秘儀ではなく、ほんとうに努力もなく偶然編み出したもの。
そういったものでお金を稼ぐということに、少し後ろめたい気持ちを覚えた。
だが、ダノンのような横柄な態度をとるようなプレイヤーも存在する。
下手に情報を流してしまうと素材が取れる狩場が荒れてしまうかもしれないし、そもそも稼げるという理由だけで【アロマテラピー】を取得されるのも嫌な気分だ。
そう考えて自分を納得させることにした。
「経験上、こういったアイテムは確実に売れるからな。レアアイテムを手放さずにすむし、しょうがないか」
「エントロード人形の使い道はおいおい考えましょう。自分達の戦闘スタイルもそろそろ見えてきたはずですから、ある程度背伸びして装備を買ってしまっても大丈夫なはずです」
「うん、私も火炎属性を伸ばすことにしたし、それに適した装備を買うよ」
当面の目標を設定し、戦闘の連続で忘れていた食事を取った。
綺麗な湖の景色を眺めながら、原っぱで食事を取って寝っころがる。
クラスメートがいるだけにまるで遠足のような感じだ。
遠足、それはいつもどおり男友達とふざけあい、馬鹿をやるだけの、楽しい日常の延長線上の出来事。
場所が教室から○○山だったり○○公園に変わっただけのことだ。
もちろん授業が無いからテンション上がりまくりだが。
しかし、この一般的には楽しいイベントである遠足でも、楽しくないと感じる人だっているだろう。
遠尾亜美――アミ。
彼女は遠足でも、集団行動の時間以外は木陰で本を読んでいた。
その姿は、木漏れ日が照らす明るさと彼女の面影と印象のギャップから、残念ながら絵になっていたがきっとそれは彼女にとって望まない評価だろう。
多分、彼女は孤高の存在じゃない。
自立できるほど強くはないけど、でも"普通"に馴染むこともできない。
彼女のことはまだほんの少ししか分かっていないが、なんとなくそう思う。
でも俺は馬鹿だから息が合う友達と絡んでおいて、そのまま日常を過ごせてしまう。
そんな彼女と、プラス一名親友のカイと三人で一緒にいる。
「なあ、アミ。今楽しいよな?」
「え、う、うん! すっごく楽しいよ!? ゲーム自体も、楽しいけど。みんなもいるし、二人がいるし。 本当に……」
「ですよね。恋人作りはまだ進んでいませんが、なんだかんだで僕もすごく楽しんでいますよ。少し周囲を警戒してきますので、ゆっくりしていてください。【気配察知】スキルがないとやはり不便ではありますね。行ってきます」
マメなやつだな。
ふざけてるように見えて、面倒なことも率先してやる。
本人曰く、「人がしないこと、嫌がることをやることで経験値が増えるんですよ」とかゲームみたいなことを言ってやがったな。
何のための経験値かは分からないが、そういうところがカイにとってプラスに働いているんだろうな。
「ダイキ、最近の戦闘。変わったね」
「え?」
「強くなってるし、それに気合が入ってる、というか。意気込みを感じるの」
「まだ三日目だけどな。のんびりやろうと思ってたらカイがあんな感じで目標作るし、それにアミのような女の子が一緒だ。こうゲームだってわかっちゃいるけど、後衛、っていうか女の子は守らないといけない、みたいなこっ恥ずしい騎士精神がね、こんな年頃の野郎にはあるってことなんだよ」
「ふふ、そうね。 守ってもらってるよね。 現実じゃないけど、うれしいよ。女の子冥利に、尽きるのかな」
「俺、不器用だからさ。妹はいるけど、同世代の女子とかあんまり上手く話せないし、何考えてるかわかんねえんだよ。全員ってわけじゃないけど女って裏話とか噂とか好きだろ? ちょっと怖いっていうか、さ。 でもアミとは、変な繋がりだけどゲームっていう共通の話題もあるから話もできるし、楽しいよ」
「ありがとう。ゲーム、楽しいけど、ダイキにカイ、この二人だからって私は思うの」
「ああ、それは……」
俺も感じていたことだ。
ゲーム自体の面白さを、このRC3は高い水準で満たしている。
プレイ重視でストーリークエストには全く手を出していないが、過去のシリーズを考えてみてもシナリオにはそれなりに力を入れているはず。
対人コンテンツがないのはちょっと不満だが、パーティープレイが楽しいから問題ない。
「それは?」
それでもやはり、楽しさの決め手となっているのはアミやカイがいるからだろう。
極論を言えば、RC3でなくても楽しくゲームをできると思える。
だから俺は思うんだ。
「きっとそれは俺達が、俺達三人が友達だからだよ」