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第1話(エプロン姿の彼女)

どくんどくん〜Spring Snow〜を読んでからこちらを読んでいただけると、よりわかりやすいかと思います。


2からでもわかるようには書いていくつもりです。

きれいな青い空を見上げて、ふと隣を見る。


「こんな綺麗な空なのに雪が降るんだね〜!」



何年ぶりかに、雪が積もった。


雪だるまを作ると言い出した僕の彼女は、手袋もせずに雪だるまを作っている。




僕の彼女―



高校時代、運命の出会いをした僕らはお互いに惹かれ合い、愛し合った。


彼女には、とても大きな家庭内の悩みがあり、そのことが原因で僕らは引き裂かれた。


離れても変わることのないこの愛に、僕は永遠を感じた。


僕は事故に遭い、生死の境を彷徨いながら、彼女を守るのは僕しかいないと確信した。


僕らは、誰にも負けない強い絆で結ばれた、どこにでもいるカップル。


彼女の名前は 『ユキ』 雪が好きなのも名前のせいかな。


春瀬ゆき。彼女は、出会った瞬間から僕をドキドキさせた。


そして、今もまだ僕は彼女に夢中・・。


彼女が同じように僕を想ってくれているのかわからないけど、僕より少し少ないくらいの愛で愛してくれてるんだろう。


僕、神宮司ハル。


どこにでもいる普通の高校生だった僕も、今では専門学校でリハビリの勉強をしている。


あれから、もうすぐ一年になるな・・・。


大好きだった高校を卒業してから・・・。


あの季節外れの桜と雪に誓った、ユキへの気持ちは今も変わらない。



「ちょっと!!ハル!全然進んでないよ〜!雪だるま!私こんなに大きくなったよ!」


無邪気に雪だるま作りに専念していたユキの作った雪だるまは、大玉転がしの大玉くらいの大きさになってた。


「でかすぎだよ!!それじゃ、上に乗せる雪だるまも相当大きくしないと!」



「そうよ!それはハルが作るの!頑張ってね!」



そう言い残し、ユキは一人暮らしの僕の小さなハイツに入っていった。



そうそう、僕は専門学校に入って、一人暮らしを始めたんだ。


通えない距離でもなかったけど、『なんちゃって新婚生活』もしてみたかったし。


エプロン姿のユキを後ろから抱きしめる・・なんてエッチな願望もあって・・・。


一人暮らしは、甘くはなかった。でも、両親に感謝の気持ちが大きくなった。


離れている分、優しくもできるようになった。


相変わらずうちの両親は仲が良く、僕の一人暮らしがきっかけで3人目の子供ができたらどうしよう・・と心配している今日この頃。


たまにユキと一緒に実家に帰るんだけど、歓迎ムードが強すぎてこっちが照れる。


明らかにやりすぎって演出で僕らを迎えてくれる。


ローストビーフだの、ビーフストロガノフだの。


僕が今まであの家で食べたことのないようなお洒落な料理。


平和で、幸せな毎日が続いている。



まだ、エプロン姿のユキを後ろから抱きしめるって夢は実現していないんだけど・・


美術の勉強をしているユキは、とても忙しい。


夢に向かって努力してるユキを見ていると、僕も負けてはいられない・・と闘志が湧く。


挫けそうになったとき、いつも僕を立ち上がらせてくれたのはユキだ。


スケッチブックに僕の似顔絵と、がんばれってメッセージ。


今でも、部屋に飾ってある。



そんなユキだけど、週末は僕に愛情たっぷりの料理を作ってくれるんだ。


苦手だと言っていた料理も、僕には天才シェフのように思える美味しさ。


工夫を凝らした一品一品に愛情を感じる。


うなぎの蒲焼を買ってきても、ユキの手にかかればすごく上等な気分になる。


ご飯とご飯の間に、小さく切った海苔をちりばめて、少しだけタレを染み込ませる。


それを何重にもして、一番上にドカンとうなぎを乗せる。


山椒をかけて、更にうまい!



やっぱり、一人暮らしして良かったな。



「ハル〜〜〜!ココア入れたよ!」


窓から顔を出し、僕を呼ぶ天使の声。


たまんないんだな〜、こういう優しさ。


雪だるま一人で頑張って作れとか言いながら、ちゃんと僕を心配してくれてるとこ。


今でも、着実に『スキスキ度』は上昇し続ける。


「さんきゅ〜!じゃ、部屋であったまりながらイイコトしよっか?」


そんな僕のエッチな提案にも、


「ダ〜メ!!ハルは、外で飲むの。雪だるま完成してから、イイコトしようね。」


そんなユキのセリフに、反応しちゃう僕・・。


むずむずしちゃう。


出逢ってからもうかなり時間が経つけど、まだこんな調子な僕。


一生続くのかな?


でも、ユキとなら一生ラブラブな生活保障されてる気がするな。


「わかったよ・・じゃあ、ベッドにバスタオル敷いて待ってて!」


こんな会話ばかりの僕ら。


思い返せば、出逢った頃からユキはエッチな会話スキだったよな。


『私の部屋の床響くけど大丈夫?』とか『シーツが白だから私のベッドはイヤ』とか、


『ハルの部屋イカ臭い』とか・・・。



楽しいよな。しみじみ思うけど、僕幸せ・・・。


ユキと出会ってなかったら・・・って想像することが今一番の恐怖。


考えられない。



「できた〜?ハル。もう私我慢できない・・早く完成させてよ〜!!」


なんて、刺激的なことサラっと言っちゃうユキ。


ムラムラする気持ち抑えて、僕は雪だるまを完成させた。


窓をコンコンってノックする。


「お〜〜い、ユキ!完成したよ!!」


返事がない。


まさか・・・。



部屋に入ってみる。



・・・あぁ、やっぱり。


いつものことだ。


ユキは、待ちくたびれて眠ってた。


ユキは眠り姫のようだ。


いつも、僕のこの気持ちを知ってか知らずか、眠ってしまうことが多いんだ。


ま、いいけどね。


今日は、ユキの寝顔見ながら、僕も昼寝でもするか。


ユキ、いつもいつも僕に幸せをありがとう。


いつまでもこの寝顔の隣で眠りたい・・・。


この天使のような寝顔の奥には、数えられない程の涙があったんだ。


幼い頃から、ユキは実のお父さんの酒癖の悪さに苦しめられていた。


ユキのお兄さんとお母さんに対するお父さんの暴力を、小さなユキは目の前で見ていた。


ユキは、最初に僕が話しかけた時、泣いていたんだ。


僕の知らないところで、ユキはたくさんの涙を流して生きてきた。


ユキのお父さん自身も、やはり苦しんでいたんだ。


愛情がなかったわけじゃない。


本当は家族を愛していたと気付いた時にはもう手遅れだった。


医者という地位を捨て、アルコール依存症の施設に入ったユキのお父さんは想像以上の苦しみと戦っていたのだろう。


一度出てきて老人ホームでの仕事を始めたが、何ヶ月か後、お酒に手を出して飲酒運転で捕まった。


お父さんの反省は僕にも伝わってきたし、本当に努力しているのは見ていてわかった。


でも、それでも自分の弱さに負けたんだ。


ショックの大きかったお母さんとユキだったが、見捨てないと決めた以上もう一度信じて応援することに決めた。


もうすぐ施設から出られるというお父さんからの手紙を、ユキが嬉しそうに見せてくれた。


その時の、ユキの目の輝きとこみ上げてくる涙は、僕には計り知れないほどのユキとお父さんとの間の絆が感じられた。


今度こそ・・・!!!


僕も心から祈る。


僕に幸せをくれた天使に、どうか神様・・・たくさんの流れ星を降らせてください。


ユキが心から笑える日が一日でも早く訪れますよう・・・お願いします。



「・・・ハル・・・」


寝言か。


寝言で自分の名前を呼ばれること程喜ばしい事はない。


遠い意識の向こうでも、僕を必要としてくれているということだ。


どんな夢を見てるのかな?


僕も、眠くなってきた。


この狭い部屋で、2人で甘い夢でも見るとするか・・。




トントントントン・・・


ん??


懐かしい音で目が覚めた。


なんだか夢から覚めたくないようないい夢を見ていた気がする。


まだゆっくりとしか動き出さない僕の脳達が、音の方向へと僕の視線を向かわせる。


そこには、エプロン姿で何かを切っているユキの後姿があった。


その姿を確認した僕の脳は、急にすばやく回転し出す。


今がチャンスだ、ハル!


そう僕に語りかける。



「あ!起こしちゃった?ごめんね。ハル。おはよ〜〜!」


にっこり微笑みながらユキは、子供に話すように僕に話しかける。


「ん〜〜〜〜。よく寝た・・・。」


起き上がった僕は、そのまま寝ぼけたフリをして、ユキに近づいていく。


「ユキ〜〜・・」


僕はユキの後ろから・・・!!!


念願の『エプロン姿のユキを後ろから抱きしめる』を実現させたのだ。



「もう・・ハルったら。寝ぼけてるの?危ないからあっち行ってて。」


そのセリフに懐かしい母との記憶がよみがえる。


寂しがり屋の僕は、小さい頃、料理をする母の後ろばかり追いかけていたっけ。


下から見上げると、母は優しく


「ハル、危ないからあっちで遊んでて。すぐ行くから。」


って言ってくれたな。



「ユキ〜〜、雪だるまできたよ。だから、イイコトしようよ〜!」


僕は、包丁を置いて僕の今後の行動を予想できているユキを後ろからもう一度抱きしめた。


「ちょっと待って・・」


ユキは、手を洗いながら僕を見た。


そのまま僕は押さえることのできない感情に素直に従い、ユキにキスをした。


手を洗いながらキス・・・このシチュエーションにまた燃えてしまう。



そのまま僕らは、2週間ぶりに愛を深め合った。


久しぶりのユキとの甘い時間は、僕にやすらぎを与えてくれる。



ユキと僕の初めての日のことを思い出す。


僕の恩人であるリハビリでお世話になった水野さんがくれた温泉日帰り旅行。


温泉に入る前に、僕は我慢できなくなってたっけ。


結局今も何ら成長していない僕なんだ。










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