無重力で遊んでみよう
なんとか書けました
「おおお、実に美しい……」
「綺麗だねぇ」
「城はどの辺だ?」
「青いところが海なんだよね?」
城の子たちは来たことがあったが、今回は学校の子供たちを連れてパン本体までやってきている。
軌道エレベーターは重機関連を移動させるために拡張されているため、全生徒まとめて一度に移動出来た。
校長に頼まれて素材提供・パン、編集・博士で作った王城の上空映像からカメラを引いていって惑星全体を写し、そこでリアルタイムの映像に切り替えるってヤツを作ったんだが、生徒たちの反応を見る限り成功と言っていいだろう。
俺が最初にこの星を見た時は……えらく特殊な状況だったからなぁ。
もう何年も前の気がするな(メタな突っ込みは無しな!?)。
あの時は下手をすると帰れなくなるんじゃと、こっちに来てから一番真剣にモノづくりをしてたからな。
いや、まさかパンデモニウムが大気圏突破するとは思わないだろ、普通。
子どもたちは城の子の案内でパンデモニウム内を移動している。
おそらくは触手ルーム、例の鬼ごっこの部屋に行くのだろう。
一緒に来た校長や学校の教職員は、まだ自分たちの星を飽きずに眺めている。
子どもの場合、こういうものを見ても「そうなんだ」とそのまま受け止めるが、ある程度育った大人の場合は他の知識や経験と合わせて感慨深くなったりするのだろう。
大人だけかと思ったら、貴族の少年もなにやら決意を秘めたような目で星を見ていた。
色んな意味で良く出来た子だけど、焦っても成長は早くはならないからな、今は友達と一緒に遊んでた方がいいんじゃないかな?
内心の声が聞こえた訳ではないだろうが、少年は周囲にお辞儀をするとクラスメイトを追いかける形で去っていった。
家柄とかそういうのは良く分からんが、この子が将来的に王女の婚約者とか成りそうじゃね?
能力と自意識が高いレベルにあり過ぎだろ?
俺が同じくらいの年の頃なんて、漫画とテレビと食い物のことばっかりだったぞ、頭の中。
今も変わらねえって?
いや、多少はマシになったとは思うんだがな?
「小ズルくなっただけではないでしょうか?」
ルビーさん、内心のセリフに突っ込まないでください。
ホント、ウチの高級サーバントたちは俺に厳しいよな?
城の子たちのデモンストレーション後、学校の子たちも交えた無重力鬼ごっこが始まった。
流石、子どもだよな、慣れるのが早い。
ただ、服装的に色々とヤバい(特に女の子スカート)んで、急遽服飾生産ユニットをパン本体にコネクトして動きやすい服装を生産して着替えていく。
使い方は城の子たちが知ってるんで任せといたんだが、なかなかカオスな感じになっている。
スポーツウェアというくくりで登録されている服をチェックしてたんだろうが、城の子にはおなじみのジャージはともかく、サッカーのユニフォームが居たり、バスケのユニフォームが居たり、野球、テニス、ラクロス、陸上競技、まあ、この辺はまだいいとして、「カッコいい!」とアイスホッケーやアメフトのプロテクターまで含めたユニフォームを作る奴や、レオタード、水着なんて、こっちの感覚じゃ下着みたいなものを作る奴まで居て、他人の着てるものを見て更にとカオスが加速していく。
「この刃のついた靴かっけぇ!」
「いや、それ武器じゃないからな?」
「あははは、顔が無い!」
「スピードスケートのユニフォーム、後ろ前に着るなよ!」
「ま、まだあわわわわてるようなじじじじかんじゃない」
「なんで、そのネタ知ってるんだ!」
「姫様はしたない!」
「これ、動きやすくて可愛いの……」
「フィギュアスケートの服か……王様がモニターの向こうでどうなっていることやら……」
ひと騒動の挙句、皆、ジャージを着るということで決着を見たが、騒ぎを聞きつけてやって来た校長などは「これは学校の体を動かす授業に採用した方がいいかもしれませんね」と自分の分のジャージを作って体を動かして試していた。
ジャージはいいよな、ただ下手に慣れると他の服を着るのが億劫になるけどな。
シモーヌさんとか、シモーヌさんとか、シモーヌさんを見れば分かるだろ?
エリアも手遅れだなぁ……ジャージ女子って喪女と親和性が高いのに。
王女が下手にジャージ女子化なんてしようものなら、王様はまだいいが、お妃様になにをされるか分からない。
なんとか違う方向に誘導しないとな。
リーフにでも頼んで色々とおしゃれ方面に興味を引かせるか?
いや、リーフだと「恋の駆け引き」だのいらん知識も教えかねない。
チルカにエルあたりのフォローを付けてって形がいいかな?
お付きの人たちとも少し話し合った方がいいかもしれない。
王女は性格としては大人し目だが、運動神経はいいようだ。
それに目がいいな。
視界が広い。
触手を使った自分の動きに夢中になって、子鬼の動きが目に入っていない子供が多い中、王女は自分だけでなく、周囲に注意を呼びかけたり、警告したりしている。
人ってのは、やっぱ、こうい思わぬ才能とか面白いよなぁ。
こんな機会でもなけりゃ、大人しくて可愛らしいお姫様って印象に隠れて誰も気付かなかっただろう。
妹姫さんのドライビングの才能にしろ、城の子供ら(特に博士の弟子になりそうなボリックとか)にしろ、俺みたいな変な奴に関わらなきゃ埋もれたままだったろう。
種やつぼみのままで終わってしまった才能って今までにどれくらいあったんだろうね、この世界にしろ、元の世界にしろ。
そんなことを考えている内に、鬼ごっこが別物になっていた。
人数が多いため、これまでの鬼ごっこだと順番が回ってこないのだ。
こうしたことからパンデモニウム対子供たちという形式から、子どもたち同士の対戦へ変化し、そこにボールが加わって球技となった。
ポートボールと無重力鬼ごっこがミックスされた競技だ。
ゴール役各チーム一人、これは触手から三秒以上足を離してはいけないことになっている。
ガード役各チーム二人、これは相手チームゴール役をマークしてゴールを防ぐ役目。自分のチームへ直接ゴールすることは禁じられている。
後の残りはボールを奪い合い、ゴール役にゴールする役目。
無重力ならではのボールを空中に留めた状態でプレイヤーが動いたり、上下や左右など接地する場所を変えたりのトリッキーな動きで、観戦していてもなかなか飽きない。
審判役は一人ではとてもではないが出来ないので、二人でやっているがそれでもなかなか大変そうだ。時々、パンが手を貸している。
故意の相手チームとの接触は反則で、相手チームにボールの所有権を移して中断したところからプレイ再開。また、反則プレイからのゴールは無効となっている。
一方で味方チームとの接触は可能となっているため、鬼ごっこの時の様な連係プレイは可能となっている。
なんか、プロスポーツ化とか出来そうな完成具合じゃね?
子どもって遊びの天才だよな。
大気圏突入とかもやろうかとも思いましたが、流石に緊急避難ならともかくそうでないのに子供にはちょっと……




