城を建ててみよう
主人公が異世界に到着し、いきなり引きこもるという暴挙に
スキルから言えば、かなり無茶が出来る力なんですけどねぇw
「・・・・・・なんじゃ、こりゃ?」
気づいたら見知らぬ荒野・・・これはいいとしよう。
トレーナーにジーパンだった服装が、妙にファンタジックな衣装になっていた・・・これもまあ許せない範囲ではない。
空に太陽の他に月が3つあるのも、異国というか異世界情緒があるとでも思えばいいだろう。
何故かRPG風のステータス画面が目の前に半透明で表示されている、なんてのも異世界ものや電脳世界ものではさして珍しいものでもない。
だが、この職業欄はなんだ?
「超級建築師」
ぜんぜんファンタジーらしくないじゃねーか!
だったら「特級弁護師」とか「五星級調理師」とかもいるんかい!?
いや、伝説の剣とか、失われた魔術とか、ファンタジー世界ならではの、こうなんちゅうかワクワクする響きってのが欲しいトコじゃね、ふつう?
ワクワクしねー・・・ってか、どう見ても冒険とか、ロマンとかと縁の無い肩書きだろ?
チート国政ものにしちゃー周囲に人家どころか文明の気配すら感じねーし。
異世界転移なのか、転生なのか、憑依なのか、はたまた全く別の何かなのか。
送り込んだ神様とかにも会ってなけりゃ、召還の儀式を行ったっぽい魔術師もおらず、はたまた直前にオンラインゲームをやっていたとか、変な扉を開けてみたとか、そんな事もまったくない。
疑問に答えてくれる相手もいなければ、八つ当たりをする相手もいない。
マジ、どうすんべ?
ステータス画面をもう一度確認する。
アサガヤ・タイチロウ
レベル:47
HP:564/564
MP:94786/94786
空腹:78/100
職業:超級建築師
力:34
魔力:5673
素早さ:243
賢さ:367
攻撃:53
防御:679
まあ、なんというかステータス見る限りは魔術師系っぽい。
てか、バランス悪過ぎるだろ、このステータス!
で、何が出来るんだ、俺?
チュートリアルとか、説明書とかねーの?
コマンドで持ち物見られるな。
持ち物
愚者のローブ(E)
見晴るかしの杖(E)
守りのサンダル(E)
眠らずの首飾り(E)
活力の指輪(E)
大地の均し車 ×1
傷薬 ×45
毒消し ×32
ハンバーガーセット ×22
ピザ(Mサイズ) ×15
コーラ(Lサイズ) ×43
収納ポシェット ×1
白紙の地図 ×1
・・・なんなんだ、このファンタジーと現代社会の妙なコラボというか、折衷は?
まあ、食い物が入ってるのは正直嬉しい。
トカゲや虫を食うサバイバル生活なんてのは、よっぽど飢えが限界突破でもしない限り俺には無理だからな。
(E)ってのは装備品だろう、きっと。
愚者のローブ・・・指で表示画面押すと説明が出た。
他のも出たんで、ちょっと列挙してみる。
愚者のローブ・・・要は賢さを防御力に転嫁するローブらしい。ネーミングが皮肉だな。
見晴るかしの杖・・・ファンタジーに程遠い性能の杖。土地の測量が出来る。データの形で表示されるんで、専門知識なくても分かりやすい。一応、武器扱いで殴ったりも出来るそうだ。
守りのサンダル・・・防御力の高いサンダル。ファンタジー版安全靴みたいなもんらしい。足の上に岩とか落ちてきても骨折しないそうだ。
眠らずの首飾り・・・建築師という職業に不安を感じさせる装備その1。徹夜しやすく、短時間の睡眠での生活に耐えられるようになるんだそうだ。おまけの機能として、睡眠系の魔術やガスの類の影響を受けにくくするらしい。
活力の指輪・・・建築師という職業に不安を感じさせる装備その2。疲れた体に活力湧かせる、栄養ドリンク的な効果を発揮するそうだ。いや、そこまで活力必要とするってどーよ?
大地の均し車・・・説明だけじゃ分かりづらかったんで出してみた。履いてて良かった守りのサンダル、危うく足が潰されるところだった。うん、もっと小さい物をイメージしてたんだが、出してみて一目瞭然。ファンタジー世界版ロードローラーだ、これ。俺の魔力で動くらしいんで、MPが馬鹿みたいに多い俺にとってはいい移動手段になりそうだ。
傷薬・・・怪我を治す薬。いわゆるRPGの定番アイテムと同じと考えていいようだ。
毒消し・・・毒を消す薬。これもRPGの定番アイテムだが、これがあるって事はモンスターなのか動物なのかは分からんが、毒を持った連中が居るってことだよなぁ。
ハンバーガーセット・・・HPも回復するらしい食料。試しに出してみたら、ハンバーガーとポテトとコーラという、定番セットだった。ハンバーガーとポテトは熱々で、コーラは氷が入っていた。どういう原理なんだ、これは?
ピザ(Mサイズ)・・・これもHP回復アイテムらしい。まだ見てないが、たぶんこれも熱々なんじゃないかな?
コーラ(Lサイズ)・・・これもHP回復。セットのコーラと同じで氷が入っているのか、それとも缶やペットボトルなのかは分からない。
収納ポシェット・・・腰のベルトに付いたポシェット。上記のアイテムに留まらず、かなりの量の物が収納できるようだ。中身の重さが無いのがありがたい。
白紙の地図・・・真っ白な紙かと思ったら、汚れみたいな物があり、説明を良く見てみたら、どうもその汚れがこの周辺ということのようだ。自分の行ったことのある場所が表示される地図とのこと。
ハンバーガーセットを食いながら(某有名ファストフードの一番安いセットと同じ味だった)アイテムを確認した俺は、自分が何を出来るのか確認してみる事にした。
職業欄を指でつついて見ると説明が脳内に響いた。
アニメとか詳しくないんで分からないが、どっかで聞いた事もある様な女性の声。
ふむふむ。
建築師とは建物を魔術で構築するクラス。
決まった形状の物を作り出す「クリエイト~」系の呪文と、一度作った建物を召還する「サモン~」系、ユニット単位で構築していく「コネクト~」系、それらを消去する「デリート」の呪文が使え、「コネクト~」で構築した物を「クリエイト~」系に、「クリエイト~」で作ってデリートで消した物を「サモン~」に登録する事も出来る・・・と。
作る際のイメージでかなり出来に差が出る。
建物限定錬金術師っぽい気もするなぁ。
面白そうなのは「コネクト~」系かな?
アジトとか秘密基地とか作れそうなんだよね、説明聞く感じじゃ。
合成食料生産ユニットとか、魔道騎士製造ユニットとかまである。
この世界に居る連中が気に食わなかったら、世界征服とか目指すのもいいかもしれん。
うーん、ていうかこの職業、身を守ったり、攻撃したりっていう能力ないよなぁ、どう見ても。
文明レベルとか、住んでる人間や他の生き物とかの知識も無いし、うかつに町とか入ってトラブルに巻き込まれてもなぁ・・・。
幸いすぐに飢える様な事もないし、周囲にも何も無いし、ここで練習しつつユニットで護衛とか生産してから動いた方がいいかも。
ま、周囲見渡して、特にどこでも大差ないし、ここに作っちゃってもいいだろう。
じゃ、行きますか。
「クリエイト・クリスタル・キャッスル!」
周囲の土が集まり、地面からクリスタルの塔が生えていく。
何から何までクリスタル。
太陽光を浴びてまぶしいのなんの。
伝説の神の城とか言っても大抵の人間は信じちゃう様な代物がわずかMP320で完成。
町一個くらいなら一日も掛からず作れちゃうって事だよなぁ、この調子だと。
ま、中に入ってみる事にすんか?
建物だけだったら味気ねーなぁ、とか思ってたら内装もあって、魔術を使ってるっぽい照明まであった。
クオリティ高過ぎだろ、専門特化したクラスとはいえ。
エレベーターまで有って、ドアも意思で開閉する。
現代日本を遥かに凌駕するレベルの建築だよな、これ。
一応、俺がオーナーだし、そうすんと居室ってのは一等高いトコとかになるよな、普通。
エレベーターで上に昇ってみる事にする。
最上階、塔みたいになってるんで、下の階に比べりゃ狭いけど、一般的日本人である俺にとっては不安感を感じるほど広い。
内装も豪華で、自分の魔法で作った物とはいえ、汚したり壊したりするんじゃないかと、足を踏み込むのもためらわれる。
まあ、そんな事を言っても人間の環境適応能力は結構凄いし、すぐにソファでだらけたけどね。
こんだけデカく、豪華なトコに俺一人。
もう少し小さい建物作りゃ良かった。
一人暮らししてたから、別に一人っきりでも平気だけどさ。
ここまで広いトコで一人だと、余計孤独を感じるんだよね。
なんか偵察用の物を作れるユニットでも出すかな?
やっぱめんどくさい。
明日から頑張ろう、うん。
まあ、純粋な建築なら「サモン~」は不要なんですけどね、少しは戦闘に使える要素があった方がいいかということで、こうなりました。