宿舎を作ってみよう
望外に多くの方に読んでいただいているようで汗顔の至りです
また、個々の方にはお返事出来ず申し訳ないですが
感想も喜んで読んでおります
戻ってきたシモーヌさんや救出された子供たちを出迎え、エメラルドやサファイア、アメジストたちに子供たちの対応を任せて、シモーヌさんを別室に案内すると、水晶球で例の金ピカたちの映像を見せた。
「こ、これは・・・。」
引きつった笑顔、彼女この城に来て、これまでの一生分以上、この表情浮かべたんじゃないか?
まあ、原因に多大な責任のある俺の言う事じゃないとは思うが。
「これは聖骸騎士団です。ここに来たという事は無断で我が国の国境を越えて来たという事。」
「んー、外交問題とかなる?」
「なりますね、当然。」
「取り敢えず、トップだけは生きてはいると思うけど、他の連中も殺しちゃ不味かった?」
「いえ、武装して無断で他国に侵入してきた訳ですから、当然、そうされても仕方のない事なのですが・・・。」
「ですが?」
「なんと言いましょうか、神の威光を笠に自国の国王すら歯牙にかけない言動を行う集団でして、理屈や国家間の暗黙の了解といったものが通用しない集団なのです。」
あー、「そういう」連中か。
「そもそも聖骸騎士団は『大帝国』時代に端を発する集団でして、大皇帝マツバラ・イクオの遺骸が安置された教会が、大皇帝そのものが神でありその遺骸が奇跡をもたらすとして権威を獲得していった聖骸教会が母体です。」
ぶっ!・・・マツバラ・イクオってモロに日本人の名前じゃん。
俺の居た日本と同じ「日本」かは分からないけどな。
なんか、俺がここに来たのとも関係してるのか?
「で、その『大帝国』とか『大皇帝』とか初めて聞くんだけど?」
「はい、大帝国はかつて、この大陸の大半を支配した国家でして、そもそもは大陸西端にある小さな王国が大皇帝の『不死の軍隊』で周辺国家を圧倒し成立しました。その拡大の勢いは大皇帝が亡くなるまで留まる事を知らなかったようです。その後、内部分裂や滅ぼされた国家の復興、独自勢力の独立などが続き崩壊しました。」
『不死の軍隊』ねぇ・・・大皇帝ってネクロマンサーかなんかか?
「『不死の軍隊』って?」
「はい、それが大皇帝の奇跡と呼ばれる力によるものでして、大皇帝の祝福を受けた者は例え戦場で倒れたとしても、即座に大皇帝の前に復活する事が出来たと言います。彼は元々、出自の分からない聖職者としてその王国の教会におりましたが、毒や麻痺などの治療といった癒しの力だけでなく、死者の復活すら可能とする神の使者として声望を高め、国政に関わるようになっていったと伝えられています。」
うーん、確かに凄いって言えば凄い力なんだけど、どっかで聞いた事あるような・・・。
毒の治療・・・麻痺の治療・・・死者の復活・・・戦闘死亡時の眼前での復活・・・。
・・・これ、某有名RPGの教会の神父の力じゃね?
「大帝国の首都があったのが、この国の隣国ミヤガセ王国でして、未だに大皇帝の威光の強い土地であり、聖骸教会も大きな力を持っているのです。」
ミヤガセってのも日本語の響きっぽいよなぁ、宮ヶ瀬とか地名でありそうだもんな。
どこの誰かは分からないけど、この世界に別の世界の人間に変な力を与えて放り込んでる存在が居るって感じだな。
歴史上、他にもそういった存在が居なかったか、調べてるみる必要があるかもしれない。
スカイアイとは違った意味での調査ユニットが必要かな?
それにしてもマツバラさん・・・・・・。
異世界に放り込まれて、本人ノリノリだったのか、嫌々だったのかは分からんけど、死後に自分の死体を祭り上げられた上に、その権威でバカやる集団が出てくるとは思わなかったろうなぁ・・・。
俺だったら絶対嫌だぞ、そんなの。
自分の死んだ後の事なんか知ったこっちゃねーっていえば、知ったこっちゃねえんだが。
しっかしなぁ・・・・・・宗教がらみとかホント面倒臭いなぁ。
話し合いじゃなくOHANASHIしか成立しないんじゃねーの?
【SIDE:???】
「ご報告申し上げます!」
なにっ! あの狂信者ども300ほどが国境を越えて我が国へと!?
「今すぐ出立出来る者は何名おる?」
「歩兵が500騎兵が200です。」
なにぶん距離がある。
危急の事態ゆえ歩兵は切り捨て、騎兵のみで当たるしかあるまい。
噂で聞いていたクリスタルの城とかいうのが、その進行方向にあるな。
シモーヌがその辺りに居るはずなので、報告を待っておったのだが・・・。
「直ちに出る、騎兵のみで行くぞ! 歩兵は不測の事態に備え、通常より警戒を高めておくよう。後の事はブリエル、お前にまかせる。」
執務室から出て指示を出しつつ、出立の準備の為自室へと向かう。
「準備が間に合わぬ者は置いていく、後から死に物狂いで追いついてこい!」
自分でもかなりの無茶を言っている事は分かるが、今は何をおいても速さが必要なのだ。
「クロジェール隊27名揃いました!」
「ロラン隊25名いつでも行けます!」
「モラール隊18名準備が整っております!」
・
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・
急な触れにも関わらず、続々と準備が整った隊の報告が入ってくる。
配下の練度に、こんな時であるというのに喜びの気持ちが起こる。
「よし、それでは出るぞ、俺の後に続け!」
【SIDEOUT】
昨日、自分の馬を置いて人買いたちを詰めた護送車に乗ったシモーヌさんが、報告と事後の手配の為ウェスティンへと旅立っていった(サポートにガーディアンかサーバント付けようかと尋ねたが、あちらで騒ぎになるから、と辞退された。護送車とはいえ、乗用サーバントだし運転した事のない人間でも平気か・・・たぶん)。
汚い話だが、護送車に繋いだっきり放置、垂れ流し状態になってるんで、必要になればまた作ればいいし、コア残して車体部分は廃棄にした方がいいだろうな、これが済んだら。
そうそう使うような事がない方が、当然いいんだが。
その後、ふと思い立って自分のMP確認。
2万ほどMAX値から減少していた。
ゲームとかでなら一晩寝れば全回復なのに、などと思っていたのだが、どうやら、城その他の魔力を要する部分の魔力供給が俺からなされているという事らしい。
シャトル運行しててこの程度なら、現状は問題無いけれど、今後色々(特に遊園地とか)拡大していくと、とっさの時にMP不足なんて事も起こるかも知れない。
何か魔力炉ユニットみたいなものでも無いかな? と色々見てみたが、なかなかファンタジーっぽくて良い物があったので、生産してみる事にする。
《魔力樹ユニット》
大気中、及び大地中の魔力を収集する為のユニット。消費MP140
くすんだ銀色の木肌、日の光で黄金に輝く木の葉を持つ「いかにも」な木。
暗くなると仄かな光を放つと言う事で、夜の方が見応えがあるだろうな。
生成時に高さが20メートルくらいあり、その後も普通の木と同じに成長していくのだという。城の正門の左右、未だ地肌むき出しで殺風景な所にコネクトしよう。取り敢えずは20本ほどかな?
今後も道路の作成や建物の建築に合わせてこのユニットを作っていけばいいだろう。
街路樹がわりにしても見栄えがいいから問題ないし。
魔道炉ユニットなんていう、もっと遙かに強力な代物もあったが、非常に低い確率とはいえ「暴走」する危険も有ると言う事で今回はパスした。
ゲームとかの影響のせいだと思うけど、その手のものは「必ず暴走する」ってイメージがあるからなあ。
それから、リコの治療は無事に済んだ。
本人よりエルの喜びの方が大きいように見えた。
眼帯も気に入って貰えたようで、制作者としてはなにより。
まだ、両目が見える状態に慣れていないようだが、これは時間が経てば改善されるだろう。
翌日、シモーヌさんが帰ってきた。
行って目的を終えて帰ってきたにしては早過ぎるんで「もしかして道に迷った?」などと思ってしまったが、後から現れた集団を見て早とちりに気がついた。
砂埃にまみれた鎧、どこか少し気が抜けたような雰囲気はあるものの、訓練された身のこなし。
金ピカの道化師連中とは比較にもならない。
後ろにブロンズ、横にルビー、影の中にはシェード、それに子供たちに見られてるってのがあるから、それなりに平然として見せてるけど、やっぱ「本物」の迫力は凄いよな。
うん、一人なら背中向けて逃げてるところ。
「ただいまです、タイさん。あ、勘違いしてるかもしれないので行っておきますけど、道に迷って途方に暮れて帰ってきた訳ではありませんよ? 馬と速度は違うとはいえ、何度も行き来した事のある場所です。」
「いや、シモーヌ、その前に我々をそちらの御仁に紹介して貰えぬかな?」
「あ、あ、あ、申し訳ありません、ノード伯。」
「ウェスティンのノード伯ですね、シモーヌさんから話には伺っておりましたが、お会い出来て光栄です。アサガヤ・タイチロウ、他の者からはタイと呼ばれております。端的に言えば異世界から来た、ちょっと特殊な魔術師です。この様な場所で長話もなんですので、城の方にどうぞ。」
マジメモードだが、相手も相手なんでルビーも変なリアクションは取っていない。
ここに居るの全員は城に連れていけないよなぁ。
こっちの門の近くに厩ユニット作るついでに宿舎でも作っておくか。
今後も城に泊めるわけに行かない相手とかにも使うかもだし。
余裕見て300人くらいは泊まれるホテルをクリエイトして、サーバントも生産して、アメジストにこっちの方の対応は任せるか?
「すべての方を城の方でという訳には参りませぬので、他の方々はこちらの宿舎をご利用ください。食事その他はアメジストを始めとするサーバントの方にお尋ねください。また、何かありましたら、アメジストを通じて私と連絡が取れる様になっております。」
目の前で出来たばかりのホテルを前に呆然としてる騎士たちへの対応をアメジストに任せ、シモーヌさんやノード伯を始めとする一行をシャトルへと案内する。
ふええぇ、マジメモードの継続は疲れるなぁ。
通常モードに戻りたい。
ただ、せっかく飛び込んで来てくれたコネだからな、うまく活かしたいとこだ、一踏ん張り。
【SIDE:ノード伯】
人も馬もかなりの疲労となっているが、良くついてきてくれている。
疲れ過ぎても役に立たないが、間に合わなければ話しにならない。
狂信者どもの考えなど分からぬが、我が国の民に被害が出てからでは遅いのだ。
しばらく行く内、前方から何かが「来る」のが見えた。
馬車にしては奇妙な姿に警戒心が高まる。
全体に速度を落とす指示を出し、対応を考えながら進む。
近付くにつれ、それが自分が考えていたより遙かに大きなモノである事が分かる。
その「車」が停まり、中から現れたのは・・・。
「ノード伯、一体どうしてこちらに? それにその姿は?」
「シモーヌ、お前が乗ってきたその車は一体・・・いや、そんな事より、知らぬのか、聖骸騎士団の狂信者どもが国境を越えて我が国に入り込んだ事を!」
「あー、あれならタイさんがやっつけちゃったんですけど。」
・・・・・・はっ?
何を言ってるのだ?
頭のおかしい狂信者どもとはいえ、その武力は決してバカに出来るものではない。
それを「やっつけてしまった」だと?
「タイさん」というのが何者かは知らぬが、いったい何をしたというのだ。
「もう、問題はないというのか?」
「一番偉そうな人だけ捕まえて、後は穴の中だと言ってました。」
穴の中だと?、策を用いて大規模な罠にでもはめたのか?
もし、そうならその「タイさん」というのは中々の策士だな。
「して、その奇怪な車は?」
「魔法で動く『護送車』という車です。タイさんからお借りして『人買い』共をウェスティンまで運んでていく途中でした。」
『人買い』というのは何度か耳にしたが、実体が分からなかった人身売買組織の事か?
ええい、訳の分からない事が多すぎる。
ともかく、全体に一旦休憩の指示を出して、このどこかネジが一本抜けてしまったようなシモーヌから話をきかなくてはならん。
それにしても、久々に直接顔を合わせるが、いい笑顔で笑うようになったのだな、シモーヌ。
【SIDEOUT】
かなりご都合ですが
余所から国境超えた連中が来て
国が何も対応しないと言う事はまずないので
たまたまノード伯は自分が陣頭に立つタイプだったと