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牢獄を作ってみよう

残酷な表現あり、一応つける事にしました

行動は書いても、状態の描写はなるべくしないようにしてるんですが。

まあ、やってる事は、特に今回は残酷ですんで^^;



【SIDE:エルス】



 馬鹿が馬に乗ってやって来た。

 

 そうとしか言いようが無い。


 蛇の絡みついたリンゴという趣味の悪い旗を押したて、妙にピカピカの鎧を着たその馬鹿は「これほど素晴らしい城はきっと神が我々に与えてくださるために、用意してくださったものに違いない。すぐに明け渡せ!」といった様な寝言を、目を開けたまま大声で喋っていた。


 随分と器用な馬鹿だと思った。




 そんな下らない事はどうでもいい。

 

 この城の書庫。


 確かに城は普通では考えられない様なクリスタルで作られた外壁や、エレベーターという階段を使わなくでも建物の中を上下に移動できる物があるなど、特別なものであるのは確かだが、僕にとっては別にどうでもいいことだ。


 この城の書庫、一見、確かに置いてある本は価値が高そうで、綺麗な装丁のものばかりだが、ごく普通の書庫に見える。

 置いてある本の数でいえば、僕が入り浸っていたジョショア爺さんの所より少ない。


 だから、最初は僕も気付かなかったし、普通に置いてある本を適当に読む人なら一生気付かないかもしれない。


 しかしながら、気付かない人は物凄く損をしている。

 

 僕の様に、書物から知識を求める人間にとって、この書庫はドラゴンの巣穴に貯め込まれた財宝以上の価値がある。


 この書庫は「こういった本が無いかな?」と読みたい本を念頭に置きながら本を探すと、それにぴったりの本が見つかるのだ。

 最初は僕も偶然だと思った。

 だが、それも回を重ねれば偶然とは思えなくなってくる。

 

 そこで、僕は狂王としてこの王国の正史からは抹消されているグズセック王の日記、という実在はしたが現存はしていない本を探してみた。


 ごく、あっさりと他の本を探している時と同じ様に見つかった。


 その時の僕の驚き、喜びを想像出来るだろうか?

 王都の学者の大半ですら、この書庫への出入りの権利にその全財産を喜んで差し出すだろう。

 他の子だけでなく、タイも僕が単に本が好きでこの書庫に入り浸っていると思っている。

 誰一人、僕がこの場所をこの世で最も素晴らしい場所だと思っているなどとは考えてもいないだろう。

 

 将来的にはテオには理解してもらえるかもしれない。


 文字を覚えたいと、最初に僕に言ってきた時は、ちょっと面倒くさいなと思ったが、本を探す「コツ」を教えてやると自分で子供向けの文字の本を見つけて、エメラルドさんに時間のある時に教えてもらい、あっという間に文字を覚えてしまった。

 

 自分の名前とか、お店の看板とかで元々いくらかの文字は知っていたようだが、僕が文字を覚えた時と比較しても遜色の無い早さだ。


 僕と違って、本以外にも興味がある事があるようで、僕ほどは書庫に入り浸ってはいないが、最近ではかなり難しい本も読むようになってきている。

 

 タイは魔術師だという割りに知的活動が得意には見えないが、相手があれほどの馬鹿であれば問題はないだろう。


 というわけで、昨日の続きだな。

 海を渡った向こうにあるという、このトアリアスという国の話は面白い。

 国で一番の馬鹿を王様にして、一年間好き勝手させた後、神への生贄に捧げてしまうなどというのは、考えてもみなかったシステムだな。

 夕食の後も部屋に持っていって読みたいくらいだ。


【SIDEOUT】 



 

 ルビーからの連絡を受けて、映像で確認してみたが、なんだ、この金ピカ集団は?

 道化師の集まりか?

 いや、持ってる武器が一応、実用に耐えるものだというのは分かる。

 だが、これを「軍」と呼んでいいのか?


 その後、先触れらしい奴が城壁の外でアホな事をほざいていた。

 余りにアホらしかったんで、城の中にその音声を再生して流して、「こういう頭のおかしい奴が近づいてるんで、勝手に外に出かけようとしないように!」と子供たちに言っておいた。

 頭の上から水をかぶせてやりたいなぁ、などと思ったが、生憎と現時点では外の城壁周りにそんな機能はないし、スカイアイも偵察オンリーなんで、そういう事は出来ないのが非常に残念。


 仕方ないんで傾斜の急なツルツルの斜面をそいつの足元に作って、滑り台を楽しんでいただいた。

 ただ、馬が怪我をしていたようで、それを見ていたアイクが悲しそうな顔して、悪いことをしてしまったと思った。

 馬には罪は無いよなぁ・・・すまん。


 アホどもは本人たちの主観的には威風堂々なんだろうが、客観的に見ればダラダラと城壁の外近くまでやってきて、陣を張り始めた。

 うん、やっぱ馬鹿だ、こいつら。

 城門のガーディアンたちだけで全滅させられるぞ?

 一番偉そうな奴なんか自分の足で歩いてすらいないんだから。

 変な輿みたいのをわざわざくみ上げて、それに乗って自分を運ばせている。


 まともに相手をするのも馬鹿らしいが、派手に魔法を使って(例えばサモン・スチールタワーとかやって、相手の上空に鉄の塔を召還して、それを落としてとか)殲滅すると、馬にも被害が出てしまう。

 同じ失敗は、少なくとも子供たちの見ている前ではしたくない。


 どういう風にしようかなぁ・・・と考えて、連中が皆、馬から下り、テントを組んでいる姿を見て思いついた。

 

 そうだ、ボッシュートしよう。


 クリエイトかコネクトのユニットで適当な物は無いかな、と探して見つけたのが下水道ユニット用の縦穴パーツ。

 直径1メートル強、深さ8メートルくらい。

 これを馬鹿ども、それぞれの真下に作る。

 地べたに座り込んで酒を飲み始めてる奴も居るし、面倒だけどこれなら馬には被害は出ない。


 じゃあ、早速、「ボッシュート!」




 結構、手間だったけど、馬鹿のボッシュート完了。

 最初の内は気付かれなかったけど、数が増えるにつれ騒ぎになった。

 まあ、馬鹿なんで既に他の人間がボッシュートされてる穴にそのまま落ちる奴も居て、多少、手間がはぶけた。

 逃げる奴がいたら、周囲に壁を作ろうかとも思ってたんだが、その必要も無かった。


 マジでこいつらどこの何者で、何をしにきたんだ?


 残された馬の世話をするサーバントと、念の為のガーディアン、馬をつなぐ厩をそれぞれユニット形成して残りの状況を確認していたんだが、最後にギャグが一発残っていた。


 輿に乗ってた偉そうな奴。

 どうも太り過ぎて歩けないらしい。


 担いでた連中が全員ボッシュートされた後、輿の上なんで穴に落ちることもなく、かといって動けもせず一人で騒いでいた。


 相手をするのも馬鹿らしいが、後々考えて責任者っぽいのだけは生かしといた方がいいかな? などと考え、そいつの周りにクリエイトで牢獄を作成。そのまま収容することに。


 動けねえみたいだけど、あんだけ太ってりゃ、そうそう餓死もしねぇだろと考え放置する事に。


 ボッシュートされた奴らは、運のいい奴は骨折くらいで済んでるかもしれんが、自力脱出はまず不可能。まあ、あいつらが自称するほど神に愛されてれば逃げられるかもね。


 人間の慌てぶりに、神経を逆立ててた馬も、落ち着いて厩に収容され始めている。

 最初の強制滑り台に巻き込んじゃった馬以外に怪我をしてる馬はいなそうだな。

 あの馬も手当てしてやらんと。


 馬鹿ども?

 そんなもんは知らん。






【SIDE:シモーヌ】 


 アイアンさんを先頭に人攫い集団の隠れ家と思われる廃村に向かった私たちは、馬では考えられない速さでそこに到着しました。


 速いとは聞いていましたが、これほどとは思わず、すぐにナイトから降りる事はできませんでした。

 そうしている内に、タイさんから連絡が入りました。

 あちらのトラブルは無事始末がついたそうです。

 その報告を聞いてアメジストさんが妙にニコニコしていましたが、いったいなんででしょう?


 スカイアイというものの報告によれば、現時点でここに人買いの馬車が停まっており、子供がいる可能性も高いそうです。


 出発前にタイさんからいただいた「拡声器」というもので投降を呼びかけます。


 どこに隠れていたのかと思うほどの数の男たちがぞろぞろと、不貞腐れた様な笑みを浮かべながら出て来ましたが、アイアンさんやブラスさんを見て、表情を凍りつかせています。


 自棄になったようで武器を手にアイアンさんに向かっていった男がいました。

 途中過程が全く見られないというか、そもそもあったのかという感じで唐突に男は最後を迎えました。

 アイアンさん、ランスなんか持ってなかったですよね。

 なんでランスに貫かれた男が、アイアンさんの持ってるランスの先にいるんでしょう?

 早業とかそういうレベルじゃないですよ。


 他の男たちはそれ見て武器を捨て地面に膝を付いています。

 この「手錠」という奴を使って拘束するんですよね。

 あ、お願いできますか?

 その間に「護送車」という物を出します。

 中に入れたら、コマンドワードを言うと手錠が車の壁に固定されるんですか。

 なんか、凄いんですね魔術って。


 あ、子供です、子供。

 アイアンさんたちに人買いの方は任せて、子供を捜します。

 ブラスさん、アメジストさん付いてきてください。


 


 子供たちは11人居ました。

 明日にはここを発つ予定だったという事で、今日、ここに来れて良かったです。

 おそらくはタイさんの事ですから、今日来れば子供たちが居ると知っていて、今日、この事に当たったのでしょう。

 不安で泣いている子も、何にも関心を示せずにいる子もいます。

 

 どうして、この子たちがこんな目にあわなくちゃいけないんでしょう。


 いえいえ、今は泣いてる場合ではありません。

 

 子供たちに助けに来た、助かったんだよと伝え、タイさんから預かった猫のバスを出します。

 ナイトをポシェットにしまい、私やアメジストさんがこのバスに、護送車にはバイクをしまったブラスさんが乗り、城に帰る道へと向かう事にしました。


 帰る。


 なんでだが、自然にそう思ってしまいましたが、あの城、つい先日初めて来た場所なんですよね。


 子供たちに笑顔を向け、出発します。


 さあ、帰りましょう。



【SIDEOUT】

子供サイドの視点で、城の隠されたチートについて描写してみました。

他にも山ほど、この城にはチートがありますが、主人公視点だと永久に気が付かないであろう点を今回は^^

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