~婦人警官は突然に~
その女は五〇過ぎの男をがっちり後から掴んでいた、警察署長であるその人をまさしく署内で。
超絶なミニスカ。ビニールの光沢が光る安っぽい衣装。誰がどうみても偽物というか…仮装パーティのノリである。
いきなり安物の手錠をかけられかけて羽交い絞めにさせられた男(所長)。とその後ろで薄いブラウンの長髪の青年がため息をつく。片手で顔を覆っているのは気のせいだろうか。こんな場面を見たくも無かった、というように。
「なっ、ふざけるんじゃない。はなしなさい。ここは私の署内だぞ?」
「だからー、私はー極秘捜査官なのです!」
「それだから、婦人警官の格好で言わないでくれる?恥ずかしいから。」
顔を手で覆ったままの部下が呟く。後ろで結んだ長髪まで力なく垂れる。
「第一、極秘捜査官って書けるんですか?字」
「それは、まぁおいといてー。」
ミニスカートでとても警察官には見えない女は耳を貸さず。
「他言無用、で誰にも知られちゃいけないんですー。」
「なのに今こうしているってことは重大な危機があるわけで。」
「私たちはベルベットローズ!この世の平和を乱す為!乱世の世に立ち上がったヒーローよ!」
ポーズを決めて。
「そうそして、あなたが犯人だ!」
びしぃっと頭の薄くなった署長の頭部を指差す。
「貴女の頭が犯人ですよ。絶対」
「んっとにもう、いいかげんにしてくださいよね。さー、着替えて。」
部下は手を下ろさせて。
「えー?なかなか似合ってると思わない~?かわいーんだけど。ミニスカとか。」
「いや、あのね、それはコスプレ。偽者です。この署は女性職員いないから。って調べてたの貴女ですよ。」
「あ、さみしーんだ?じゃあ、このまま初女性ポリスメンになっちゃおっかなー。」
「えーっととりあえず一回死んで来い。で合ってますか?」
「んだよ、ノリ悪いなぁー。せっかくせーふくまできてやったのに。」
「あー、それはどうもお心遣いありがとうございます。でももう二度としないでくださいね。心臓に悪いから。」
「小心者ー。」
「あなたみたいにバカでかいよりましです。普通ですから。」
「んで、あいつは?」
先ほどの男は跡形も無く消えて。
「所長室。にダッシュしていきましたけど?」
「ん、一ヶ月閉じ込めてくれればたっぷり洗ってあげるわ。逃がしはしないわよ。」
「じゃ、ホントに黒なんですか。」
「あ、信じてなかっただろー。」
「ええ。とうとう気が狂ったかと思いました。」
「ふっ、そうみせかけて真実に歩み寄る私。いっつくーるびゅーてぃ!」
「だから、多分こっちが素なんだと思いますけどね。」
「あー、やっぱあるわ。ここから出てる、痕跡。この署が本拠地って考えて間違いなさそうよ。」
「ほら、いくつか慌てて消した後も見えるし。本当に慌ててたのね。」
「いや、貴女の行動は誰から見ても突発的過ぎますから。大体この署に目を付けたの二時間前ですよ…書類整えるのも、動向伺うのも…」
「それ褒め言葉としてとっておくわ。」
「んー、一応無いとは思うけど逆探はかけといて。」
「了解」
「あとレベル2保全お願い。」
「はいはい了解っと。」
二人が所長室の扉に手をかけた瞬間。破裂と炸裂フラッシュのあとは火薬の匂いが立ち込めて。
「うっわー。やるとは思わなかったけどまさか自分の署吹き飛ばすなんて、荒っぽいわぁ。」
とっさにかがみ込んだ二人に薄い煙幕が覆い被さる。
「幸いけが人はでなかったみたいですね。あ、当人は当然死亡だと思いますが。」
「まぁ、素敵。証拠隠滅ね。」
「やってくれるじゃないの。ケンカ売ってんなら買うわよ。乗りかかった船にあたし乗せるとどうなるか地獄の果てまで航海させてやる。」
「えーっと後悔違いでは・・・?」
「足跡は?」
「爆破30秒前に直プログラムが、はす向かいの5階空きテナントから来てます。」
「で、どうするんです?」
安っぽいエナメルを光らせながら首に片手を当ててぺき、と骨を鳴らす。
「きまってんじゃない。売られたケンカは、」
「あーはいはい、わかりましたよーっくわかりました。お供させて頂きます。」
「アンタも大概変なヤツよねぇ。今なら降りれるぜ?」
「何いってるんですか?こんな面白いモノ見逃したくありませんよ。やる気になったこの人にどこまで立ち向かえるんだろうって。」
「あんたも同類。変なヤツ。」
「チャージ(突撃)!」
「了解っ。」