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お花畑の子ねこたち

お花畑の子ねこたち

作者: 七瀬みる
掲載日:2026/06/01

 タマが、タマって名まえをもらう、すこしまえ、

 タマは、いまとはちがうお家に、すんでいました。

 じゅうたく地のすみっこの、ふるいあき家――

 のらねこだったおかあさんが、そこに住みついていたのです。

 そして、タマたち五ひきを、うんだのです。


 うまれてすぐは、ふる着のつまった箱のなか。兄さんたちと、姉さんと、みんないっしょに、みーみー、にゃあにゃあ、ないていました。

 おかあさんが、だっこしたり、ぺろぺろしたり、おっぱいチューチューさせたり、してくれました。


 あき家には、いろんなものが、ありました。

 からっぽの本だなや、こわれたそうじ機、やぶれたおふとん。ゴムのボールに、古ざっし・古しんぶん。

 おきすてられた、ゴミみたいなものが、ごちゃごちゃ、ひっくりかえっていたのです。

 だんだん手足がしっかりして、目もぱっちりあいてくると、タマたちにとっては、それが、いいあそび場になりました。


 とん、とん、よいしょ。

 本だなのてっぺんまで、のぼったり。


 そこから、ぴょーん。

 とびおりたり。


 ボールをつついて、ころがして。

 追っかけまわして、走ったり。


 つかれたら、まどの下で日なたぼっこ。

 青いお空を、ながめたり。


 でも、なにより、たのしいのは、やっぱり、ごはん。

 子どもたちが、おっぱいをそつぎょうすると、おかあさんは、かわりに、虫や、小鳥や、トカゲや、ねずみ。そんなオイシイごはんを、とってきてくれるようになりました。

 しかも、さいしょのうちは、ただオイシイだけで、うごかなかった、そのごはん――

 だんだん、子どもたちが、おおきくなると、おかあさんったら、ぴくぴくうごく生き餌のまんま、もってきてくれるようになったのです。

「行くわよ、行くわよ」

 おかあさんが、ぱっと手をはなすと、ジタバタ逃げだす、そのエモノ。

 みんなで追って、つかまえるの。

 それは狩りのれんしゅう。おにごっこ。

 たのしいあそびで、おいしいごはん。


 いちばん上の兄さんが、やっぱり、じょうず。

 にばんめの兄さんも、負けてない。

 さんばんめの兄さんは、ちょっとヘタ。

 姉さんは、よこどりめい人。チャッカリやさん。


 いちばんのへたっぴは、やっぱり、いちばんちびのタマ。

 つんつんしたら、バタバタあばれる、ごはんたち。タマは、ついつい、びくぅってなっちゃうの。

 兄さんたちに笑われて、姉さんにはフンッてされて……。

 それでも、タマは、気にしない。そのうち、きっと、じょうずになるもの。

 いまは、兄さんたちを、おうえんして。とんだり、はねたり、走ったり。それで、いいの。たのしいの。


 ごはんのあとは、おかあさんが、毛づくろいしてくれて。

 あそびつかれて、おなかもいっぱい。

 みんなで、おねむに、なるのでした。


  *


 そんなまいにちが、ある日とつぜん、終わりました。

 おかあさんが、帰ってこなくなったのです。


 さいしょは、みんな、待ちました。

 おなかがすいて、にゃーにゃー、ないて。

 あそぶ元気も、なくなって。

 それでも、待って、待って、待ちました。


 けれど、とうとう、待ちくたびれて――


 いちばん上の兄さんが、いいました。

「おかあさんを、さがしてくる」

 そして、それきり、帰ってきませんでした。


 にばんめの兄さんが、いいました。

「兄さんを、さがしてくる」

 そして、それきり、帰ってきませんでした。


 さんばんめの兄さんは、いいました。

「おかあさんも、兄さんたちも、しんぱいだけど。でも、このままじゃ、お腹がすいて、死んでしまうよ。ぼく、ごはんを、さがしてくる。おまえたちは、待っておいで」

 そしたら、姉さんが、いいました。

「いやよ。兄さんまで、帰ってこなかったら、どうするの。あたし、いっしょに、いくわ。おいしいごはん、とってくれたら、うんと、やさしくしてあげてよ」

「じゃあ、おいでよ」

 兄さんは、姉さんを、つれていきました。

 そして、それきり、帰ってきませんでした。


 のこされたのは、タマひとり。

 おかあさんを、待ちました。

 おなかがすいて、さみしくて。

 からだが、だるくて、おもくって。

 なんだか、あたまが、ボーッとして。

 おなかがすいているのか、いないのか、あんまり腹ペコすぎて、もうわからなくて。

 それでも、おかあさんがこいしくて。

 待って、待って、待ったのです。


 すると、あるとき……


 ひらひら。

 ひらひら。


 一ぴきの、きれいなチョウが、あき家に、迷いこんできたのでした。

 そしたら――いったい、どこにそんな力がのこっていたのでしょう。タマは思わず、ぱっ、と、とびかかっていたのです。

 でも、ただでさえ、へたっぴな、タマですもの。

 チョウは、なんなく、身をかわしました。


 ひらひら。

 ひらひら。


 ばかにするみたいに、とびまわります。

 タマは、むきになって、追いかけました。

「なんだ、このっ、こいつ」

 そして、ふしぎに思いました。

 あれ?

 さっきまで、あんなにからだがおもかったのに。

 さっきまで、あんなに力がはいらなかったのに。

 どうして、こんなに、からだが、かるいんだろう?


 タマは首をかしげて、あたりを見まわしました。

 そしたら、いつものねどこの箱のなかに、いっぴきの、こねこの死がいが、見えたのでした。

「うわっ、ばっちい」

 タマは、思わず、さけびました。

 死んだこねこは、ガリガリにやせて、うんちやおしっこにまみれて。まわりには、ブーン、ブーン、おおきなハエが、とんでいるのでした。


 この子、だれ?

 どうして、ここに、いるの?

 そこ、ぼくの、ばしょなのに……。


 死がいは、きたなくって、くさくって――

 タマは、フンフン、つんつん、してみました。

 すると、タマの手は、その子のからだを、つきぬけてしまいました。

 すかすかして、ちっとも、さわることが、できません。

「!?」

 タマはびっくりして、あとずさりました。

 そして、やっと、気づきました。

「もしかして、ぼく、おばけになっちゃった?」

 そうです。

 目のまえの、その死がいは、ぬけがらになった、タマのからだなのでした。

 さっき、チョウにとびかかったとき、タマのからだは、もうぴくりとも、うごかなくなっていたのです。

 ただ、たましいだけが、ぴょんとうごいて……からだから、はみだしてしまったのでした。

「どうしよう……」

 タマは、ぶるっと、ふるえました。


 さっきのチョウが、もどってきたのは、そのときでした。


 ひらひら。

 ひらひら。


 でも、さっきみたいに、ばかにされているって気は、しませんでした。

 それどころか――なぜでしょう、タマには、そのチョウが、元気をだしてって、はげましてくれているような気がしたのです。


 にゃー。

 にゃー。

 

 気づくとタマは、チョウにむかって、よびかけるみたいに、ないていました。

 そしたら、チョウは、タマの顔に、ちかづいてきて……さっと身をひるがえすと、まどのほうへ、行きました。

 まるで、さそっているみたい。

 そして、すうっと、ガラスに吸いこまれてしまったのです。

「待って!」

 タマは思わず、かけだしました。

 とたんに、ふわっと、からだが浮いて、ちゅうをすべって――

 ぶつかる、と、思ったしゅんかん、ガラスを通りぬけてしまいました。


  *


 まどの外はお花畑でした。

 みわたすかぎりの野っぱらに、色とりどりの花が咲いています。

 お空は高く、まっ青で。夢みたいに、きれいでした。


 タマは首をひねりました。

 お家のそと、なんで、こんなに、なってるの?

 こんな、お花畑なんて、なかったはずなのに……。


 でも、すぐに、それどころではなくなりました。

 お花畑のなかに、三びきのこねこが、すわっていました。

 タマはうれしくなって、かけだしました。

「兄さん!」

 そうでした。三びきは、いなくなってしまった、兄さんたちなのでした。

 にゃあ、にゃあ。

 みい、みい。

 にゃあご、にゃあご。

 四ひきは、からまりあって、じゃれあいました。しあわせだったあのころみたいに。

 チョウが、ひらひら、見まもるみたいに、とんでいました。


「みんな、いままで、どうしてたの? ここ、どこなの?」

 あそびつかれて、ひといきつくと、あらためて、タマは、たずねました。

 兄さんたちは、顔を見あわせました。

「さて、どこだろう?」

「てんごくなのか、じごくなのか」

「とにかく、死んだらくるところ、かなあ」

 タマは目をぱちぱち。

「やっぱり、みんな、死んじゃったの?」

 兄さんたち、ためいきをつきました。

「そうだねえ。そうみたいだねえ」

「それじゃあ、しようか、その話」

「ぼくら、どうして、死んだのか」


 さいしょは、いちばん上の兄さんでした。

 こんな話をしてくれました。

「お家を出るとすぐ、ニンゲンたちに、でくわしてね。おかあさんを、さがすどころじゃ、なかったよ。

『うわっ、きたない』

『またノラか』

『ほけん所にでんわしろよ』

 追っぱらわれたり、追いかけられたり。とうとう、つかまっちゃった。マチビカセンター? ほかにも、いぬや、ねこが、いっぱいでね。そこから、なんびきか、えらばれて、せまい箱みたいななかに、おしこまれてさ。

 くらくて、いやなにおいがしてね。みんなおびえて、にゃあにゃあ、わんわん。そのうち、ゴーッて、音がするのさ。そしたら、息ができなくなってね。もがいて、ひっくりかえって。手足が、かってに、ピクピクしてね。

 気がついたら、ゆうれいみたいになって、死んだ自分を、見おろしていたよ。そこへ、チョウが一ぴき、ひらひら、きてさ。ちょっと追いかけたら、もうここだった」


 つぎは、にばんめの兄さん。

「兄さんを、さがしたよ。でも、見つからない。へとへとで、おなかもすいて。そんなときさ。すごいエモノを、見つけたのは。

 ほんとに、すてきな、ねずみだったよ。白と、茶色の――いや、あれは、金色だな。ぴかぴか、つやつや。見たこともない、おおごちそう。

 でも、こまったな。そいつったら、がんじょうな、オリのなか。あんぜんな場所で、カラカラ、赤い輪っかを、まわしてるんだ。どうしたって、手が出せない。

 とつぜん、ものすごい声がしたのは、そのときだ。

『なにしてやがんのよっ!』 

 あわてて、逃げだしたよ。そしたら、ブオーッ! でっかい、じどう車が、つっこんできてね。キキーッ! ぐしゃっ! つぶされちゃった。うんてんしゅさんが、『うわあ』って、いやそうな顔をしていたっけ。ぼく、それを見たよ。やっぱり、ゆうれいみたいになってさ。そこへ、あのチョウが、きてくれたんだ」


 さいごは、さんばんめの兄さんです。

「あき家の庭に、トカゲがいてね。『あれ、とってよ』って妹がいうんだ。でも、すばしっこくってねえ。するする、ささーっ。れんしゅう用とは、おおちがい。

 おまけに、こっちは、腹ペコだ。そのうち、へたばってしまったよ。『だめな兄さんねえ』なんて、ばかにされて、くやしくってねえ……。

 そしたら、

『わっはっは』

 へいの上に、でっかいオスが、すわっていてね。笑うんだ。

『ぼうやに狩りなんて、じゅうねん早いぜ。おとなしく、ママのおっぱいでも、すってるんだな』

 ぼく、いいかえそうとしたけど、へとへとで、声もだせなくってねぇ。そしたら、妹のやつが、そいつに、きくんだよ。

『ねえ、あなただったら、あんなの、かんたん?』

 そいつ、にやっと笑ってさ。ものもいわずに、とびおりてね。つぎに顔をあげたときには、もう、トカゲをがっちり、くわえていやがるのさ。

 妹は、おおよろこびさ。

『あなたって、つよいのねえ』

 いつのまにか、そいつのそばでね。うふん、なんて、いっていたよ」

 兄さんは、ためいきをつきました。

「そいつ、妹だけ、つれていったよ。ぼく、追っかけたけど、追いつかなかった。おなかがすいて、気がとおくなって。そこへ、チョウが、きてくれたのさ」


  *


「姉さんったら、ひどいんだあ」

 タマはプンプンしました。

 でも、姉さんを、かばったのは、とうの兄さんでした。

「まあ、そういってやるなよ。おかげで、あの子は、まだ当分、こっちに、こられないんだから。おかあさんに、会えないんだから」

「おかあさん?」

 タマの耳が、ピクってしました。

 兄さんたちは、顔を見あわせました。

「そうさ。おかあさんは、せんから、ここにいるんだよ。帰ってこれなくなったのは、そのせいなんだ」

「でも、ぼくらのことが、しんぱいでね。ここからさきへ、行くことも、できなくて」

「ずっと、待ってて、くれたんだよ」

 タマは、顔をかがやかせました。

「それじゃあ、おかあさん、帰ってくるのが、イヤになったんじゃないんだね? ぼくらのこと、キライになったわけじゃなかったんだね?」

 あたりまえじゃないか、ばかなしんぱい、するんじゃないよ――兄さんたちは、口をそろえて、そういいました。

 タマは、もう、うんと、うれしくなって、

「わーい、わーい」

 その場で、くるくる、かけまわりました。

「おかあさんは、ぼくらがすき。きらいじゃない。きらいじゃない。わーい、わーい」

 兄さんたちが、わらいました。

 とってもやさしく、わらいました。

「それじゃあ、いこうか。おかあさんのところへさ」

「どこに? どこにいるの?」

「すぐそこさ」

「チョウが、おしえてくれるよ」

 すると、そう、さっきのチョウが、すいっ、と、タマの鼻づらをかすめて、とんだのでした。

「「「そらっ、追いかけろ!」」」

 兄さんたちは、いっせいに、かけだしました。

 タマもいっしょに走りました。


 走りつづけていくと、やがて、きらきらひかる、川が見えてきました。

 底の砂がひとつぶひとつぶ見えるくらい、きれいな、とうめいな川でした。

 チョウは、川をとびこえ、向こう岸に、まいおりました。

 すると、チョウがおりた、その場所から、むっくり、からだをおこして、こっちを、見たのは――

「おかあさん!」

 見まちがえるはず、ありません。

 おかあさんは、にっこりわらって、うなずいて。にゃあ、と、やさしく、なきました。

 兄さんたちは、よろこびいさんで、川をわたっていきました。

 泳いだんじゃありません。

 水の上を、そのまま、走っていったのです。それで、しずみもしなければ、ぬれたりだってしないのでした。

 そして、あっというまに、向こう岸に、ついたのです。


 でも、タマは……。


 パシャンッ!

 つられて、一歩を、ふみだしたとたん、しぶきがあがって、冷たくて。

「うわっ、うわっ」

 あわてて、岸にひっかえしました。

 そして、向こう岸をみつめました。

「どうしたんだい」

「はやく、おいで」

「がんばれ」

 向こうで、兄さんたちが、よんでいます。

 おかあさんが、にゃあ、と、しんぱいそうに、なきました。

 でも、やっぱり、なんどやっても、タマの手足は、

 ――ちゃぽん。

 水にしずんでしまうのでした。

 これじゃ、わたるなんて、とうてい、ムリ。みんなのところへ、行けません。


 にゃー。

 にゃー。


 おかあさん、おかあさん。

 タマは、せつなく、なきました。

 おかあさんも、かなしそう。タマをみつめて、にゃあー、と、長くなきました。

 兄さんたちが、ためいきをつきました。

「そうか。おまえは、これないのか」

「そっちに、やることが、のこってるんだね」

「だから、まだ、だめなんだ」

 あきらめたみたいに、そういいました。

 そして、わかれをつげて、背中をむけてしまうのでした。

「それじゃあ」

「元気で」

「いつか、また」


 おかあさんは、さいごのさいごまで、タマを見つめていました。

 でも、やっぱり、ついには、背中をむけてしまいました。

「待って、行かないで」

 タマはさけんで、かけだしました。

 でも、でも、やっぱり、

 パシャン!

 川は、どうしたって、こえられなくて。

 にゃあ、にゃあ。

 水ぎわで、ないて、ないて、泣くばかり。

 遠ざかっていく、兄さんたちと、かあさんは、いつか、光につつまれて……

 気づけば、白く、まぶしく、かがやいて、まるでチョウチョみたいに、お空へとんでいくのでした。

「おかあさん、おかあさん」

 タマはもう、さみしくて、かなしくて。

 なんにもかんがえないで、とびだしました。

 そしたら、

 ドボン!

「ゲホッ! ゲホッ!」

 つめたい川に、おっこちて……

 バシャバシャ。ひっしに、もがいたけれど。

 あっというまに、押し流されて。

 なんども、しずんで、水をいっぱい、たくさん、のんで。

 苦しくって、痛くって。

 目のまえが、暗くなって。

「おかあさん……」

 ひとことかなしくつぶやくと――

 とぷん。

 とうとう力がつきて、水にしずんでしまうのでした。

 はいた息が、ごぼっと、白いあわになって、あかるい水面めがけて、のぼっていく。それが、さいごに見えた景色でした。


 ………………。

 ……………………。


  *


「おーい、まだ、なにか、あるぞ」

 作ぎょう員の、さとうさんが、あき家からでてきました。

 うごきはじめていたパワーショベルが、ぶるぶるっとふるえて、とまりました。

 なんだ。どうした。同りょうの、みやけさんと、にのみやさんが、あつまってきました。

「ねこの死がいだ」

 さとうさんは、ふる着のつまったダンボール箱を、かかえています。

「まだ、ほんの、こねこだよ」

 どれどれ。二人が、のぞきこみました。

 いちのせさんも、ショベルカーから、おりてきました。

「ちっちゃいなあ」

「ガリガリじゃないか」

「母ねこは、どうしたんだ」

 ここは、じゅうたく地のすみっこの、ふるいあき家。

 もとのたて物をこわして、あたらしく、たてなおすのです。

 そのまえに、たて物のなかを、かくにんしてみたのです。

 そしたら、その箱が、みつかったのでした。

「かわいそうに。つらかったろうなあ。さみしかったろうなあ」

 どうぶつ好きの、さとうさんは、泣きながら、こねこの死がいを、だきあげました。

 すると、

「!」

 さとうさんの顔が、かがやきました。

「うごいた! 生きてる! 生きてるぞ!」

 なんだって? 仲間たちが、顔をよせました。

 すると、どうでしょう。

 さっきまで、ぴくりともせず、息をしているようにも見えなかったこねこが、たしかに、ぴくぴく、手足をうごかしているのでした。

 くるしそうに、空中をひっかいて、ケホッ、ケホッ、せきをするのでした。まるで、水に、おぼれているみたい。

「どいてくれ!」

 さとうさんは、仲間たちを、おしのけました。

 やれやれ。三人は、やさしい顔で、にがわらい。行ってこい、と、手をふりました。

 さとうさんは、片手で三人をおがむしぐさをしてみせると、こねこを抱いて、走りさっていきました。

「よーし、こわすぞー」

 三人は、おしごと、さいかい。

 ふたたび、パワーショベルが、うごきはじめました。

 あき家のかべが、めりめり音をたてて、くずれていきました。


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― 新着の感想 ―
猫に釣られてやってきました。 終盤の展開で、年甲斐もなく涙が出てしまいました。我が家にいる猫も、保護されていなかったらこうした結末だったのかもしれないと、つい重ねてしまいました。 タマ……さとうさん…
読ませていただきました。 お母さんやお兄さんたちが戻ってこず、タマひとり残されて、蝶が現れて‥‥切なくて切なくて。 でも、そこからが本番でした。 お花畑での再会に亡くなったのは辛い!辛いけれど、タマた…
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